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孤高の再現魔法使い  作者: 潮騒
第三章
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リーンの頼み



 事件から一週間が過ぎた。望たちは旅を続ける準備をするために、まだ帝国に滞在している。


 この一週間の間にも色々なことが起きた。ランドスの公文書偽造が望の「筆跡で調べれば?」という一言で発覚したので、ランドスは皇帝の座を剥奪された。そして、正当な継承者であるエリシアが女帝になった。


 他には、望が神魔の力を使って城やクレーターを直したら神として崇められたり、お城のメイドさんたちがシェーネを取り合ったり、ティアナがお城の壺を壊したりなんてこともあった。


 そして今日、これからどうしたものかと考えていた望に話しかける者がいた。


「望殿、少し良いだろうか」


 そう望に声をかけるのはエルフのリーンだ。彼女はアフターパーティーの前にも望に話しかけていた。まあ、モノスたちに邪魔されて詳しい話は出来なかったわけだが。


「ああ、いいぞ」

「パーティーの前に話そうとしていた件についてだ。覚えているだろうか?」

「えーと……たしかエルフの里を守ってほしいだったっけ?」


 望はなんとかリーンの話を思い出す。


「そうだ。改めて頼む。望殿、どうかエルフの里を守ってほしい」


 リーンは頭を下げる。しかし、望はその頼みをまだ受けなかった。


「ちょっと待て。話を省きすぎだ。まず何があったのか、どうして守ってほしいのかを教えてくれなきゃ、頼みは受けられない」

「む、それもそうか。では、順を追って話そう」


 リーンは望の言葉に納得して、エルフの里で起きていることを話し始めた。


「エルフの里は東の樹海にある。その理由を知っているだろうか?」

「いや、知らないな」

「では、まずその話からか」


 そう言いつつ、リーンは一つため息を吐いた。


「その……だな。自分で言うのも恥ずかしいのだが……我々エルフ族は見た目がいいのだ。男性も女性もな」


 リーンは少し顔を赤くしながら言う。たしかに、リーンは控えめに言って美人だ。彼女に一目惚れする男はそう少なくないだろう。


「たしかにそうだな」

「う……そうはっきり肯定されるのもそれはそれで……」

「いや、ただそう思っただけだから。気にせず進めてくれ」


 望がエルフ美形説をあまりにもキッパリと肯定するので、更にリーンの恥ずかしさが増した。


「すまない。話を続けるとだな、エルフ族は美形ということに加えて、他の種族に比べて魔力を多く宿している者が多い。そのため、他種族はエルフ族を欲するのだ。しかし、エルフ族はプライドが高い。だから、余程のことがない限りエルフは他種族の仲間になったり、仕えることはない。そうなると、エルフが欲しい者たちはどういう手に出ると思う?」


 リーンは真面目な顔をして望に問いかける。


「奴隷か……」

「その通りだ。エルフ族は何人も捕まって奴隷として売られた。それはいい値段がついたそうだ。そんなことがあったから、エルフ族は他種族と関わることを避け、樹海の中で暮らすようになった」


 そう話すリーンの顔は怒っているというよりも悲しいと表現する方が正しいように思えた。望もそれを感じ取ったのか、黙ってリーンの話を聞いた。


「そうして現在まで至るのだが、最近その樹海で問題が発生した。それが毒蛇ヨルムンガンドの出現だ」

「ヨルムンガンド?魔物か?」

「そうだ。ヨルムンガンドは先ほども言った通り毒蛇だ。しかも、体が大きい上に動きも素早い。更に奴は言葉を理解し、話すこともできる」

「まるで子供が考えたみたいなデタラメな魔物だな」


 ヨルムンガンドの異常な能力に望はそんな感想を漏らす。ただ、ヨルムンガンドは冒険者ギルドでAランク用のクエストとして出されるほどの魔物だ。望の考えもあながち間違いではないのかもしれない。


「そのヨルムンガンドが突然エルフの里に現れ、こう言ったのだ。『毎週"知恵の実"をあるだけもってこい。でなければ、貴様らを一人ずつ食っていく』と。もちろん、最初は抵抗したさ。エルフ族の精鋭たちが出向いてヨルムンガンドを討伐しようとした。だが、なす術もなく殺されてしまった。もう、我々にはどうすることもできないんだ。だから、こうして外の世界に来て、強い人を探していたのだ」


 リーンは強い眼差しで望を見つめる。


「改めて頼む。どうか、エルフの里を……我々の故郷を守ってはくれないか?」


 一通りリーンの話を聞いた望は腕を組みながら考える。


(リーンはいい奴だ。今回だって、見ず知らずの人のために戦ったんだからな。だから、仮に俺が一人で旅をしていたなら、リーンの頼みを受けていただろう。だが、今の俺にはティアナたちがいる。俺の一存で決めるわけにはいかない)


 そう考えをまとめた望はリーンに伝えた。


「悪いがもう少し待ってほしい。ティアナたち……仲間達にも意見を聞かなければいけないからな」

「ふむ……分かった。しかし、出来るだけ早く返事が欲しい」

「明日までには答えを出すよ。それでいいか」

「ああ、構わない」


 そこまで話すと、望は早速ティアナたちに話をするためにリーンと別れた。





章を作ってみました。第一章が始まりから帝国に向かうところまで。第二章が帝国の話。第三章が今回からです。




もし面白いと思っていただけたら、評価、ブクマなどなどよろしくお願いします。作者がカーリングをします。

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