第24話 野生の王国へ(白黒牛編)
リンの初ワープはフェンの付き添いつきだ。
フェンはいつものようにフェンリルの姿だが リンは20歳前後の大人の姿に変身した。
色白・金髪のポニーテール。
くくった髪の裾は、うなじあたりで揺れている。
青い海のような瞳のぱっちりとした目
手足はすらりと伸び、テニス選手のような体つきだ。
背丈は 標準的な成人男性と同じくらい
「他人から見下ろされるのは好きじゃないけど、ライトのような大男になるのも不便そうだから」というのがその理由
「確かにライトは ここに来てから10センチは確実に伸びているな。
しかも肩幅も大きくなっているから全体の見た目はかわらんが 間近で見ると確かにでかくなった」とフェンも同意した。
「背が低くても大きくなりすぎても 他人と目線を合わせるのに自分の姿勢を調節しないといけないから めんどうそう」リン
エネルギー体の仮の姿は、身にまとうものも自在に変化させることができる。
このあたり ナイアードの外見づくりと似ている。
彼女たちも衣装デザイン込みで外見を決めている。
さて 今回のリンの衣装は
「服について細かく考えるのが面倒だから」という理由で 白いテニスウェアのようなかっこうだ。
ただし 帽子もサンバイザーもなし。
さらに言えばポニーテールにリボンもなし
このあたり色気なしというか愛想のない話である。
「ずいぶんひらひらしたスカートだな」フェン
「機能的で シンプルでかっこいいじゃない♪」リン
「ふん 好きにしろ」フェン
そして二人は飛び立った。手をつないで。
マーカーがあるときは マーカーで着地点の状態を確かめてから
トンネルの扉をあけて目的地に飛び出すイメージでワープをする
マーカーがなかったり着地点の状況が不確かな時は トンネルの手前で立ち止まって外の様子をうかがってから目的地に飛び出すイメージだ。
一度飛び場たてば よほどのことがない着地点を変えることはできない。
しかし 外に異常があるのがわかっていれば 飛び出す速度や歩幅を変えたり
ガスマスクや耐火服を身に着けるなどの対策をとることはできる。
今回は 何事もなく野生の王国につくことができた。
今回はリンにとってのはじめての瞬間移動の練習であったから 手ぶらである。
そこで今度は ねぐらで待っているドラのもとにリンは一人でワープした。
(ドラちゃんがマーカー役をしてくれた)
それから 白黒牛の親子とコカトリス達を空間収納してフェンのもとにマジックバック式空間移動した。
リンの空間倉庫には生物を傷つけずに収納することができる。
その状態でリンがワープしても リンが空間収納した生物が傷つくことがない。
今回は 念には念をいれた安全対策で、野生の王国へ家畜たちを運ぶには、
現地で待っているフェンの協力のもと、手慣れたマジックバック式空間移動にした。
フェンのそばには 白黒牛の一群が居た。
リンが到着すると、ベル歴1年に本領で乳を提供してくれたホルスとスタインが話しかけてきた。
(二人は 見るからに 妊婦さんといった感じの大きなおなかをしていた。)
「「お久しぶりです」」
「お久~。体の調子はどう? クローバーとカズラは元気してる?」リン
「おかげさまで」
ホルスとスタインは 2頭の乳牛を群れの中から呼び出して紹介してくれた。
「こんにちわ。ご機嫌いかが。 私たちのこと 覚えてるかな?」
クローバーとカズラは念話はできなかったが、機嫌よく頭をリンの掌にこすりつけてきた。
「私たち 出産は5月ごろになりそうなので、こちらの親子を紹介したいのです」
ホルスとスタインが一組の母子を呼び寄せた。
なんでも 夫が事故でなくなった牝牛とその子らしい。
「私 お乳がたくさん出ますから、牛乳提供と引き換えに 私たち親子をベルフラワー領で保護してほしいのです」牝牛が一生懸命話しかけてきた。
こうした事態についてすでに運営員会で話し合ってきていたので リンは落ち着いてホルスとスタインに質問した。
「えーっと あなたたち自身についての希望は?」
「ご迷惑でなければ いつでも連れて行ってください。
今でも私たちの子牛が生まれて搾乳できるようになってからでも」ホルス
というわけで、
今回新顔親子と一緒に ホルスとスタインもつれてもどることにした。




