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ベル暦3年:子供時代の終わり  作者: 木苺
追記編:その後の若者たち
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ライト22歳の誕生日

海辺で夏のお祭りをしてから1年たった。


マリア達は、浮袋や救命胴着の開発に身を呈して協力してくれたドワーリンへの感謝を込めてビールづくりを本格化することにした。



・・・

ビールを飲みながらのライトとレオン


レオン

「この1年でお前 ずいぶん落ち着いたようだな」


ライト

「そう思うか?」


レオン

「ちがうのか?」


ふっと笑うライト

「俺の気持ちは 昔と全然変わらんよ。


 ただなぁ 自分の気持ちを表に出して もうこれ以上リンに嫌われたくないんだよ」


レオン

「そうか」


ライト

「ああ、

 そりゃな 頭ではわかってるんだ


 俺が守りたいのは 幼いころの俺

 俺が望むのは オレをだきしめて安心させてくれる人

 俺が欲しかったのは、俺を抱きしめてくれる人を 守ってくれる強い男


 でもさ そんなもの どこにもいやしない

 だから せめて 俺は俺を抱きしめてくれる人を守れる強い男になりたかった。」


「でもな リンは 俺とは違うんだよ」


「あいつは 逃げない。

 死ぬまで戦う。


 あいつには 俺のときのように、命がけで自分を守ってくれる人が居なかったら

 あいつは ほんとにずっと命がけで一人で戦い抜いてきたんだ。


 むしろ あいつは物心ついた時から、自分の母親や生まれたてのドラゴンを守って

 一人で生きていたんだ。

  守られることを決して望まぬ生き方を貫いている。


 そして 守りたいと思っても守れなった人たちの屍を背負ってずっと生きてきたんだ。

 たぶん 今でも 彼女は守り切れなかった人達、

 自分が見切りをつけて引導を渡した人達の屍を背負って生きているんだと思う。


 あいつの優しさは、あいつの命を削る優しさなんだ。


彼女は俺よりもはるかに強い


だから 俺はあいつにずっとずっと守られていたかった。

でも 俺はあの子の苦しみや悲しみを見てしまった。

だから あの子を守りたいと思った。

でも 実際には あの子のやさしさにすがりついていただけだった。


認めたくなかったけど そんな自分が見えてしまったら

もうあきらめるしかないじゃないか。


いつか 彼女に寄り添える強い男が現れたら

俺は猛烈に嫉妬すると思う

それでも


彼女が幸せになれるように 俺は自分の嫉妬を押し隠して祝福しないといけないだろうなと覚悟して

今は 俺の中のもやもやとした思いが外に出ないように抑制中」


レオン

「そうか。

 だったら 俺はもう お前の心に踏み込まないほうが良いんだな。」


ライト

「まあ もし仮に 俺が誰かほかの女に

 そうだな 俺を甘やかしてくれる女と恋仲になった時は また相談にのってくれ。

 

 単純に俺の物理的な強さを頼ってくれて

 俺の甘えを受け入れてくれるそういう女がいたら

 オレ その人と結婚してもいいなと思ってる」


レオンは あきれた目でライトを見た。 


ライト

「意思の力で 自分の身を削って 人にやさしくする女は もうごめんだよ。

 彼女がそういう生き方しかできないんなら

 俺は彼女のそばには居られない。


 あの人が与えてくれる優しさにすがりついて

 あの人を食いつくす自分の姿が見えてしまったから」


レオン

「あれは トップクラスの最上級の女性の生き方だよ

 俺たち庶民の生き方とは 根本的に違うんだよ」


「だったら そのハイソなお方にふさわしい男」

といいかけてライトは自分の頭をたたいた。


「おまえ 思いをこじらせて エフライムみたいになるなよ」レオン


ライト

「さすがにあれはない。

 あれには なりたくないから 今がんばって努力してんだよ。


 エフライムみたいになるくらいなら、

 異性でも成り立つ友情路線とやらに無理やり頭を切り替えるほうを選ぶよ

 そもそも 俺に花言葉は無理だ」


「とにかくファーゴとデトックスのどっちがどっちだかよくわからないが

 あいつらの一人みたいに 女を憎むようにもなりたくないし

 エフライムみたいに 女への願望の押し付けが行きつくところまで行って

 女を人形扱いするような人間にもなりたくない。


 最低でも イノシシたちみたいに 頭の中で妄想するだけのレベルに自分を押しとどめたいよ。

 本当は もうちょっとましなレベルでとどまって

 ちゃんと女性から交際してもらえるようになりたいけど」ライト


レオン

「おまえって ほんとそのあたり 生々しいね。

 俺は 幸いにも そこまで生々しくない世界で生きてきて

 そのあとここに来たから やっぱり運が良かったのかなと思う」


「ちぇっ 憎たらしいこと」ライト


「すまん」レオン


ライト

「でも ほんと 『生々しい暴力のえげつなさ』を知らずに?影響されずに?育つ幸せってやつがあるということに気づいたのは、お前がいたからだよ。


 知ってて それのない世界を作ろうとするリンと同じだけの強さが、俺には全くないけど

 むしろ リンの根性にあきれてしまう、俺は軟弱者だけど

 少なくとも あの子の足を引っ張るようなことはしたくないと思うくらいの良心が俺にはある。


たとえ 生々しい世界の汚さを知らない子供たちのための社会が

きれいすぎて窮屈すぎて俺には生きにくいものであったとしても

しゃーねぇなって 思う。


 ただなあ ほんとに窮屈だよ。」


そう言ってライトは 石を投げるふりをした。


(ベルフラワーで ほんとに俺の気持ち、過去の苦しみに気づいて いたわってくれて、

 俺の闇を知った後も、恐れず俺ととともにいてくれたのは、

 たとえ離れていても 俺のことを今でも気にかけてくれる人はリンだけだ。

 俺の人生全体を通しても 俺の心を支えるほど強くて優しい人はリンだけだ。

 

 ほかにも気づいている大人はいるかもしれないけど

 彼らは リンほど俺にやさしくない。

 どっちかと言えば 深入りしなくてすむよう距離を置こうとしている


 無条件で俺を抱きしめて 俺のために泣いてくれた人=リンから

 もうこれ以上嫌われたくないもんな。


 あの子が ずーっと子供のままでいて

 ずっと 恐れず俺を慰め続けてくれたらよかったのにって思うけど

 それって 変態・ロり路線って言われるんだろうなぁ


 というか そんな願望を口にしたら 間違いなく フェンとリンの二人にぶっ殺される


 フェンは情け容赦なく俺を切り裂くだろうけど

 リンはきっと悲しそうな目で俺を見るだろうな

  立ち直ることなく いつまでも甘えていたいと歪んでいくオレを見たら


 彼女を悲しませたくないから 俺の願望は消去だよ

 早く 俺の心から そういう思いが消え去ってくれたらいいのに

 早く薄らいでほしいと 本気で思うよ)


と堂々巡りの思いは心の中に押しとどめて

懸命に生きているライト、22歳の誕生日だった。



幼いころに激しい暴力を目の当たりに見て育ち

その心の傷をものともせずに たくましく生きている若者たち

リンとライトの物語はこれでおしまいです


 本編では、リンがさっさと一皮むけて ライトが取り残された感じになってしまっていたので

 追記編で ライトのその後、リンとは別の人生を歩むことになったライトの心情を描きたいと思い

追加しました。

 本当なら この二人が一緒になって 幸せになってほしかったのですが

 領主として、本格的に大人としての責任を負い、立場を築こうとするリンに比べ

 いつまでも リンを「俺の~」としか思えないライトでは、恋愛関係が成立せず・・)



機会があれば、武道大会を通して (リンとライト以外の)少年・少女たちを

ビールづくりを通してベルフラワーの大人たちの世界や

ベルフラワーの大人の恋も描きたいと思っていますが

その場合は 本編とは切り離した 別の作品として、別のスレをたてて書きたいと思います。


追記編まで お付き合いくださいました読者様に 心から御礼申し上げます。


つたない作品ですが 精一杯書きました。

 今日まで 本当にありがとうございました。 読んでくださったことに心から感謝しております。

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