第56話 黒牛の婚活と異種族交流について
フェンから野生の王国の安全性確認を手つだうと言われたリンは
ライトとフォークに 黒牛親子を里帰りさせるついでに 黒牛雄の一部に帰省休暇を与えることができるかどうか尋ねた。
「今なら農作業が一段落ついたから 無理ではない」フォーク&ライト
「しかし 黒牛って繁殖期がないの? そんな簡単にお見合いできんの?」ライト
「わかんない。
そもそも 黒牛達じしん どれだけ自分たちのことがわかってるのかどうか・・・」リン
「黒牛といい コカトリスといい もはや家畜というより異種族パートナーだな」フォーク
「だね」りん
「で その異種族の恋愛とかお見合いまで 手伝う俺達って・・・」ライト
「むーん 友達の恋愛相談に乗るようなもんじゃないの?」リン
「そう考えると 肩の力を抜いて 協力できることをすればいいと割り切れるな」フォーク
「あーじゃあ お見合いが成功しようと失敗しようとどっちでもいいけど
とりあえず 有給休暇の里帰りを手伝うって感じでいいのか」ライト
「そいうこと。彼らがいつ休暇をとるかは こちらの仕事の予定と合わせて要相談。
彼らの里帰りを手伝うのは まあ 雇用契約の福利厚生項目として次から しっかりと詰めるとして、って感じかな?」リン
「それなら 納得。
黒牛達との折衝よろしく!」ライト
「りょーかい」と言いつつ (はて どうやって話を進めよう?)と首をひねるリンであった。
・・・
とりあえず アトスと一緒に ライトに背中をこすってもらっている黒牛(雄)達の所に行った。
「こんにちわ」リン
「んもうー」黒牛達
「今日も1日お疲れさまでした」リン
「もうーもうー。社交辞令はいいから本題頼みます」黒牛
「里帰りの件」
「俺たちも迷ってます」くろ
(翻訳魔法を使って ライトにも黒牛達からの念話を届けることにしたリン)
「何を迷っているんだい?」ライト
「俺たちは 最初野生の王国に1か月ぐらい里帰りして楽しんで来ればいいやと思ってたの。
ところがさぁ、コカトリスや白黒牛達から非難されるわ、
クッキーやチョコから 黒牛の品位が下がるようなことを公言されると私たちまで肩身が狭いと言われるわで 大変なの」ダーク
「もしかして お前たち ただの家畜でも野獣でもなく 品格ある種族を目指すというわけ?」ライト
「そうなんだ。
コクとブラックからまで 番になる幸せとか聞かされると・・」くろ
「俺は 1か月あっちで女の子くどいてOKもらえればそれでいいやと思ってるんだけど」ダーク
「コクとブラックって マメに雌たちの所に通って話し相手になって
クッキーとチョコが妊娠してからもつきそってたろ。
それを お手本にしろとか言われると 1か月の付き合いで結婚なんて無理ではないかと」くろ
「申し訳ないけど ここで搾乳も仕事もできない黒牛を飼う余裕はないのだけど」
リンは慌てて言った。
「わかってる。
それに 俺たちここに来るまで 人間のことばもわからなかったし」くろ
「それで 今年は 俺だけあっちに1か月の里帰りして、来年は 雌たちがその気になりやすいシーズンに合わせて 里帰りさせてもらえれば」ダーク
「シーズンっていつだよ?」ライト
「それが分からないんだよね。今まで考えたことないから。
それも含めて今回は 俺が いろんな女の子に声をかけながら情報収集してくるつもり」ダーク
「もともと 私たち 季節感とか暦の感覚がなかったですから」クッキー&チョコ
(こいつら雌のフェロモンに反応していただけみたいだな)フェンがこっそりとリンにささやいた。
・・・
リンはとりあえず 2組の黒牛母子とダークを野生の王国に送っていった。
1か月後ダークを迎えに行くと、白黒牛達の群れと一緒にダークが待っていた。
白黒牛達によると、白黒牛も黒牛も妊活シーズンは4月、出産シーズンは2月らしい。もちろん諸般の事情によるズレもめずらしくないらしいが。
「情報ありがとう。 ベルフラワーに持ち帰って検討します」とリンはこたえた。
・・・
ベルフラワーでは とうとう 黒牛・白黒牛を交えた会議が行われた!
「野生の王国の白黒牛たちの群れは すごく賢くなっていて驚いた。
黒牛のほうは 実の所こだわりがなくて」ダーク
「私たちのことは リンにお任せしますわ。」ホルス
「リンにすでに色々伝えていますから」スタイン
「俺は 来年は里帰りなしでいいよ。」ダーク
「僕は来年か再来年の3月末に1か月の休暇がもらえればいい」くろ
「将来的に 代理のペアが来たら 3月末に交代で1年休暇がもらうというのはどうだろうか?」ブラック
「しかし ここに働に来たいという黒牛がほかにもいるのかな?」ライト
「その件については 僕が里帰りした時に確かめてみるよ」くろ
「我々としては 黒牛殿の労働力は大変ありがたいので
君たちに気持ちよく働いてもらえるように できる範囲で協力するよ」フォーン
「私たちは、白黒牛については ベルフラワーに来た雌の気持ちを尊重します。
同じく 黒牛の婚姻問題については、深入りしない予定です」マリア&リン
「俺たちは ここでの暮らしが気に入っているんだ
特に俺は 休暇なしでここで働いて、代わりの牛が育ったらここを引退して故郷に帰り それから家族生活を楽しむので良いと思っている」コク
「早い話がこいつは クッキーたちに未練がないんだよ」ブラック
「それをここでいうなって。コカトリス達がうるさいから」コク
「早い話が雌がそばにいれば気になるけど
いなければいないで そんなに気になんないんだよ」コク&くろ
「俺は みんなのうわさ話を聞いて興味が出たけど、今はコクに賛成」ダーク
「本音は 俺も家族にこだわりはないよ。
確かに1年一緒にいて楽しかったけどさ。
ただコカトリスにコッココッコと言われるとそういうもんかなぁと。」ブラック
(平たくいえば こだわりがないんだ黒牛たちは)と人間たちは思った。
「黒牛は雄も雌も強いですからねぇ。
群れにならなくても家族単位で10か月間の子育てはしっかりやって
それで カップル解消が普通ですから、
私たち白黒牛とは違うんですよ。
まして 無精卵を産みまくるコカトリスとも違います」ホルス&スタイン
「つまり 異種族の繁殖事情には むやみに口を出すなと コカトリスに話したほうがいいのかな?」リン
「そのあたりは 私たちから話します」ホルス&スタイン
「草原では コカトリスは臆病で 俺たちの足元にもよれないのに
ここだと いっぱしよくしゃべるからなぁ」ブラック
「言葉を覚えだすと いろいろあるのねぇ」リン
うんうんとほかの人間たちもうなづいた。




