第15話 ラードづくり
話は少しさかのぼるが、正月が終わり、盆地の入植地にトントンたちを送り届けたドラちゃんは、大量の薪を持ち帰った。
「これだけあれば、修道院と共同宿舎の1年分の薪が賄えそうね」
マリア・テレサ・ミルタンは満足そうに言った。
「ちゃんと薪割りまでした状態で送ってくれるとはありがたいな」フォークは嬉しそうに言った。
「小枝や それより細い粗朶もちゃんと分けて束ねてある♬」リン
というわけで、1月の半ばごろ、マリアとミルタンは、修道院と共同宿舎の食堂の保温も兼ねて それぞれラードをとることにした。
助手はエレンとアシカである。
・ラードの作り方
①約1年半もの間、マジックバックの中にため込んでいた脂身を3センチ角に切る
②大鍋に一重にラードを並べ、被らない程度に水を少しだけ入れ、蓋をして煮立てる。
火加減は、ぐつぐつ煮え立つように、しかしラードが焦げないように
③鍋の中の水分が飛んだら、蓋を取って中をかきまぜながら脂が透明になるまで弱火で加熱。
そこにこびりつかないように しっかりとかきまぜ続ける。
脂身のうち 油は溶けていき、「茶色のカス」だけが残るので、それは網じゃくしでこまめに掬い取る。
④カスは麻の目の粗い布巾(ベルフラワーではまだ綿を生産していないので)に
とって、ラードを搾り取る。
透明になった脂も布巾でこして、耐熱容器に入れて固める
・ラードは炒め脂として使ったり、ケーキ類を焼くときのバター代わりに使用
・ラードカスは 胸やけしない程度につまんでもよいし
焼き菓子をつくるときに、(重量にして粉の重さの1%程度まぜてもよい
やけど防止と脂身を焦がさないために、ラードづくりは何回にも分けて行った。
主に冷え込みのきつい日に。
エレンはマリアについて、アシカはミルタンについて、火加減やラードを火から降ろすタイミングを学んだ。
入植以来大人たちは日々忙しく、なかなか年少の二人と個別に作業をする時間が取れなかった。
それゆえ 二人は「自分たちは役にたてていない」とさみしく感じていることに気づいたので
ラード作りを一緒に行うことによって 幼い二人の自尊心を回復させようと、マリアとリンで計画し、ミルタンにも協力を頼んだのだ。
・灰もかなりたまったので、灰汁を取り、脂身の一部を使って石鹸も作った。
(石鹸作りについては、「ベルフラワー最初の一年 第62話参照)
・一方盆地の入植地でも、DDの指導のもとアランとリックはラードづくりを頑張った。
何を頑張ったかと言えば・・・
鍋に脂身を入れすぎない
火かげんを守る
ちゃんと脂が透明になるまでかきまぜるなど
基本を守ることを頑張ったのである。
リックほどではなくても アランもかなりのせっかちなので、その手綱を取るDDは 本当に大変だった。
リックとアランは根っからのストリートチャイルドであり、何の技術も持たず、仕事への意欲も規範意識も欠如していた。
ベルフラワーで保護したとき、彼らはすでに10代後半であり「弱い者から奪って生きる」生き方にそまりかけていた。
だからこそ、リンは 彼らの興味を引きそうな作業をちらつかせては、彼らの自主性と責任感を養おうとする一方で、
ダンカン達 盆地の開拓地の面々に、生き残る為に必要な仕事を、彼らとともに作業をすることを通して、仕事のイロハと共同作業に必要な規範を彼らにたたきこむよう依頼していたのである。
リンの強烈な勧誘(若者を育てることは自分たちの未来にもつながる)により、若手の育成に同意したダンカンとドスコイは、リックとアランの奔放さに 日々忍耐心と自制心を鍛えられていた。
だからこそ彼らは、リックとアランを前にした時のDDの忍耐心と厳格さには一目おいていた。
「若いのに、教師のかがみだな、DDは」ドスコイ
「俺も あれくらい根性があれば、今頃弟子の一人や二人育っていたかもしれない」ダンカン
「ビネガーの時も (リック達への)基本の徹底に苦労しましたが・・
やはり今回も でしたねー」DD
(DDだって リック達を育てることに大変さを感じているのだ。
だが DDは かつて師について 文武両道の大魔法使いになるための修行を積んでいたので、その時に
「人を導く心構え」についても学んでいたのである。)
※ 今夜8時 2回目の投稿として 「盆地の開拓地のこれまでと現状」を投稿します
(参考)
「大きな森の小さな家」ローラ・インガルス




