第31話 譲位
リンが スレイン宰相の部屋に飛び込んだ時、宰相とスレイン国王は就寝するところだった。
「寝込みを襲うとは! 年寄の心臓をいたわれ」スレイン国王
「失礼しました。陛下がいらっしゃるとは思いませんでした」リン
「魔力も体も健やかに成長しているようでめでたい。
王になれば 信頼できる配偶者と側近が居るのといないのとでは雲泥の差だ。
その候補となりうる者を見つけたか?」宰相
「私はすでに領主から国王になりました」リン
「一地域の王ではなく、この大陸すべての王となるのがそなたの定めだ」スレイン国王と宰相は声をそろえた。
「腐りきった組織込みのリンド国とスレイン国などいりません」リン
「まあ そういうな。
腐敗を根絶し、良きものを守るためにも そなたはリンド国・スレイン国込みの全大陸の王となる必要がある」王&宰相
「わしも歳だ。もはやこの国を支えきれぬ。
わしが死ねば 必然的にこの国は魑魅魍魎が跋扈する。
弟には魔力がないからな。
この国の実務をつかさどり 国としての骨格を支えてきたのがこの宰相である弟であっても
魑魅魍魎を抑える魔力を持った王なくばこの国は存続できん。
もっともわしが天寿を全うできそうなのは この弟がこの国を守り支えてきたからであるが」
スレイン国王はリンを諭した。
「では 国王崩御とともに この国を結界で封じましょう。
そしてすべてを浄化します」
「なんと悲しい最期じゃ」スレイン国王は嘆いた。
「もはや それ以外の方法で悪しきものを根絶することはできますまい」宰相は王をいさめた。
「悪しきことに手を染める人間を 捕縛しても逃げられ、
やがては捕縛すらできなくなった我らの甘さが 今を招いたのです。
もはや この国の隅々《すみずみ》にまで 悪しき人間たちの支配が及び
魑魅魍魎・悪鬼の類が増殖されている状況では、
人によって生み出された悪しきものたちを抑える魔力など何の意味もなかったことは 王ご自身が分かっておられることでしょう?」
弟の厳しい指摘に スレイン国王は いやいやながらも同意した。
「認めたくはないが 死を前にしてまで己を欺いてはおれんからな」
スレイン国王は嘆いた。
「だから リン そなたにすべてをゆだねる」
そういって スレイン国王は リンに王権を移譲する書類にサインをし、大陸すべての統治者としてリンを指名する書類にサインをした。
それらの書類には すでにリンド国王であるコーチャンの署名がなされていた。
「リン国王万歳
大陸の王に栄あれ」元スレイン国王はつぶやき、息をひきとろうとしたら 弟の宰相に引き留められた。
「まだ死んではいけません!
新女王が結界をはり すべての準備を終えるまで あなたには悪鬼どもを抑えておく義務があります!
魔術師の長としての最後の仕事を果たしてください!」
「宰相殿の命令とあれば 従わねばなるまい」
そういって元スレイン国王は 目をつぶり集中して 魑魅魍魎・悪鬼どもの抑えを続けた。




