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孤高の再現魔法使い  作者: 潮騒
第三章
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おかしな点



「どういうこと?何もおかしなところなんて無かったと思うけど……」

「話は普通だった」


 ティアナとシェーネは気づいていないらしい。だが、ルシアは俺の言葉に頷いていた。


「私も少しおかしいなと思うところはありました。ただの考えすぎかもと思っていましたが、望さんがそう思うなら間違いじゃないのかもしれません」

「俺も確信があるわけじゃないけど、何個かおかしな点が出てきたからな。みんなにも頭に入れておいてもらいたかったんだ」


 望は部屋の中にあった紙とペンでティアナとシェーネに説明をし始めた。


「まず俺たちがここに来た理由であるヨルムンガンドの討伐についてだ。多分それは本当だろう。だが、エルフ族の精鋭たちが討伐に行ったっていう話は嘘だ。そもそも会話できるなら、話し合えばいいだけのことだ。わざわざ討伐に行く意味がない。現に今は話し合いで凌げてるからな」

「でも、それは『知恵の実』を捧げないといけなくなったからじゃないの?」

「その『知恵の実』ってやつもおかしな点があるんだ。『知恵の実』をヨルムンガンドに捧げてもエルフ族にそこまでの痛手はないんだ。討伐報酬として向こうから渡そうとしてくるくらいだしな」


 長老であるネロの話によると、『知恵の実』は食べた者の魔力を上昇させる効果があるが、言ってしまえばそれだけのことだ。それがなければ生きていけない訳でもないし、交易をしている訳でもない。


「実際、エルフ族は助けを求める理由があんまりないんだよな。まあ、これは単に魔物に支配されているのが嫌なだけかもしれないけどな」

「なるほどね……」

「他にもエルフ族の警戒度合いだな。他の種族にいい感情を抱いてないとは言え、あの警戒心は異常だ。俺たちは仮にもエルフ側から呼ばれて来たんだぞ?」

「私もそう思いました。彼らからは期待とかよりも敵対心を多く感じて……。ちょっと怖かったです」


 ルシアは人の感情に敏感なため、こういうことに気づきやすい。ちなみにティアナは割と鈍感なので気づきにくい。


「あと、ネロさんっていう長老の方も言葉にするのは難しいんですけど、何というか……嫌な感じがしました。笑顔がおかしいような、笑顔の裏に何か隠してるような気がするんです」


 そこまで話すルシアをじっと見つめる望とティアナ。それに気づいたルシアはえ?え?と分かりやすく狼狽えていた。


「ど、どうかしましたか?」

「いや、なんかすごいなって。なあ?」

「そうね、あの短時間でそこまで読み取れる人なんていないわよ」


 二人は普通に感心していた。あの短いやり取りからそこまでの感情の機微を察知できる人なんて、世界中探してもそう見当たらないからだ。


「そ、そんなことないですよ〜」


 言いながらすごく照れているルシア。そこら辺は年相応で子供らしさを感じる。


「じゃあ、ルシアの話を踏まえると、エルフ側は私たちにヨルムンガンドを討伐させる以外に何か目的があるって感じなのかしら?」

「そうだな。向こうさんが何かしら思惑を持ってるっていうのは念頭に置いておいた方がいいと思う」

「分かったわ。あと、確認なんだけど、この依頼はこのまま続行するってことでいいのよね?」

 

 そのティアナの確認に望はしっかり頷いた。


「ああ、一度受けた依頼はなるべくやめたくないし、今更やめるって言っても怪しまれるだけだしな。警戒は緩めずにヨルムンガンド討伐を済ませていこう」

「分かったわ」

「二人もそれでいいか?」

「うん」

「はい、大丈夫です!」


 全員に確認をとった望はそこで一度話を終えて、旅の疲れを癒すために休息を取ることにした。




◇◇◇




「それで、奴らの様子はどうだった?」


 エルフ族の長老ネロは跪いて頭を下げているエルフにそう尋ねる。


「はっ。少し勘づいた様子ではありましたが、特に何かをするつもりはないようです。また、逃げ出すようなこともなさそうです」


 エルフの報告を聞いて、ネロはニヤリと笑う。その表情は望たちと話した時と比べると、まるで別人のようにかけ離れていた。


「面白い。なかなか有能な人間たちのようだな。これなら無事に計画通り進められそうだ」

「では、あの方たちにもそう伝えて参ります」

「ああ、頼んだぞ」


 そう言うと、エルフは音もなくその場から姿を消した。エルフという種族は森の中で狩りをして暮らすため、気配を消すことが他の種族よりも上手い。その中でも先ほどのエルフは隠密行動が得意なため、一番索敵が出来るシェーネでも自分たちの会話を聞かれていると気付くことができなかった。


「クックックッ、これであの忌々しい大蛇を滅ぼすことが出来る。全ては我らがエルフのために。失った全てを取り戻すために」


 ネロは自身の右手をグッと握る。そして、チラッと目を向けた先には一枚の写真があった。そこに写っていたのはネロとエルフの少女。二人とも幸せそうな顔で写真に写っている。


「必ず……助ける……」


 そう呟いたネロは写真とは真逆で、暗く苦しそうな顔をしていた。




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