第12話 これまでの経緯
リンが修道院を設立したとき最初に考えたのは、荒れ地を農業のできる土地にすることであった。
そのために本領の地の生命力を回復する為に魔力を駆使して回復魔法をかけるとともに、水の確保に努めた。
なぜなら そこは元は肥沃な土地であったから。
しかし 人間たちが増えすぎて 地力を根こそぎ奪ったあげくに、
強引に魔法を使って大地を支えてきたあらゆる人外、動物や妖精・政令から微生物に至るすべての生命力を吸い上げ収奪し枯らしてしまっていた。
だから リンは、本領に人が住めるように土地の改良を進める前に
人が住み着いたことを知ったリンド国・スレイン国の人間たちが攻め寄せてこないように強固な防壁(物理的な壁と障壁魔法)をひいただけでなく、オオカミと毒性のある茨など人の侵入を阻む植物まで用意して防御態勢を固めたのであった。
しかし 人は雑食性の生き物なので、動物性たんぱく質を確保したい!牧畜だ!
というわけで、放牧地を求めて、湯気の地や川辺の入植地を探し当て、整備した。
そして 農作業をするにも建築にも道具がいる、
それには鉱物資源や焼き物用の土がいる。
何よりも 火力を確保するためには薪がいる!
何よりも 工芸材料となる木々を育てる場所がいる!!
とばかりに適地を探し求めて 見つけたのが「盆地」であった。
この盆地というのは、元は森林資源・地下資源を利用して栄えた工芸都市の成れの果てのような場所で廃墟乗る土地であった。
廃墟は 産廃汚染で土地が完全にしんでいたので、リンが浄化した。
そのうえで 「根粒豆豆」という魔法植物を植えて、土壌を改良。
さらに 多くの妖精赤ちゃんを招聘した。
妖精赤ちゃんというのは、湯気の地の近く(といっても本領と比べたらという相対的な距離感なのだが)神秘の地と言ってもよいところで発生した存在である。
妖精赤ちゃんたちが持つ可能性は無限かもしれない・・
それくらい 生き物とかかわることにより変化する未知の存在である。
盆地に来た妖精赤ちゃんたちは、現在 バイオマスに力を入れている。
早い話が、生き物は自然の恵みを食べて排泄する。
糞尿を放っておくと 病原菌など悪しき結果の元を増やすか、あるいは干からびてただのゴミくずにしかならない。
が 微生物などの協業により 植物が育つ地力と転じることもできる。
この生命力の循環ともいうべき自然の営みが消滅している世界であったからこそ、妖精赤ちゃんたちがそうした自然循環の働きを復活させようと バイオマスで頑張っているのである。
一方のリンは、工芸材料となる木々を魔法で再生創出して植樹した。
なにしろこの世界では多くの木々もまた消滅していたので、かつての記憶(リンの前世のそのまた前世の・・原初の記憶といってもいい)や異世界の記録を参考にして多くの植物を創出したのだ。
ちなみにリンはその気になれば植物以外の生物を生み出すことができるのだが
それをやると完全に人間の枠から飛び出してしまうし、
作り出した生き物に対して何億年もの責任をもつことはできないのでやらない。
(というか、かつてこの星で、気が付くと多様な生命に囲まれていて、それらとかかわっているうちに今現在にいたっているので、動物と意識の問題がいまだリンにはわからないし、わからないことに手は出したくなかったのだ)
なによりもリンは人間として生きることを望んでいたから、リンが創出するのは かつて人間が利用栽培したことのある植物限定である。
がしかし リンとかかわったノーム達はリンの記憶を覗き見て 自由奔放にいろいろな生物を生み出したがっているのが、今のリンの悩みの種でもあり日々の留意点でもあった。
がこれはまた別の話として 今は脇に置いておく。




