第39話 付属学校
セバス大司教は、聖堂内での告知のあと、付属学校のホールに行った。
そこには、低学年の生徒たち全員と、高学年の生徒の約半数が 怯えた顔で座り込んでいた。
生徒たちに付き添う教師たちの大半は苦しそうな顔をしていた。
役付き教員たちは全員欠席だった。
セバスは「現在浄化魔法が発動中である」とだけ告げた。
「じゃあ 先生たちの大半は罪の呵責に苦しんでいるのですか?
いつも あれほど僕たちに厳しい態度をとっているのに」
一人の生徒が声をあげた。
「良心の発達した者ほど わずかな罪にも良心の呵責を感じる。
人生長く生きるほど 妥協を重ねることも増え、それが果たして正しいことだったのかと悔いが残る出来事も増える。
年長者を責めるよりも 君自身の心に一点の疚しさもないのか反省したらどうかね?」
セバスはぴしゃりと言い返し、
教職員を全員別室に連れ出した。
・・
教職員には 真実を告げた。
胸を押さえていた教師たちは、聖堂でアンデッド化がすすめられていたことも
役付き教員に目をつけられた生徒たちが時々姿を消すことも
役付き教員に引き立てられた生徒の性格が悪くなっていくのも気づいていたと言った。
しかし そのことに気づいて辞職しようとした教員たちが次々と行方不明になっていたので、自分たちはここにとどまり 自分達の力の及ぶ範囲で 生徒たちを守る努力はしていたといった。
「それでも力及ばず 一人の生徒を失いました」一人の教師が胸を押さえながら告白した。
セバスはため息をついて、学校の建物中で のたうち回っているものたちを連れて聖堂に行くように告げた。
「聖堂に行って、己の罪の自白と、重罪を犯した者たちの自白調書づくりを手伝いなさい」
「ですが 残された生徒たちはどうなるのですか?」
先ほどとは別の教師が必死に問うた。
「王都全土に試練が及ぶまでにあと2日の猶予があるようだから、
今のうちに できることは?」セバスが問かけた。
魔法科の最年長教員が手をあげた。
「私が 生徒たちに10日間の懺悔の眠りを施そう。
生徒たちは 眠りの中で浄化を受け、眠りの中で己の罪と向き合い、
浄化された者は目覚める」
「10日以内に浄化されなかった者はどうなるのですか?」若い教師が尋ねた
「目覚めることなく朽ちるであろう。」
「なぜ 卒業試験に その試練が入ってなかったのですか?
入っていれば 悪しき魔法使いなど生まれなかったでしょうに」セバス
「この魔法を使える教師の数が足りなくなったのだ。
さらにこの魔法を使うことを許さぬ管理職ばかりになってしまった。
そもそも この魔法は 術者も一緒に懺悔の眠りに入るからな。
術者は 術をかけた相手が全員浄化されるか10日たつまで、眠りから覚めることがないのだ。」
「ならば あなたが目覚めるまで 浄化の眠りについている者たちを外部攻撃から
保護する結界を張りましょう」
結界魔法科の教師たちが立ち上がった。
ほかの案が出なかったので、最年長教員と結界魔法科の教師たちはホールに向かった。
最年長教員が最初にホールに入って術をかけた。
続いて結界魔法科の教師たちがホールに入り、ほかの教職員が取り急ぎ集めてきた寝具を使って、眠っているもの達を居心地よくしてやった。
さらに早く目覚めた者のために長期保存食と長期保存可能な飲料を用意してやり
万一に備えた簡易トイレもセットして、セバスが生徒たちのために書いた「これまでの経緯と現時点における見通し」お手紙も教卓の上に置いた。
そして結界魔法科の教師たちはホールの中に長持ちのする結界をかけて退出した。
それだけで 魔力切れを起こして動けなくなった結界魔法科の教師たちは、
そろって ホールの向かいにあった控室に閉じこもることにした。
ほかの教職員たちは 彼らのために控室に寝具・食料・バケツ・筆記用具を運び込んだ。
「魔法科で一番若い教員が バケツをトイレ代わりに使わなくてすむよう さっさとけりがつけばいいのに」とつぶやいた。
セバスは「聖堂から人を送るから、まずは魔力切れの回復に努めてくれ」と告げドアを閉めた。
ほかの教職員たちは、宿舎で転がっている人間たちを回収し 聖堂に運び込み始めた。
セバスは 一足先に聖堂にもどり、統括係を務めていた中堅魔術師に学院の状況を報告したのち、施設に回った。




