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ベル暦3年:子供時代の終わり  作者: 木苺
川辺の開拓地にて
17/84

第11話 ベルフラワーの羊たち

3月中旬 妊娠中の羊たちは全頭出産を終えた。


そこで ベルフラワーに居る羊たちを数えなおした。


・雌羊48頭と雄羊2頭より

 その子供 雄48頭 雌48頭 出生


 面白いことに 高齢の羊から先に出産していた。

おかげで 最後に出産した若い羊が 子羊の扱いに不慣れそうなときには

先に出産した高齢羊が 子羊の世話の仕方を教えているようであった。


「うーん 大丈夫かなぁ 高齢羊の体力」ムギ


「このまま 助け合い精神で 若い羊が子育て上手になって

 高齢羊の子が乳不足になったときに 自分の乳をわけてくれるといいのに」リン


「相変わらず ロマンを語ってくれますねぇ」ムギ


「乳不足に備えて、生乳をマジックバックで保管してありますし、羊用の哺乳瓶もフェンからもらいました」レモン


「なるほど。

 備えあれば憂いなし。

 ほかに 何か気を付けることは?」リン


「モモの出産前後の手伝い方がわからない」ムギ&レモン


「それは オオカミ達に任せておけばよいだろう」フェン


「なにか必要なモノやことがあれば ススが言ってくれるんじゃない?」リン


「それよりも ここの整備をすすめて、守りを固めるとともに 新鮮な水と安全な食料の確保により一層気を配ることだ」フェン


「川の水が外部から汚染されたときに備えて もう1本井戸を掘っておこうかなぁ。

 万一の時には 井戸水で羊やオオカミを養わなければいけないから」リン


「それはきつい。俺とレモンで水をくみ上げることはできても

 配り歩く体制が全くできてない」ムギ


「それは 手配するとしても 先に羊の数の確認をしておこう」フェンが言った。


・ベルフラワーに居る羊の内訳

①授乳中48頭 (うち8頭は高齢により今後の種付けについては要検討)

②雄AB:交配用・マジックバックの中で待機中


③生後18か月くらい:交配用 (父系不明)

 雄25頭

 雌25頭


④雄ABの子:雄は食用 (10か月未満)の羊はマジックバックで待機中

 (生後4か月 雄2)

 (7か月 雄1 雌22)

 (9か月 雄1)  

  10か月 雄21  雌3 


⑤新生児:雄は食用

 Aの子

  雄 24頭

  雌 24頭


 Bの子

  雄 24頭

  雌 24頭


「それで ここのミルク受給はどうなってるの?」リン


「今は 本領から毎日飲む分のミルクを送ってもらってます。

 雌羊達は今年になってから断乳しましたし、今は授乳中ですから。

 ストックは、哺乳用の予備にしてます」レモン


「で 肉需要を中心に考えると?」リン


「一つの考え方としては、7か月仔から順番にばらしていって、それぞれの脾肉状況を実地にたしかめることだな。


 もう一つの考え方としては、大きい方から食っていくだ」フェン


「牧草を食べるようになってからの体の成長も著しいが、草の食いっぷりも増すんだよなぁ。

 生後12か月以上は 体も大きくならないし、食う量も増えず 毛だけが伸びている感じなんだけど。


 だから交配用の羊を毛刈用もかねて放牧を続けるのなら、それ以外のは生後12か月でマジックバック送りにしていいと思う。


 生後何か月から食用にするかについての検討については任せる。」ムギ


「よしならば、収納している雄から順番に食べていこう。

 羊1頭につき月齢に応じた1か月の給餌量はちゃんと記録しているんだろうな?」フェン


「はい ここに」レモンが出した資料を リンは見た。

(この手の計算に強い人はだれだろう? 私もできるけど専門家に任せたい)


「給餌量と脾肉率の計算に強い人がいたっけ?」リン


「私やります!」レモン

「OK じゃあWチェックできるように だれか探して紹介するわね、できたらだけど

 私は 今は 防衛線のほうに集中したいから」リン


「そんなに 危険なんですか?」ムギとレモンが心配そうに尋ねた。


「外の状況は悪いわね。

 だから これから1年は 私・フェン・ドラが戦いに集中できるように、

 内向きの仕事はどんどん任せていくつもり。

 そのためにも あなた達一人一人に 仕事を確実に進めて連絡・記録だけはきちんと取ってほしいの」リン


「お前達の安全については 心配はいらない。

 しかし その安全を確保する為に これまで開拓に回していたリンの力を防衛線に回すというだけだ」フェンが補足した。


「というわけで、レモン これまでの記録を活かしつつ、これからも、しっかりと記録と計算お願いね。秋の繁殖期までに、子羊の食べごろの算定基準が出来上がるように」リン


「で 当座の見通しは・・」リン


「本領から人を運んでくるのもめんどうだ」と言って

フェンが人化して レモンとムギがつけた記録を読みだした。

 銀色の髪を頭の上でくくり、前髪をたらし、ゆったりとした水色の官吏服を着ている。


赤ペンで印をつけては、青インクで記録の不備をただしていく。

 レモンとムギは、驚く暇もなく 特訓されていった。


リンは「まかせた」と言って小休止。


・・

フェンの指導のもと、ムギとレモンが出した暫定方針

(1)現在マジックバックの中の羊は 若い方から解体していく

   その結果を勘案して、食用雄羊の食べごろ(放牧期間)を定める


(2)交配用の羊③群は秋まで放牧を続ける


(3)④群の雌3匹は計測用に放牧を継続

   雄は生後12か月(5月)になったらマジックバック入り


(4)⑤群の羊については、肉用の食べごろと乳用羊の需給計算が終わってから扱いを決める

   離乳期の生後4か月(6~7月)までは 母子一緒に過ごす


となった。

 ちなみに正肉歩留まりは現状不明だが、枝肉計算で

   羊1頭100キロとすれば、ベルフラワーの肉需要が1日あたり7キロとすれば

   羊1頭で14日間はOK

    つまり1か月に羊2頭の消費だ


   だから④群の雄の羊45頭で1年分の肉需要が賄えることになる


   そして今年生まれた⑤群雄48頭で来年のお肉が賄える


「やれやれ 肉に関しては 一息つけそうだ」ムギ

「あとは 次に生まれる羊が双子ぞろいか否か、そして雌の扱いね」リン


「子羊を早く消費したい場合は、肉量が少ないから 多く生ませなければいけないですね」レモン


「毎年妊娠させられる雌羊の負担は大きそうね」リン


「出生数を増やす為に 雌羊の数を増やさなければいけないのなら・・

 その分の飼料の量も計上して 食用羊の月齢あたりの肉量と飼料バランスを考えないといけないと思う」ムギ


「となると 早めに子羊を食べて飼料節約という仮定が崩れるかも」リン


「牧草がたっぷりだと ここまで考えなくてもいいんだが。」ムギ


「そのためにも 牧草栽培と自生への働きかけを進めましょう」リン


「それにしても 資料にあった異世界の羊って小さいのですね」レモン


「っていうか ここの羊が すごく大きいのよ」リン


「俺もそう思う。

 どの羊も 俺が今まで見た羊よりも かなり大きい

 そして すごい大食いだ

 昨年 アホほど燕麦を作っていてよかったと心底思う

 牧草だけで これだけ養うのに ここの土地の広さで大丈夫か心配になってきた」ムギ


(実の所 リンがスレイン国の国境近くで 救いあげてきたこれらの羊は

 スレインの研究室で産みだされた改良品種で、大食いすぎて 枯れた大地では養えないと 放り出された羊だったのだ。

 しかも 実は虚弱体質の世話がたいへんな羊だったのだが・・

 一昨年 リンのマジックバックの中で待機していた間に、リンの魔力の影響で体質改善されて頑健な体になり、健康な子羊が生まれるようになったらしい。)



「ところで 黒丸羊は 誰がさばいていたの?」リン


「ライトだ」フェン


「さすがですね。黙って必要な仕事をこなすライトさん♡」レモン


「もしかして 君もライトのような男が好みなのか?」ムギ


「女性ならだれだって ああいう人を配偶者にしたいと思うんじゃないですか?

 よく働いて 気遣いができて ほがらかで 女性に対しても礼儀正しく なんでもできるんだから。

 しかも悪い男を寄せ付けないくらい強いなんて最高です」レモン


「羊なら 俺もさばける」ムギ


「よし! これからは当てにさせてもらおう」

そう言ってフェンは フェンリルの姿に戻った。

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