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孤高の再現魔法使い  作者: 潮騒
第二章
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事件の終わり



 神魔を解いた望は自身の魔法により出来たクレーターの所まで行く。巨大な槍の一撃を食らったモノスの様子を窺うためだ。


「あれ……いない?」


 クレーターを見回すも、どこにもモノスの姿は見当たらない。


(魔法には間違いなく手応えがあったし、ダメージは与えているだろうけど……逃げられる体力はあったか。詰めが甘かったか?)


 そう考えるも、後の祭りではある。逃げられてしまった以上、望にモノスを追跡する手段はないからだ。


「そうだ。ティアナたちは大丈夫かな?」


 モノスとの戦闘中に聞こえてきた謎の咆哮。それがパーティー会場辺りから聞こえてきたことを思い出して、望は城の中へ戻ろうとする。


「ん?何だあれ」


 その時、クレーターの端に何かが落ちてるのがチラッと見えた。ティアナたちが気になりつつも、それだけは拾っておく。もしかしたら、モノスに繋がるものかもしれないからだ。


「手帳か?まあ、いい。とりあえず会場に戻るか」


 望は拾った手帳のようなものを胸ポケットにしまい、パーティー会場に戻った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 パーティー会場では、ティアナたちは今回の騒動に関わった人物たちの連行の手伝いをしていた。戦闘時の爆音で近衛騎士団の半数ほどが目を覚ましたみたいだが、それでも人手が足りないらしい。


「おーい!」

「望!」


 望が呼びかけると、ティアナとシェーネが望に気づいて近づいてきた。


「モノスに勝ったのね!」

「ああ、なんとかな。そっちも無事に制圧できてたみたいで良かったよ。途中で魔物みたいな叫びも聞こえてきたし」


 そう言うと、ティアナは少し暗い表情をする。そんなティアナの様子に望は首を傾げるが、シェーネが望にその理由を教えた。


「あれ見て」

「ん?」


 シェーネが指を差した方向を見ると、上半身と下半身が真っ二つに切り裂かれた魔物の死体があった。最初は意味が分からなかった望だが、ここが城の中であること、そしてデジカのことを思い出して察した。


「また人が魔物になったのか」

「ええ、ラバールさんが魔物になったのよ……」


 ラバールと聞いて、望は目を見開く。そして、悲しげな表情を浮かべた。


「そうか……」


 魔物化する選択肢など、よほど気が狂った状態か覚悟を持った状態でなければ選ばないだろう。デジカは気が狂っていたが、戦闘前のラバールは平常と何ら変わらなかった。つまり、彼は覚悟を持って魔物化したのだ。


(もう少し話せていれば、何か変わったのだろうか)


 誰かラバールの心に寄り添える者がいたら、取り返しのつかない魔物化をすることはなかったかもしれない。しかし、全ては過ぎてしまったこと。死んだ人はもう戻らないのだ。


「よし!」


 くよくよするのはやめたとばかりに、望は自分の頬を叩く。その様子に、ティアナは少し笑い、騎士団の手伝いに戻った。


「俺も何か手伝おうかな」

「望さん!」


 ティアナと同じように騎士団の手伝いをしようかと思った時に、誰かに呼び止められた。声がした方向を見ると、そこにはエリシアとルドーがいた。


「モノスを倒したんですね!さすが、望さんです!」

「はい、倒しはしましたけど、モノスには逃げられてしまいました……」

「気にしないでください!それよりも、我が国の問題に巻き込んでしまい申し訳ありません」


 エリシアは深々と頭を下げる。望としてはルシアを助けるついでにモノスを倒しただけなのだが、エリシアは巻き込んでしまったと考えているみたいだ。


「頭を上げてください。俺はただ、ルシアを助けたかっただけですから。そういえば、ルシアはここに来ませんでしたか?ミュールさんと一緒だと思うんですけど……」

「ルシアならあそこにいますよ」


 頭を上げたエリシアは大きな窓の方向を指差す。そこからベランダに出られるようになっており、その場所に紫色の髪が風で靡いているのが見えた。


「すみません、俺はこれで!」

「ちょっと待ってくれ」


 望がルシアのところまで行こうとすると、ルドーが呼び止めた。


「本当にありがとう。近衛騎士団団長として、君に最高の敬意を払う。落ち着いたら私のところに来てくれ。その時は何か奢らせて欲しい」


 近衛騎士団団長として最高の敬意を払う。それはつまり、近衛騎士団は望に何かあった時、味方として加勢することを約束するということである。それだけ今回の望の働きが大きかったということなのだが、その意味に望は気づいていない。


(ルドーさんも俺に感謝してるのか。ルシアを助けたかっただけだが、奢ると言っているのに断るのは逆に失礼だな。うん、その誘いは受けよう)


「その時はよろしくお願いします!」

「ああ」


 そう言って、望はペコリと頭を下げる。そして、ルシアの元に向かった。



 外はまだ暗い。時間はちょうど丑三つ時を過ぎたくらいだ。それを見ると、戦闘の時間も大して長くなかったのかという気分になる。


 そんなことを考えながら、望は窓を開けた。それに気づいたルシアは後ろを振り返る。


「望さん!」


 ルシアがエリシアとまったく同じ反応をするので、望はつい笑ってしまう。


「どうかしましたか?」

「いや、やっぱり二人は姉妹なんだなと思って」


 望はチラッとエリシアの方を見やる。望が言っていることに気づいたルシアは苦笑いした。


「望さん、一つ聞いてもいいですか?」

「なんだ?」


 ルシアは少し上目遣いで望に尋ねた。


「なんで私を助けてくれるんですか?私は望さんに何も返せていないのに、これまでずっと私を助けてくれたのはどうしてですか?」

「前にも言ったろ?ルシアは仲間だ。仲間を助けるのは当然だろ」


 望はそう答えるが、ルシアは納得がいってないみたいだった。


「それはそうですけど……もっと前、初めて会った時はなんで助けてくれたんですか?」


 初めて会った時なら仲間という言葉は使えない。故に、ルシアは望の本心が聞けると思った。


「それはだな……」


 望は本音を言うことを渋る。ルシアは最初嫌がっているのかと思ったが、どうやら違うことに気づく。ルシアは人の感情を読み取る力に長けているため、望が怒ったり不快に感じているわけではないことが分かったのだ。


「照れてるんですか?」

「な!?」


 望はルシアに今の感情を言い当てられて焦る。そして、観念したのか、ため息を吐いて本音を話し始めた。


「はぁ……分かったよ。俺が最初にルシアと会った時、似てると思ったんだよ……俺の妹にな。だから、助けたんだ。あの時のルシアを見捨てると、妹を見捨ててるみたいに思えたからな」


 望が頭を掻きながらそう答えると、ルシアはフフッと笑った。


「望さんは妹さんがお好きなんですね」

「好きというか……俺の妹は病弱で好きなこととかやりたいことを全然させてあげられなかったからな。俺に出来ることはなるべくやってあげたいし、笑顔でいられるように守るって決めてるんだ。だから、妹とルシアが重なった時に、守ってあげなきゃって思ったんだ」


 望はルシアの頭を撫でる。すると、心なしかルシアの顔が少し紅くなっているように見えた。


「というか、なんで急に聞いてきたんだ?」

「前々から気になってたんですよ。でも、納得がいきました。……私は妹ってことですか」

「ん?なんて言ったんだ?」


 ルシアの最後の言葉が聞こえなかったので、望は聞き返す。


「いえ、何も言ってないです。そうだ、望さん。一つお願いがあるんですけど」


 ルシアは話を切り替えて、望をジッと見つめた。


「お願い?」

「はい。私は今回の一件で自分に力があることが分かりました。両親からすれば望んだ力じゃなかったかもしれないけど、それでも私はこの力を大切にしたいんです」


 グッと拳を握りしめたルシアの目は決意が固まっているようだった。それに気づいた望は余計な口を挟まずに、ルシアの言葉を待った。


「そして、いつか大勢の人を助けて、この力を持って良かったなと思えるように……強くなりたいです。そのために、私を望さんの旅に同行させてもらえませんか?」


 望は考える。同行自体については問題ない。帝国に入ってからはずっと一緒にいたし、悪い子ではないことも分かっている。


 ただ、望は元の世界に戻るという目的のもと、旅をしているわけであって、元の世界に戻る手段を見つけたら早々に帰ろうと考えている。それでもいいか、確認を取らなければいけない。


「ルシア、一つ確認していいか?」

「なんでしょうか?」

「俺はある目的を達成したら、旅を終わろうと思っている。それまでの期限付きってことになるが……それでもいいか?」

「構いません!少しの間でも、一緒に旅がしたいんです!」


 ルシアはすごい勢いで望にそう言う。その圧に、望は少し後ずさった。


「分かった。それなら俺は全然いいけど、お姉さんには話したのか?」

「もう言ってあります。あと、ティアナお姉ちゃんとシェーネちゃんにも伝えました。二人は望さんの考えに従うって仰っていたので、後は望さんの了承を得るだけだったんですよ」


 なんという用意周到さか。これには流石の望も返す言葉を失っている。


 こうして、望の仲間に正式にルシアも加わることとなった。



 

もし面白いと思っていただけたら、評価、ブクマなどなどよろしくお願いします。作者が焼き芋を食べます。

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