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ベル暦3年:子供時代の終わり  作者: 木苺
追記編:その後の若者たち
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海のお祭り4:最後の夜

夏の海で過ごす最後の夜は、三々五々 気の合うものが集まって過ごした。


浜辺でぼんやりと沖合に浮かぶ星空を眺めていたライトの周りには

おのずとアラン~ボロンまでの少年たちが集まってきた。


アラン達にとって、肉体派のライトはやはりあこがれの的なのである。


(なんといっても ここで一番強い男はライトさんだものな)タッキー

(いつも落ち着いていて 堂々として ほんと男らしいよな)アラン

(最近 気持ちが沈みがちのように見えると聞いたけど、悩みを胸に秘めて耐える男、

 かっけー)リック

(気は優しくて力持ち。アラン達のような乱暴さがないから側にいても安心できる)

ボロン・アシカ


と言った少年達の心中も知らず、ライトは、かつてリンと一緒に見た海辺の星空を思い出していた。


「ライトさん! 秋祭りは武道大会にしましょうよ」アランが思い切ってライトに声をかけた。


「えっ 今 夏休みの最中なのに もう秋祭りの話?」

ライトは呆れたように答えた。


「だって 俺たち 祭りのときしか話す機会がないじゃないですか。

 だから 次の祭りの相談は 今夜しかできませんよ」アラン


「なるほど。

 それで どうして秋祭りが武道大会になるんだ?

 普通は収穫祭で 食べ物関連の企画をするのでは?」ライト


「だって また お料理教室とか面倒じゃないですか」タッキー


「そうか?」


「たまには こう 男らしさを発揮できる祭りがいい」リック


「いつもいつも 勉強勉強 教室教室

 講師はいつも女性達

 たまにはこう 俺たちが エッヘン!っていいとこみせたいっす」タッキー


「あー 武道大会を開いても、必ず俺たちが優勝するとは思えないがなぁ」ライト


「なに 弱気なことを言ってるんですか!

 力勝負となれば 俺たち男のほうが 断然強いですよ」リック


「そりゃ 重量挙げ大会とか 丸太引きとか純粋に体力が物をいう勝負なら

 俺たちにも勝機はあるけどさ、武道・武術といった「技」の競い合いになれば

 性別は関係なさそうな気がする。」ライト


「それは 魔法vs格闘技とかの場合でしょ。

 純粋に格闘技だけなら、体力とか体格の優れた者が優位にたてるはずです」アラン


「だったら 武道大会を提案してみてもいいが

 たぶん 出場者は身体強化術を使ってもいいとかってことになると思うぞ」ライト


「それって不公平じゃない? いつも魔法使いが勝つようになってるみたいで」ボロン


「じゃあ 聞くけどおまえ エレンとかディー相手に本気で勝負できるか?」ライト


「そんなの勝負するまでもなく 俺たちが勝つに決まってる」アラン


「だよな。

 でも 実際の戦いになれば、年齢・性別・体格関係なしに、各自が己の持つすべての力を使って戦わなければならない、

だから 武道大会を開くなら、身体強化ありの無差別級ガチンコ勝負で

総合的な力を競い合おうって、うちのご領主様なら言い出すと思うがなぁ」ライト


「それって 魔法を使えばなんだってできるってことですか?」アシカ


「そうじゃない。

 魔法を使って人を攻撃するのは、たとえて言うなら弓矢を使うようなものだ。

 だから 格闘技を競い合う場に魔法攻撃を持ち込むのは卑怯だよな。


 しかし 身体強化をして、自分が殴られたときの衝撃を軽くしたり

 自分の敏捷性をあげることは、

 言ってみれば 俺たちが腹筋を鍛えたり

 技を磨いてスピードをあげるようなもんだ。


 つまり 体力を使って自分の体を鍛えるか

 魔力を使って自分の体を鍛えるかの違いで、

 身体を鍛えるという点では 同じじゃないかということだ。


 ただ 体力を使って体を鍛えれば、その効果は比較的長く続く。

 魔力を使って体を鍛えても その効果は短い

 

 だから お互いに 相手をケガさせたない範囲で力と技を競い合って

 互いの特性を理解すれば、むやみに魔法使いを怖がったり、

 逆にバカにすることもなくなると思う」ライト


「ってことは ライトさんは リンさんとガチンコ勝負したことがあるんですか?」

アラン達が一斉に興味津々で ライトに尋ねた。


「昔は よく 一緒にトレーニングしようとリンから誘われたよ。

 でも俺は 女相手に勝負はしないと いつもことわってた。


 それで リンは 最初のころは 一人で竹やぶに行って 刀を振るっていたけど

 そのうち 時たま フォークさんやレオンと軽く稽古をするようになったんだ。


 あれを見てたら やっぱり彼女は武術にけた人だと思った。

 彼女から手合わせを挑まれたときに 素直に受けておけばよかったと思ったよ。

 

 それに 俺は参加してないが、最近では 女性達や幼い子たちにも護身術教室が開かれている。

 そこでは 己の実力を知り 己の力にあった戦い方をしろ

 己の特性に合わせたトレーニングをしろと いつも教えているからな。


 もし 祭りのときに武道大会をするのなら、そうやって稽古している連中の戦いぶりをしっかりと見るためにも、無差別級の身体強化ありの勝負があってもいいんじゃないかと俺は思う。」


「僕はどっちかと言えば 魔法使い同士の 魔法を使った戦い方も見たいな」アシカ

「それは俺も見たい」タッキー

「俺も」アラン&リック


「一応 お前たちの希望は伝えておくが たぶん却下されるだろうな」ライト


「なぜ?」アラン


「『魔法は生活を豊かにしたり 人を幸せにするためのものであって

 人を傷つけるために使ってはいけない』というのが うちの魔法使いの御大将の方針だから。

 それに 『魔法はみせびらかすものではない』というルールも付随してる」ライト


「とにかく 身体強化だけでも 十分に強いよ、リンは。


 しかも 一般的に魔法攻撃って えげつないぞ。

 火を放って一瞬で敵をまとめて焼き殺したり、

 離れたところから相手の首を絞めたりするんだから

 そんな殺人術を リンが ここのメンバーに教えるはずがないじゃないか。


 魔法攻撃の勝負って 殺し合いの場と変わんないんだから。」ライト


「じゃあ なんでライトさんはそういう魔法攻撃を知ってるんですか?」

リッキーは不思議そうに尋ねた。


「そういう修羅場を潜り抜けてきた人から聞いたんだよ。

 世のなかには魔法攻撃を使った拷問をするやつもいるしな。


 世のなか知らないほうが良い話ってのはあるから、そのことについては

 もうこれ以上何も言わない。


 とにかく 魔法攻撃なんて見ることなく生涯を過ごせるに越したことはない。

 そして 見たがったりしてはいけないものだと俺は断言する」ライト


「わかりました」リック

「ライトさんがそういうなら」少年たち。


「それより 相撲をとらないか?

 お前たち 力比べをしたいなら 相手になるぞ」ライト


「いいですね」アラン

「胸を借ります」タッキー


ライトは少年たちと 相撲を取り始め、そこにレオンやロジャも加わって

ひと時を過ごした。


そのあと ティティたちが持ってきた 炭酸レモン水を飲んだ後

今度は みんなで まき投げをして遊んだ。


海に向かって 石を投げると 海の生物たちから怒られるので

海岸で 誰が一番遠くまで薪をなげられるか?とか

的に当てる精度を競い合った。


老いも若きも 性別も関係なく みんなで薪を投げて遊び

翌朝 散らばった薪を拾い集めた。



・・

本領へ戻る途中、がんばってリンと二人になる時間を作ったライトは こそっとリンに話しかけた。


「昨夜 アラン達から秋祭りに武道大会のリクエストを受けたんだ。

 面倒だから その時の会話を読み取ってくれ」ライト


少し嫌そうな顔をしたが リンは素早くその場面を読み取った。

「それで?」りん


「その時さ オレ思い出したんだ。

 以前 君の中に見た光景。

 君は 人が殺されたり、痛めつけられる光景を見てすごく苦しんでいただろう。

 そして 自分が持つ力が人を傷つけるのではないかと すごく恐れていた。

 俺も似たような経験があって ずっと苦しかったから

 自分の思いと君への思いがごちゃ混ぜになったのかもしれない。


 でも 君は もう大丈夫なんだろ?

 だのに 俺がいつまでも 君の存在を俺の苦しかった過去の思い出の中に閉じ込めて あーだこーだってお節介焼いたり 君を外に出したがらなかったから

君が怒っちゃったんじゃないかなって思った。


 君が困ったとき 苦しいときはいつでも俺を頼ってくれていいから。

 でも 俺はもう これ以上君を 閉じ込めたりしない。どんな意味でも。


 ごめんな。 今まで君を 俺の思いの中に閉じ込めたまんまでいて。」


ライトは リンの眼を見て それから軽く頭を下げた。


リンは 困った顔で微笑んで

「ここで 私が親愛の情を示してハグしたら 君は困るんだろうなぁ。

 今は いろんな意味で お互いの感性の違いを尊重して

 距離のある付き合いをした方がいいんだろうなあ」と答えた。


「俺の頭の中では 君は俺が守らなければならない子供でもあり

 大人の女性でもあったんだけど

 水着姿の君は、もう子供ではなかったし、

 でも 大人の女性でもなかったし

 男だと思ってみれば男にも見える人だなぁと思ったよ。


 俺はいつも 君のことを女性だと思ってたから ドキドキしたけど

 実際の君は なんか全然違うんじゃないかという気がしてきた。


 だから これからは 俺もレオンを見習って

 程よい距離感のある付き合いをすべく 見る目をもう少し広げるよ。

 君に対しても ほかの人に対しても」ライト


リンは黙って首を傾け、コブシを突き出した。


戸惑うライトに リンは説明した。

「グータッチ 男の友情を示す挨拶」


ライトは笑って、

「武道大会で君に勝ったら ハグさせてくれるかい?」と尋ねた。


「うわー 公私混同! これだから油断禁物! 信用できない。

 気を許せない。セクハラ反対!」とリンは言い返した。


「ちゃんと起案して 会議に議題として提出して!」リン


「もちろん そうします。ボス」ライト


「俺って 最近16・7になったばかりの タッキーやアラン達なみの

 感覚の持ち主なんだって あいつらと話していて気がついたんで

 ボスに対する態度も 今後もっと気を付けます。

 ほんとに 今までいろいろ迷惑かけてごめん」ライト


「気が付いて ちゃんと態度を改めてくれるならそれでいいよ。

 私も 以前は相当あなたに迷惑かけたし、あなたに助けられたもの」リン


「だからと言って これ以上 あなたを甘やかしたり

 わがまま勝手を許したりはしませんけどね。

 でないと レオンだけでなく ほかのメンバーからも叱られるわ」リン


(ほんとに おれは もっとわきまえないとダメだな)ライトは改めて反省した。

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