第49話 内緒話
(リンとドラとフェン3人の内輪の話)
「リンちゃん ベルフラワーの開拓を始めたときに比べて
リンドやスレインの開拓地って すっごく恵まれてるんじゃない?」 ドラ
「だって 使える魔力が桁違いだもの。
当時の私は 非力な13歳の女の子。
今の私は ウフフ」
「それにしてもサービスしすぎじゃないか?」フェン
「あんだけ浄化魔法ぶちかまして 皆さん苦しい思いをして生き残った方々ですから。
それに 移動の自由がないからね。
恵まれた条件の結界の中で自滅するか 自然と調和した生き方をするか
大地の恵みを収奪しすぎて先細りで衰退するかは 当人次第です。
私は一緒に暮らしてないし」
「確かに最初に大サービスしてあとはほったらかしだよな」フェン
「でも その大サービスの内容が ベルフラワーでの経験をもとにしてるよね」ドラ
「当然」リン
「だったらベルフラワーにも還元したら?」ドラ
「だって 私頼られたくないもん 依存されるのも嫉妬されるのもいやよ
しかも 開拓に関しては 私も試行錯誤の真っ最中だもん」
「確かにスレインのエキスパート集団に比べると ベルフラワーは子供と素人の集まりだな」フェン
「でしょでしょ」
「てっきり スレインとベルフラワーで交流するのかと思ったけど」ドラ
「それも考えたけど 調和が崩れると困ると思ってやめた。
うち(ベルフラワー)は あくまでも人間くさいもの
スレインみたいに 浄化の試練を経た人間とちゃうし」ドラ
「でも なんで リンドの傷病退役の方たちの手足を再生してあげなかったの?」ドラ
「今の私が それをやると 彼ら全員20歳くらいに若返っちゃうよ。
これって 彼らの人生を狂わせることになるよ。
一応 私は 彼らを前線から助けた時 当時の私にできる精いっぱいで リンドの標準より遥かに優れた義手・義足をサービスしたし
彼らは 互いに助け合って 義手と義足を使って生き抜いてきたのに
いきなり20代の肉体にしちゃったら 彼ら変な欲に取りつかれるか
自分の今までの苦労はなんだったのかってがっくりくるかのどっちかでない?
お年寄りの中には 苦労多き人生も終わりに近づき
やれやれ いろいろあったけどまあまあいんじゃないかと
それなりに自分のこれまでと折り合いをつけて今を生きている人もいるわけだし
そういう思いを外から吹き飛ばすってどうなんよって話」
「確かに お前さんは 使える魔力が増えたが その分精度が甘くなったよな」フェン
「そいうこと。だからリンドの皆さんには 浄化結界に疲労回復効果をもたせたので それで勘弁してって感じ。」
「スレインではシックスセンスを飛ばしてセブンセンスで念話能力を付与したな」フェン
「へへ。 人間閉じ込められるのは嫌いでしょ。
だから 物理的に閉じ込められても精神的には交流の幅が広がるようにと」リン
「50年先 リンド・スレイン・ベルフラワーの人間が出会ったら どうなることやら」フェン
「そのころライトは70歳か 私もそろそろ 人間生活終わりだよね」リン
「あのさ ライトがほかの女の人を選んだらどうすんの?」ドラ
「そん時は 人間さんさようならで フェンと駆け落ちしようかな
ドラはどうする?」
「おまえ 俺が駆け落ちに付き合うと決めつけるな」フェン
「えーんフェンがいじめるぅ」リン
「僕としたら リンちゃんが僕の旅に付き合ってくれるとうれしいな。
ぼく 海の上をあちこち行きたいよ
島とか 大陸の別の部分とか。
見たいとこいっぱい」ドラ
「やった それでいこう。
私に付き合って ドラちゃんは人間世界にきてくれたから
今度は私がドラちゃんにつきあって 人間のいないとこに行く いいね」リン
「ドラゴンは長生きだからななぁ」フェンがぼやいた。
(フェンとしてはリンのことで ドラに悲しい思いをさせたくないのである)




