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第4話 黒牛の出産 (2月)

 ベル暦3年2月 黒牛のクッキーとチョコがあいついで出産した。


出産予定日前日から本領に泊まり込んでいたムギと、黒牛達と仲良しのライトが出産に立ち会った。


 クッキーとチョコはもともと搾乳用にベルフラワーに来ていたが、

黒牛の乳を飲んでおなかを壊す人が続出した。

黒牛達の乳にたっぷりと含まれていたたんぱく質が 人間の体質にあわなかったようだ。


その後しばらくしてから 4頭の黒牛(雄)たちが おのおのクッキーとチョコの元に自分を売り込みに行き、クッキーとコク、チョコとブラックのカップルが誕生したらしい。


 そこで ライトが牛達の結婚式を執り行い、妊娠成立。

受胎が確認されてからは クッキーとチョコは断乳して、胎児の健康な成長につながる 栄養バランスの良い食事をクッキーたちに与えることにした。


ちなみに黒牛達の結婚式には、フェンとスコリーが立ち会った。

というもの 黒牛達が 最初ライト以外の人間にこのことを知られるのを恥ずかしがったからだ。


では なぜ ライトが黒牛達のお見合い~結婚式の流れを知っていたかと言えば

仕事中も仕事が終わってからも黒牛達と一緒に過ごす時間が長い人間がライトだったからである。



 雄牛達がそわそわしていたころ、家畜に詳しいムギは入植地で牧畜をしていた。

当時本領に居た男たちも家畜は専門外だったので、ライトはフェンとスコリーに相談した。


そしてお見合いからカップル成立までの黒牛・白黒牛達の相談相手をしたのがフェンとスコリーであった。


 フェンリルもオオカミ達も 恋愛・及び結婚については 当事者同士の話し合いで決着する種族だったので、牛達の揺れ動く心情の聞き役を押し付けられて大いに困った。


「なんで こうなるの?」スコリー

「わからん。人間並みにめんどくさい牛達だ」フェン


「さっさとまとまっちゃえばいいのに

 嫌なら後ろ足で蹴り上げればいいだけでしょ!」スコリー

「いくら牝牛には角がなく 牛には牙がなくとも

 巨体を生かして 雌4頭で雄を1頭づつ囲んで押しつぶしてしまえばいいではないか!」フェン


「雄の中で誰ば一番強いか知りたければ ライトに頼んで競争させればいいのよ!」スコリー

「だれが 一番優しいのか知りたければ・・??」フェン

「草食動物って厄介ね

 肉食獣なら 貢物の獲物が一番多い雄か 自分好みの餌を選んで食べやすい形で運んでくれる雄を選べばいいのよ!」スコリー


「お前のように強い雌オオカミでも つがいを選ぶときには 貢物の質と量とタイミングの選び方で決めるのか?」フェン


「当たり前のことを聞かないでよ!

 妊娠中の雌への気遣いと子のために質の高い餌を必要なだけ運び続けることができるオスかどうかの判別基準としてあたりまえのことでしょ!」

スコリー


「ふむ 今後の参考にさせてもらうよ」フェン


などと牛達の長話、愚痴なのかのろけなのか判然としない「お話」につきあわされたストレス発散のために 最初は外を走り回っていただけのフェンとスコリーは、だんだんと親しくなっていった。



 一方、黒牛達のデリケートな心情を考慮したフェンの助言に従い、妊娠した牝牛達が安定期に入るまで、ライト・ドワーリン・ドーリ・リン以外の人間たちには、話をふせておいた。

 いずれにしても 黒牛雌の世話をライトが引き受けていたので、ほかの人間たちがチョコの体調変化に気づくはずもなかったのである。


なぜリン達3人がこのことを知っていたか?

 ライトは 当然のこととして領主であるリンに報告した。

 さらに 黒牛達の扱いについてリンに相談もする。


 リンは恋愛関係の話を苦手とし、さらに異種族の協力者の恋愛~出産といったデリケートな事柄には大変気を使う人だったので、黒牛の生活面のサポートについて ドワーリンに相談した。

 人間たちの中で最年長者でありドワーフの族長でもあるドワーリンの知見を尊重していたからでもある


リンは 黒牛達の世話はライトに、技術的協力が必要なことは口の堅いドワーリンに任せることにした。


ドワーリンは「ドワーフの族長」の座をドーリに早く譲りたいと思っていたので、リンの了解の下、ドーリに自分の知ったことはきちんと知らせていた。


一方ムギはまだまだ未熟な若者であり口も軽かったので、ぎりぎりまで黒牛達のフォローはライトとドーリで行なうことにした。


というわけで 黒牛の秘密(?)は守られ、チョコたちの妊娠が発表された後も

領内では大して話題にならなかった。

何しろ 人間たちには 人間なりの悩みがあり忙しかったからである。



 ドーリは、おなかが大きくなっていく牝牛達が楽に過ごせるように、寄り掛かる柵木を強化したり、体重が足の負担とならないように体を支えるネットを張るために天井の横木を強化するなど こまごましたことを手伝った。



 クッキーとチョコは、ベルフラワーに来る前、野生の王国に居た時に、乳飲ちのみ子をなくしていた。

だから無事に出産を終えた彼女たちは、このまま今回生まれた子供たちを ベルフラワーで育てたいと言った。


授乳中は無理だけど、子牛達が乳離れしたら、自分たちも役牛として働くから残らせてほしいとまで言った。


 一方コクとブラックは、「黒牛のこどもも、乳離れしたあとは 自分の足でしっかりと野原を駆け回って3歳くらいになるまでは体を鍛えたほうがいいから、昨春野生の王国に帰った、ホルスとクローバー、スタインとカズラ親子のように、離乳後は母子で野生の王国に帰ったほうがいい」と言った。

 「そのあと ベルフラワーで働きたいなら再び戻ってくればいいが、ここで役牛として働くのはけっこうきついぞ。ここで働く気でいるなら なおのこと野生の王国で 体を鍛えてくるべきだ」と言った。


そこで とりあえず生まれた子牛達が乳離れするまでは、ベルフラワーで黒牛母子を養うことになった。


クッキーとコクの間にできた子(雄)は、リキ、雌はサラ

チョコとブラックの間の子(雄)は、ビター、雌はスイート と名づけられた。

 黒牛は普通子供は1頭しか生まないが 今回はクッキーもチョコも双子を出産したのである。


「これも ベルフラワー効果かしら?」クッキー

「将来 リキとスイート、ビターとサラがカップルになるといいわね」チョコ


ムギとライトは、昨秋 欲張りすぎるほどにえん麦を植えておいてよかったと心底思った。


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