これまでのお話と物語の背景
「ベルフラワー最初の1年:尼僧院長の憂鬱」と
「2年目のベルフラワー」
の概略です
①主人公:リン・リンド
かつて複数の大陸で 高度に発展した文明を築いていた星。
今では一つの大陸のごく一部にリンド国・スレイン国の2か国を残すのみとなっていた。
そのリンド国とスレイン国双方の第一王位継承者となった13歳の少女、リン。
②リンド国とスレイン国と教会
科学と魔法が共存し、そのどちらもが高度に発達していたある国が分裂して リンド国とスレイン国となった。
その両国が再統合したときに新女王となるはずであったリンド国王女(後のリンの母)は、宮廷内のごたごたで略奪婚の憂き目にあい、山賊の頭領デッドの妻となってしまった。
両親の婚姻は 教会で正式に結婚式を挙げたものであった。
それゆえ 幼いころのリンは山賊である父の根城があるデッド地帯で育ったが、
教会のお偉いさんや、母方の親戚でもあるスレイン国宰相との面識もあり
リンド国内で魔物の討伐や土地の浄化の仕事を請け負いながら、宮廷図書館に出入りしたり、スレイン国の大学寮に入寮して正式な学校教育も受けている。
そしてリンは、母の死に伴い、リンド・スレイン両国の第一王位継承者となった。
妻のことを、ただのリンド国の王女としか認識していなかったリンの父は、
リンの母は、婚姻の際に リンドと東の砂漠地帯との間にあるステップ地帯の土地の領有権を持たされ、
彼女の死後、その所有権がリンに移ると誤解していた。
なぜなら、「リンド国東部領有証明書」にはリンの母の名が記されおり
結婚契約書には「死後 この女が持つすべての権利はこの女の血を引く娘に移る」と記されていたからである。
それゆえ、妻が生きている間は妻に財産の譲渡を迫り続け、それがかなわぬとみるや妻を殺害し、娘を修道院に幽閉して、妻の財産と土地をのっとろうと、リンの父はもくろんでいた。
己の置かれた状況を正しく理解していたリンは、母の死を知るや否や、ステップ地帯に急行し、己が持つ膨大な魔力を駆使して館を建て、父を筆頭とする山賊たちを討ち果たす。
そしてステップ地帯を「ベルフラワー領」と名付け、己が領主であると宣言した。
当時、リンド国西部(スレインとの国境近く)では、ゾンビやゴースト・幽鬼たちが跋扈し、多くの領主たちがなすすべもなく領土を放棄していた。
リンド国において、ゾンビたちを討伐できるのはリンのみであった。
それゆえ リンド国王コーチャンは、姪がベルフラワー領を打ち立てそこの領主となり独立することを認めた。
なぜならリンの母の婚姻に際して作られた「リンド国東部領有証明書」というのは ある種のフェイク的意味合いがあったからだ。
もともとリンド国とスレイン国が存在する大陸全体の東部の領有権を、リンの母が所有していたのだ。
そして「大陸全体の東部」の中にはリンド・スレイン国も含まれていた。
しかし 現在リンド国とスレイン国が分裂しているので、リンド国とスレイン国の国境線のみが明確であった。
さらに この大陸の東部地域では 人間の居住可能地が減少する一方であったので、
便宜上、人の居住可能地域≒統治可能地域を 「リンド国」「スレイン国」と呼び分けていたのである。
それゆえ リンド国が発行可能な「領有権所有証明書」の名称が「リンド国東部領有証明書」になったに過ぎない。
歴史的にも、リンド国とスレイン国との間で交わされた協定においても、リンド国・スレイン国を含む大陸全体の継承者は、リンの母であったしその母亡き後はリンであった。
しかし このことを知るのは リンド・スレイン両国の王家と宰相と教会組織のTOPである法王のみであった。
③デッドの地
もともと王家とは、「巫女姫」と呼ばれる多大な魔力を持つ女性に従った集団に過ぎなかった。
この「巫女姫」とは リンが何度か生きた前世であったり、その影響を受けて魔力を増した女性達であった。
が、いつの世も 権力を欲する男たちは、「秀でた女性」を手に入れて成り上がろうと争いあったり
すでにある権力をさらに増そうと闘争を続ける生き物であった。
それゆえ 平和と人々の幸せを願う「巫女姫」と彼女の志を継ごうとした女性達は、いつの世も翻弄され非業の最期を遂げていた。
たとえ全盛期は 世に平和をもたらし民に恵みを与え続けようとも
老いて力が減じてくれば 悪辣な男たちに蹂躙されてすべては終わったのである。
また リンの前世にあたる「巫女姫」が没してもただその加護が消えるだけだったが、
一般女性でただ魔力が強かっただけの女性が、愛と平和を信じて巫女姫になり、その力を砕かれたときは
たいてい、蹂躙された女性達の嘆き悲しみが人々の心から希望を奪い去ったり、恨みつらみが大地の荒廃をもたらした。
それ以上に女性達をねじ伏せその力を我が物にせんとした男たちが 大地の生命力を奪いつくしていった。
なので リンの母が生まれた時には、今より支配地域が広かったリンド国の東部は、砂漠化が進み
領主のいない「デッドの地」が広がりつつあった。
そこにリンド国の犯罪者が法の支配を逃れて住み着き 山賊となったのである。
その山賊たちの間にいつの間にか広がった噂が『「巫女姫」である王女をさらって妻にすれば、リンド国の王になれる』である。
その噂を真に受けて実行した若者がいた。
その男は ある男の手引きにより 王女をさらい教会で正式に結婚し、生まれたのがリンであった。
若者は激怒した。
リンド国王ではなく山賊の頭領にしかなれなかったから。
しかもいつの間にか 妻は塔を建ててその中に立てこもってしまった。
(実はこの塔は 生まれたての赤ん坊だったリンが 母の気持ちを感じて建てたものであった。)
山賊の頭領となった若者は、「王女をさらえ」とそそのかした男に文句を言ったが
「国王も頭領も呼び方は違っても中身は同じだろ」と言い負かされた。
さらに今度は別の男が現れて、「塔の中の姫君とその娘」に手を出さず、娘が心身共に健康に育つように見守るならば、手下ともどもデッドの地に居る間は食うに困らぬ生活を保障すると言ってきた。
山賊たちはその話にのった。
幼いリンは 塔の中に温室を作り野菜を育て、屋上で穀物を育てて母を養なった。
娘が幼いうちは 時々 塔の外に出て、山賊たちの中をうろちょろしていた。
リンが3歳になる前に 身なりの良い男たちが現れて、手土産と引き換えに娘を外に連れて行った。
出て行った娘は 時々勝手に戻ってきては 塔の中の母親に何かを差し入れているようだったが
娘には一切手を出してはならないと援助者から厳しく言い渡されていたので 山賊たちは放っておいた。
娘が12歳になってから 再び謎の男が現れ、「壁の根元に塗るだけで、塔を破壊して中の王女を毒殺できる薬」を頭領に手渡した。
山賊の頭領は、「デッドの領有権を娘に移し 娘を修道院に幽閉して自分が領主におさまろう」と考えた。
いいかげん 砂漠での暮らしにうんざりしていたのである。
そして 領主になれば 国王から自動的に毎年「地方交付金が受け取れる」とどこぞの国の制度のようなことが起きると考えていたのだ。
実際 異世界では 「地域振興」「復興支援」と唱えるだけで、その国の2大都市の勤労者が納めた国税が地方に分配される制度が存在しているらしいから。
そのたくらみの結果は 13歳の娘が母の仇うちを成し遂げ領地復興を始めた「ベルフラワー物語」に記されることになった。
一方、リンド・スレイン両国に広がる新興宗教集団「教会」組織は、リンの母とデッドの山賊の頭領との婚姻をとりしきたったことから、幼いころのリンとも親交を深め・手なづけ、
リンを通してリンド国とスレイン国を乗っ取ろうと画策していた。
④無人の荒野であったベルフラワー領
そこは 一滴の雨も降らなければ 川も池もない土地であった。
しかし リンは 魔力を駆使して 家を建て、井戸を掘り、温泉を掘り、人外の者達を招聘し、リンド・スレイン両国から逃げてきた人々を保護して 開拓を進めた。
さらにまた 教会勢力からの干渉をはねつける為に 「ベルフラワー国」として独立宣言を出し、ベルフラワー暦(略称ベル暦)を定めた。
⑤ベル暦3年 正月のベルフラワー国の領地
・本領:リンド国の東、ステップ地帯~砂漠地帯 (温泉あり)
北側は森林地帯へ
南側は海辺につながる
リンが最初に修道院の館を建てた土地
現在はリンド国に接する西側に強固な魔法防壁を築き
その内側にオオカミ達の居住地を設け、警備に当たらせている。
オオカミ達の居住地には、オオカミの餌としてうさぎ・てん・狐などを繁殖させている。
・「湯気の地」改め「常春の地」
本領の北東にある高山の一部の特別な土地 (温泉あり)
改名したのがごく最近なので、新しい呼び名が定着していない
・泉の地
湯気の地の東側の森の中にある
ベル暦2年の夏だけ牛の放牧をしていた。
妖精赤ちゃんや ナイアード達が住んでいる
ナイアード達の希望により 今後 人間の立ち入りは制限される
・盆地の出張所:本領の北東 森林地帯の中にある盆地
真ん中を 川が横切っている
商業的価値の高い木々を植樹した。
土や植物を使った工芸品の一大産地に発展させる予定
現在は うまいキノコの産地でもある
・川辺の出張所:本領の北東、盆地の出張所の南東
盆地の出張所を流れる川の下流、
峡谷を流れる川の両岸にあたる
現在は羊の放牧地
・デッド砂漠には 岩塩の切り出し地が2か所ある
・リンド国の北側国境線近くの森の中に、リンが購入した閉店した皮なめし工房の敷地がある。
敷地内を浄化したのち、皮なめし工房の建物は、盆地の出張所に移築した。
※今夜 夜8時に「プロローグ」として 物語を開始します