第26話 リンの容姿をめぐって (付 ホワイトとミルク)
フェンと小春たちより一足に先に本領へ戻ったリンは 新しくきた白黒牛の親子を修道院のメンバーに紹介した。
牛たちは みんなで自分たちの呼び名を決めてほしいといったので、母牛をホワイト、子牛をミルクと名付けた。
ミルクは雌の2か月仔だった。
早速 牛舎とコカトリス舎の増設に行こうとするリンをフォークは引き留めた。
「リン 少し背が伸びて髪の色がかわったようだが、これからはその姿で過ごすつもりですか?」
「そうね。ワープをするときは これからこういう外見になるかも」リン
「すごい リンもとうとう神獣の仲間入りをしたんだ!」ロジャ
「ドラゴンが人化した時から いずれはその逆もあるのではないかと思っていたが、リンがドラゴン化するのではなく ただ体を成長させただけでよかったと言うべきか」ドワーリン
「あー フェンもドラゴンに変身させて ドラゴン3匹で戦隊を組むのも楽しそう♡」リン
「でも 今はそこまでできる気がしないわ。
変身魔法って 変身する姿形を具体的にイメージしないといけないから
むつかしいわ」リンがつけたした。
「でも どうして急に大人になったの?」ディー
「戦うときに 大人の体つきのほうが便利だからよ。
ワープした先で でっかい巨人とか魔物にぶつかったときに
瞬息でぶったぎるのに 以前の体だと 足が短すぎて長い刀が使いにくいし 腕が短すぎてこぶしが相手の顔面に届かなかったりするからね。
やっぱり 魔法と物理攻撃を同時展開するには 体が大きいほうが有利だわ」
「じゃ 髪の色まで替えたのなんで?」ディー
「趣味かな?
外見をガラッと変えたほうが 気持ちも切り換えられていいじゃない」
「だけど 変身するたびに体の大きさがかわると 服が脱げたり破れたりしないの?」ティティ
「服込みで変身するから。だから 変身後の服装は機能性重視のシンプルデザイン。だって そんなこまごま考えることできないもの」リン
「服まで変身できるのなら 時間のある時に一緒に普段着のデザインを考えましょうか」メリー
「フェンにも言われたけど このかっこうだと ちょっとスカートがひらひらしすぎかしら?」
「そうですね。普段着はもっと落ち着いたものがいいと思います」テレサ
というわけで リンの普段着は 見た目ジーパンにデニムのシャツというカウガールっぽいものになった。
といっても素材的には伸縮性と吸湿撥水速乾性に富んだジャージポイモノなんだが。
・・
リンがまとう服生地を見て メリーが「私もこういう素材で服を作りたい!」といったのはこれまた別の話。
メリーが服生地に垂涎のまなざしを向けたとき、リンは メリーにひたすら謝罪したそうだ。
「魔法素材を 私専用にしか使えなくてごめんなさい。
これって 私の肌みたいなもので そのぅカメレオンが体の色を変えるように 私の肌の一部を服っぽく変化させていると思ってもらえるとありがたいです」
「わぁー聞かなきゃよかった」とメリーはぼやき
レオンは「そうか 服装を変化させる魔法っていうのは そういうイメージでやればいいのか」といたく感銘を受けたとか受けなかったとか。
そしてその話を聞きつけたロジャが 「僕も服魔法を使う!」と頑張り魔力切れを起こし ジョンに叱られたとか、「だったら 魔力増強頑張る!」と筋トレならぬ「魔トレ」で肉体労働に一層精を出したとか 意外な方面に波及したのであった。
・・・
リンが増設した牛小屋に敷き藁を運んできたライトは リンをちらっと見て黙ってわらを下ろした。
リンは苦笑いをして 「今夜話すか?」と尋ねた。
「君の邪魔にならないのなら」
「じゃいつものバラ園で」
・・
というわけで その日の夜バラ園にライトが行くと、
リンはバラ園のベンチの上で眠っていた。
「大人の女性が戸外で寝るのは不用心すぎる」ライトは声をかけた
「あー めんどくさいな。
大人でもこどもでも いろいろ気を遣うことがあるのは変わらないんだな」リン
「むしろ女性の場合 大人になるにつれて気を遣うことが増えると思うぞ」
「言われてみればそうだね。めんどくさ」リン
「いっそ 男に変身すればよかった」リン
「やりすぎだろ。さすがにみんな混乱するぞ」
「どうだろうね」リン
「それで お前は 俺にどんなふうに接してもらいたいんだ?」
「はっ?」リン
「今迄みたいに子ども扱いされたいのか?
15の少女として扱ってほしいのか?
大人の女性として扱われたいのか?」
「私は私 君は君 」リン
「またそういうこと言う」
「だってそうだろ。どんな外見でも中身が私であることはかわらない。
それに 中身だって外見とは関係なくどんどん変化していくのが人間じゃないか」リン
「そういうもんかねぇ」
「そうだよ。
私という中身を見て接してくれたらいい。
そしたら 私の外見なんて些末なことだよ」リン
「でも服装は 動きやすいほうがいいな」と言って
リンは再度着替えた。(変身した)
足回りはゆったりとしていてポケットが多い作業ズボンスタイルに。
「ほんとは Tシャツが良いのだけど」と言いつつ上半身はポロシャツで妥協した。
もともと服の下は筋肉質の男性の肉体とほぼ同じなのだが、見た目が女性なので これ以上ややこしい印象の外見にすると 本格的に面倒が起きそうな気がしたので Tシャツはなしにした。
同じ理由で しばらくポニーテールを維持することにした。
リンとしては 出陣するときは 自分の気分を盛り上げるためにポニーテール
普段は 髪がうっとうしくないように サイド短め 後ろは顎のライン当たりに切りそろえ、前髪は目にかぶらない程度に切りそろえて横に流す髪型にしたいと思っていたのだが。
髪型のせいで、各自がイメージする「男」「女」といった枠組みに入らないだの はいれだのと絡まれるのはごめんだと思ったのだ。
現にそういうめんどくさい発想で悩みそうな御大 それも恋愛という枠組みを引っ提げて迫ってきそうな?来るかもしれない?ライトが目の前に居たので余計に・・・。
(私は「恋」という名の親密さではなく「家族」としての無条件の安心・安らぎというものが欲しかっただけなのに・・ そこには男女の区別なんてないのに・・
どーも恋愛方向引っ張りたがるのは勘弁してほしい。
そして 恋愛方向に進まない時には 男女の枠踏みの中に私を押し込もうとするのは迷惑よ
彼が 私への好意から 私と一緒に居るためにいろいろ真剣に悩んで試行錯誤しているのがわかるだけに 余計に困る=気を遣う)
それが ライトととのこれまでの出来事をもとに 今のリンが下した判断であった。
リンが外見を決めるときに、自分の感覚と周囲がそれを見て最初に感じるであろう衝撃度を塩梅する基準は、
「私の中身を見て付き合ってほしい。 でもむやみにジェンダー感を刺激してトラブりたくない」であった。
・・
奇しくも リンの外見に関する同じような会話が 修道院のあちこちで交わされていた。
そして ドワーリン・フォーク・マリア・テレサも リンと同じことをほかの者たちに語っていた。
共同宿舎の面々が リンの新しい容姿を目にするのは これよりもちょっとあとのことである。
ベルフラワーメモ
現在本領にいる魔牛
黒牛雄 くろ・ダーク
黒牛親子:子供達が乳離れしたら、母子は野生の王国に帰る予定
クッキー(母)コク(父) リキ(雄) サラ(雌)
チョコ(母)ブラック(父)ビラ―(雄)スイート(雌)
白黒牛
妊娠中 ホルス・スタイン
ホワイト(母)ーミルク(雌)




