第37話 リンド聖堂・セバス(大聖堂の図あり)
本章を年内に終わらせるために これから毎日朝夕2回公開にします。
やはり正月はめでたい話で迎えたいですから。
ベルフラワー物語(第1部~3部)を通して 一番の山場というか大転換点なので
省略はできないのですが、
残語だったりシビアな話が苦手な作者としては 書いていてつらいシーンが多いです。
ですから 読者の皆様も適当に 飛ばし読みしてください、すみません。
「戦闘シーンはどこに行った」と突っ込みたい読者様 ごめんなさい
大魔法は連発しておりますが
ちまちま1匹づつ戦うには危険すぎる敵の大群だったので 御覧の有様です
ごめんなさい。
リンとの取引を終えて ベッドに入ったセバスは胸の痛みで目覚めた。
これまで助けようとすれば助けることができたのに、いろいろな理由をつけて見殺しにしてきた人々の顔が夢に出てくるのはいつものことであったが、「やむを得ず」手をかした悪事の数々についても、「ほかに選択肢はあったのに」と胸を焼く痛みとして感じたのだ。
身支度をして部屋の外に出ると、聖堂のあちこちで うめき声をあげてうずくまる人がいた。
リンドの大聖堂は、祈りの場・学びの場(学校・図書館)・救済の場(収容施設)・生活の場の複合体である。
地下には牢もある
最下層は・・・アンデッド生産研究室でもあった。
大司教は、実のところアンデッド生産室の監督官であった。
大司教になって初めてこのことを知ったセバスは絶望した。
(道理でアンデッド生産者と教会との関係がつかめなかったはずだ。
教会の最高責任者がアンデッド生産の監督官であったのだから。
しかも施設長官・教育長官が、アンデッド生産組織の流通責任者・生産研究者だったとは。
TOPにならねば 組織改革は断行できない。
しかし TOPになるには 前任者を己の手でアンデッドにしなくてはならず、その試練を断れば自身がアンデッドにされるなど、悪魔の罠だ。
しかも ごていねいに、悪行に手を染めることを拒否してアンデッドにされる前に自決しようとした者たちが、アンデッド(流体)やら リッチ・キョンシー・パンシーになって泣き叫んだり使役されている姿まで見せられたのだから、あれは断れない罠だった。
私は真実を暴くために、前任者を追い落とした。
彼は 晩年腹黒いように感じたときもあったが、長年私の目には尊敬すべき人であるように見えていた人だったにも関わらず。
彼が 最後の瞬間うかべた皮肉の笑み、
「魂をけがしてまでも稼いだ『生者としての時』を、だれのために使うのかな?」という今際の際の問
それに向き合うことを 私はずっと避けてきたが、
今 その答えを示すときが来たのかもしれぬ)
枕元に置かれていた、リンからのメモを読んだセバスは覚悟を決めた。
廊下でのたうち回っている多くの聖職者たちの横をすり抜けて、セバスは執務室まで行った。
執務室の前には宿直の衛視が立っていた。
セバスは 執務室で手早くメモを書いた。
「教会の3TOPの就任の儀式は 前任者のアンデッド化を行うことだ。
私も手を染めた。
私が正気を保っていられる間に 代わりの指揮官をよこしてほしい
果たして聖堂内で正気の人間がどれほどいることか・・
懺悔の手配まではすすめるが、
付属施設や付属校で まだ悪事に染まっていない者たちまでは、手が回らない」
封をした手紙を衛視に渡した。
「今すぐ、これを王宮のコーチャン国王に届けなさい。
国王がご不調なら、王宮で元気な方の最上位の方に手渡しなさい。
手紙を渡したら、速やかにここに戻ってき、王宮の様子を報告するように。」
衛視は一礼して走り去った。
セバスは隣室に行き、召集の鐘を鳴らした。
(セバスが受けたスパイ養成訓練の中には 当然苦痛に耐える訓練も含まれていた。
プライドにかけても やるだけのことはやるぞ!セバスの決意は固かった。)




