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ベル暦3年:子供時代の終わり  作者: 木苺
人間模様・他
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第21話 リンの決心

「決めた! 人間やめるわ」

ねぐらでフェンやドラと一緒に朝食をとっていたリンが言った。


「どこまで辞めるんだ」フェン


「人間の体にこだわるのやめる」リン


「というと?」フェン


「今は 戦いに決着をつけることを優先する

 人の体という器にこだわっていては 十分に戦えない。

 

 このままずるずると 一時しのぎを重ねて 次世代に問題を先送りしないためには徹底的に悪しき者たちを根絶する必要がある。


 だから人間の体を維持することにこだわるのやめる」


「いいの、それで?」ドラ


「そんなことして あとから「未練が」とか言って また人間に転生しても そこにはライトはいないぞ」

フェンが重々しく言った。


「それを言えば 今だって ライトと個人的に話せてないし。

 だいたい 心の交流を避けてばかりいたら 居ても居なくても同じでしょ。


 だったら 今は戦いに専念して、終わってから まだライトが私の方を見ていたらもっかい交際を申し込むわ、こっちから。」


「どっちみち 生身の体を持っていても子作りできないなら エネルギー体として作り出す仮の体であっても大した変わりがない気がしてきた」


「確かに俺たちにとっては 大した違いがないのは確かだが、人間にとっては 違って見えるのではないかな」フェン


「いいよ。肉体が変化するのを見て その中身が同じ私だと思えない人なら それまでの人だわ。

 あれこれ悩むのやめる」


「だったら変身する前に 一言ライトに挨拶しに行っておけ。

 でないと 次に会ったときに 「黙って~ずるい」とか言われるぞ」フェン


「泣き出さずに ちゃんと ありがとう・行ってきますが言えるかな?」リン


「ちゃんと言えるくらいの覚悟がないなら これまでの人生にバイバイする決断は下さんほうがいいと思うがなぁ。」

 フェンリルの姿に戻ったフェンは 顎を リンの膝にのせて言った。



・・・

その日の夕方、ライトが黒牛たちの世話を終えて食堂に向かおうとすると

物陰からリンがひょっこりと現れた。


「やあ」ぎこちなく挨拶するライト


「こんばんわ。

 食事前に悪いんだけど ちょっといいかな」リン


「ああ」


「えーと 今まで いろいろありがとう。

 会えない時も私は元気だから心配しないでね。

 ハグを10年先送りにするのもなんだから 今してもいいかな?」


そういって リンは軽くライトの胸に体を寄せた。

ライトは軽くリンの背中に掌を添えた。

「君の帰りを待ってる。

 仕事中は俺のこと気にしなくていいから、一件がかたづいたら帰ってきてほしい」

リンの体に回した腕に少しだけ力を入れるライト


リンは背伸びをしてライトの顔を見上げ

「あなただけ ぐんぐん伸びて体が大きくなってずるい

 おかげで ほっぺにキスもできないじゃない。

 家族で ほっぺにキスを()わすのって 私のあこがれなのになぁ


 次に会うときは 絶対 あなたとおなじくらい背を伸ばすから」

リンは 頭をかしげて 頭の先でライトの胸をこつんとしてから ライトの腕の中から抜けでた。


「君ね 俺と同じくらいの背になったら そんなに簡単に俺の腕の中からすりぬけられなくなるぞ」

「だいたい そんなに急に背が伸びるもんでもなし

 そんなに長く 戻ってこないつもりなのか?」

   しかめっ面のライト


「だから 別れのあいさつに来たんじゃない。

 早く仕事を片付けるためには 私もフェンなみにバージョンアップして 体も大きくするんだから」


リンは笑って手を振り ライトの前から姿を消した。



思わず膝の力が抜けそうになったライトのかたわらにアトスがあらわれた。

「スコリーに言われて お前を迎えに来た。」


「俺 もうどうしていいかわからない」

そういってライトはアトスに抱きついた。


「まずは しっかりと飯を食って寝ることだ。

 明日は明日の風が吹く

 ほらこれで どうするか決まったろ」アトスは 迷惑そうに首を振りながら言った。


「だって だって リンが急に大きくなるって

 彼女以外の人ならただの冗談だと思うけど 彼女だったら ほんとにやりかねない」


「いいじゃないか 見かけが変わっても中身がリンなら

 まして お前たちは成長期なんだから」


「そんな単純に」


「ややこしくするより 単純に片づけて待つほうが賢いと思うがなぁ」


しかたなく ライトはアトスに見送られて食堂へ向かった。

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