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ベル暦3年:子供時代の終わり  作者: 木苺
スレイン国・他
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第35話 大聖堂の地下

久しぶりに会ったセバスは 最後に会った時に比べると変性しているようであった。


以前は清濁せいだくあわせ飲みながらも清廉であろうと努力しているようであったのに。


(そもそも 大人の姿で彼の前に姿を現したのに あの反応はないわぁ。)と思った。


だから あえて 彼の前では事務的な態度を示した。

それに対してもセバスは無反応。


そこで 禁術が書かれていた紙に手を加えお札に変えてみせた。

 これまでアンデッド制作にかかわったものは、これから10日間苦しみぬいて死ぬという「術返し」のお札に変えたのだ。


 それに対しても無反応なセバスを見て、リンは自分で大聖堂内を調べることにした。

(魔力ゼロで魔法が使えなくても 基本的な魔術様式くらいは知っていなくてはスパイは務まらないのだから、無反応の3連発に懸念を抱いたのだ。

 これまでのセバスは リンの前では表情豊かであっただけに。)


・・・

セバスから巻き上げた書類の山を抱えてリンは一度、王宮内の自室(表向きは「封印されし物置」となっている)に移動して 書類に目を通した。


(報告書は整っている。

 報告書に書けない何があったのか?)


・・・

大聖堂の地下に転移した。

人気(ひとけ)がなかった。


報告書にあった「生産室」はアンデッド生産室、「研究室」はアンデッド生産及びアンデッドそのものの研究室であった。

 しかし 研究室の中にゾンビはなく壊れた檻だけが残されていた。


リンは 大聖堂全体に術返しを発動させた。

さらに 悪しき者たちの逃亡を防ぐために、大聖堂の敷地全体を浄化結界でくるんだ。

 念のため その旨を書いたメモをセバスの枕元に置いた。


リンド地域全体を障壁と結界で包んでから リンは王宮に向かった。


外はすでに暗くなっていた。



・・・

リンは、近衛の姿に変じてリンド王宮のコーチャン国王の寝室に移動した。


眠っているコーチャン国王に静かに声をかけた「起きて」


びくっと体を震わせて目を覚ましたコーチャン

少しぼんやりしている。


「私が暗殺者なら あなたはもう死んでいる」

リンは含み笑いをしながら声をかけた。


「君ね 王の部屋に忍び込んで 枕もとの刀を片付けてから声をかけておきながらそれはないでしょ」


「王様なら 人の気配で目覚める・枕元の武器に伸ばされた手を抑える・武器の有無と関係なく目覚めと同時に身構えできてなんぼでしょうが」リン


「どーせぼくは ぼんくらですから」コーチャンは身支度を整えながら言った。


それを見ながら 椅子に座って持参の水筒から茶を飲むリン。


コーチャンもテーブルをはさんでリンと向き合って座った。


「それで?」コーチャン


リンは手短に スレイン国王・宰相・セバスとの面談内容と大聖堂の地下の模様を話した。


「うちは 君が掃討してくれていたおかげで アンデッドからの直接被害は減ったけど 内政面でごたついているのはスレインと同じだな。

 スレインでアンデッド生産にかかわっていた人間が、スレインの取り締まりを逃れるために

 リンドに大量に逃げ込んできて うちをひっかきまわしている感じだよ」コーチャン


「女王就任のご祝儀代わりに、完全浄化を始めます。

 その一環として 『アンデッド制作にかかわった人間は10日間苦しみぬいて最後は浄化の炎で消滅する』術を発動します。

 あなたは リンド国王としてこの旨周知徹底するとともに、悪しき行いを行った者たちの身元確認と、社会的後始末を行ってください」リン


「10日間も苦しめるなんて残酷すぎないか?」


「本人が逃げ隠れできず、思わず助けを求めて人前に出て自白を始めるほどの苦痛を与え、

 自白を書き留める時間を用意しないと、罪状を周知徹底できないでしょうが。


 ただの疫病でも悪しき呪いでもなく、許されざる罪を犯した者のみに下された罰なのだと

 全員が理解しなければ、変な宗教がはびこるネタに悪用されるだけだわ。


 しかも 関係者がどこにどの程度隠れ潜んでいるかわからない状態では、通報を受けてから官憲が把握するまでに4・5日はかかるのではありませんか?

 犯罪者を見落とさず 犯歴をすべてを公開周知徹底するための10日間です」


「それだと ある程度の準備期間が必要だなぁ」コーチャン


「何日くらい?」


「せめて3日ほしい」コーチャン


「すでに 大聖堂では術を発動ずみです。

 3日後には リンド全土で発動させます。」リン


「わかった」コーチャン


「くれぐれも 罪人のみがその咎により応分の報いを受けているのだということを徹底して知らしめてくださいね。

 そして 見た者が あまりのむごさと恐ろしさに 2度と禁術に近づこうとしないよう戒めるための10日間です。]


「できなかった場合は?」コーチャン


氷の微笑を浮かべてリンは言った。


「それは、あなたも含め 王宮内には アンデッド制作にかかわらなかった者が一人としていないとうことでしょうか?」


「あなたのすべきことは、伝令と捕縛・聞き取り要員を各地に送り出し、審判の下る日と内容を告げ悪しき行いをした者たちを捕縛し自白を公開することです。


 この裁きに便乗して悪しき活動を始めるものがいたら、リンド地域の封鎖が解けることはない。

 すでに浄化結界を張っていますから、悪しき過去を持つ者は結界の外に出ることはできませんよ。

  

 進捗状況は毎日報告よろしく」


「イエス マイロード」コーチャンは胸に手を当ててお辞儀をした。


「すべてが終わった後、君がドレスや近衛姿で参加できる舞踏会を開けるぐらいのゆとりある未来が来るといいね」 コーチャンは悲しげに言った。


リンは姿を消し、王都と王宮の周囲に浄化結界を張った。

次に王宮内と王都全域に術返しを発動するとともに、王宮・王都すべての者にその趣旨を発動した。


またアンデッド制作にかかわっていなかった者たちがこれから10日間の間になすべきことを

王宮の門の内外に張り出した。


リンが王宮の外に出たとき ベルフラワーを出てから2度目の日が昇ってきた。


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