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ベル暦3年:子供時代の終わり  作者: 木苺
野生の王国へ
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第27話 フェン 深い穴を見つける

(昨春 ベルフラワーに来た白黒牛と黒牛達が4頭そろって子牛をなくしていたのは「悪い奴」の影響だった。 

 では 今年子づれの寡婦がうちに来るのはなぜだ?


 ここは肉食獣のいない草食動物の天国だったはずなのに、

 特にがけもない平坦な土地で 災害もなかったようなだが なぜ死亡事故が起きる?)


疑問を抱いたフェンは 白黒牛の群れと一緒に コカトリスの婚活に付き添いながら

いろいろと話を聞き集めることにした。


その結果 野生の王国にいる動物たちの間に 行方不明事件や死亡事故が多発していることが分かった。


牝牛たちは 日常的に子育てに適したところに固まって暮らしている。

移動するときには 子牛の父親たちが 周囲を固めて 群れを守るようにしている。


気ままにあちこち歩きまわっている雄たちが よく事故に会うという。


その事故多発地帯の脇を通るときに、危険地域から十分に距離を取って群れが移動していたはずが、脇を守っていた雄牛が 突然体がばらばらになって消えてしまったという。


これまでは 仲間が突然切り刻まれて消えたショックで ほかの牛たちまでがうろたえて群れを乱し、群れ全体が罠?にはまって全滅することも珍しくなかったのだが

今回は 事前に ホルスとスタインが 万一事故に会った時には、騒がず一旦停止してから ゆっくりともと来た道にもどるよう仲間たちに言っていたので全滅をまぬがれたそうだ。


基本的に4足歩行の動物は 後ろ歩きが苦手だ。

 しかしわざわざ 危険地帯に近づく前に その後ろ歩きの練習を群れの仲間にさせたり、罠とは反対側にゆっくりと斜め後ろに歩いて行ってわなから遠ざかる歩き方を教えたのもホルスとスタインらしい。


結果的に 罠で命を落としたのは 脇を歩いていた雄牛2頭だけですんだとのこと。


そのことから 白黒牛の間では「ベルフラワーに行くと 食べ物に恵まれ安心して子育てできるだけでなく 賢くなれるかもしれない!」とうわさが広がったのだそうだ。


それまでは、「搾乳され、狭い牛舎で暮らすなんて嫌だ!」と思う牛のほうが多かったにも関わらず 今では 「ベルフラワー、もしかしたらいいところかもしれない」と評価が上がりつつあるそうな。


ベルフラワーから帰ってきたばかりのホリーとスターは

「あそこの暮らしは快適でした。

 私たちは 黒牛達の恋愛~出産話に盛り上がっていたので、ホルスさんたちみたいに賢くなったわけではないですけど、楽しい1年でしたよ」と 白黒牛仲間に話した。


「なに? 黒牛が出産しただと! めでたい!

 あいつら 力持ちだが頭が固くて 男女が仲良くなることが珍しいからなぁ」


「ベルフラワーには 縁結びの神がいるのか?」

とこれまた 新しいうわさの種ができたようだ。


・・

うわさ話に興じる白黒牛たちにコカトリスの小春とポカポカのお見合い関係は任せて

フェンは 牛たちの言う「危険地帯」を調べに行くことにした。


(危険地帯が拡大してきているらしいのが気になるな)


すると 罠だらけの地域に出くわした。

(この姿だと 全体がわからん><)


フェンは風になって探査することにした。


罠の発動状況を見る為に草などを落としてみたが反応なし。

野鼠などを捕まえてみて上から落としても 反応なし


しかし 離れたところに逃がした野鼠やウサギたちを危険地帯めがけて追い込むと・・罠に触れた動物たちは 切り刻まれて消えてしまった。


(厄介だな)


丹念に調べると、中心にある小さな穴を中心に罠のある「危険地帯」が展開していることが分かった。


(しかたがない)


フェンは風になって穴の中に入った。


深い竪穴の下には広い空間が広がっていた。

機械がびっしりと並んでいる。


(面妖な)

フェンはリンを呼んだ。

 「地表からではなく 地下に直接転移して来い」と。


リンは 例のテニスプレーヤーコスで現れた。


「うわぁ」いやそうに声を上げたリンによると

  ①地表を通る生き物を捕まえる

  ②その生命エネルギーの半分を動力に変える

  ③その動力で罠の維持と拡大

  ④残り半分のエネルギーで 捕まえた生物の分解・分析~遺伝子レベルでの新生物の生産・増殖を行っている


ということであった。


「誰が作ったかわかるか?」フェン


「さあ? リンドやスレインでは見たことない。」


「ではなぜ お前は知っている?」


「教会が保有するアカシックレコードからの知識」


「そもそも どうやってアカシックレコードへのアクセスを知ったのだ?」


「私は もともと情報にアクセスできた。

 たぶん私の母もかな?? よくわからないけど


 母のもとから引きはがされて 教会に連れていかれて そこで無理やり機械に接続されて 初めてそれがアカシックレコードと呼ばれていることを知った。


 だけど それはすごく邪悪なものだったので 私は全力で接触を拒否して

建物ごとぶっ壊したみたいでね、それ以来 そういう機械に近づくことを禁止された」


「転生によるお前の誕生そのものが謎だなぁ。

 とにかく 気が付いた時にはそこに「我あり」というのが 自我の誕生であり人間だから そのことは別にとやかく言う気はないが。」フェンは首を傾けた。


「ところで お前は そのアカシックレコードとやらの情報を人に漏らしたのか?」


「まさか! いくら当時の私が赤ん坊とか幼児さんとかであっても 邪悪か否かという判断ぐらいは直感的につきましたから、何も一言も漏らしてません!」


「つまりは 覚醒前から お前はお前であったということか。よかった。

 もっとも 人間であったお前にとっては つらい事態に直面させられたのではないか?」

フェンは心配そうにリンの顔を覗き込んだ。


「まあね。でもまあ 嫌な思い出を払しょくするくらい ライトの情熱に翻弄されたからその話はパス。今の私にとってはね」


「まったく お前にとっては ライトが命なんだな」

フェンはいつものように神獣の姿にもどってつぶやいた。


「私が人間である限りはね」リンはそういって笑った。


「しかし 覚醒した私としましては、さてどうしましょう?

 悪しきもの撲滅のために 私たちはここにいるのだから」



「ふむ 生命エネルギーがついているものはすべて収納し

 それ以外は完全消去でどうだ?」フェン


「OK ではっ!」

リンは生物サンプルやそれが付着した機械類のすべてを収納し封印した。

さらに遺伝子情報・新生物などは、自分の空間収納の中に「生物区画」を作ってそこに収納した。


一方フェンは地表に仕掛けられていたすべての仕掛けを回収して地下空間に積み上げた。


リンは 竪穴を結界でふさぎ、空間の中すべてを業火で焼き尽くす間は外から酸素を取り込み、浄化した純粋な二酸化炭素だけを排出し、そのあと、フェンを結界の外に避難させ、自分は残って地下空間を完全に浄化したのち、外に出た。


リンが外に出ると 地下空間は地表の重みに耐えられず地盤沈下が起きた。


野生の王国には巨大な陥没地帯ができた。


リンは、後の始末をフェンに任せ、自分はさっさとねぐらに戻って休息をとることにした。


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