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孤高の再現魔法使い  作者: 潮騒
第二章
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力を合わせて



「グギャァァァァ!!!」


 魔物化したラバールが雄叫びを上げて、ルドーを睨む。目の前で人間が魔物化するという現象に驚いていたルドーも、本能的に剣を構えた。


(先ほどとは桁違いの魔力だ……。だが、自我を失っている。人の時よりも御しやすくはあるが……)


 そう考えるも、ルドーは自分の限界が近いことに気づいていた。『四属性支配(クアッドルーラー)』はいわば魔力を前借りする魔法だ。普通なら時間経過もしくはポーションなどのアイテムで回復する魔力を、精霊から供給してもらい、更にその力を使うことができる。ただ、時間が経てば、その効果は切れて更に反動がルドーを襲う。


(反動が来ている間は動くことすら不可能だ。ポーションで魔力が回復できれば話は別だが、手元にポーションはない。ならば……速攻で決着をつけるのみ!)


 ルドーは四本の剣をラバールに向かわせる。それぞれの剣はラバールに攻撃を仕掛け、更にはルドーもラバールの近くまで詰め寄る。


「くらえッ、精霊剣……」


 ルドーが早速精霊奥義を使おうとする。しかし、ルドーは魔物化したラバールの実力を見誤っていた。


「グギャァァァァ!!」


 叫んだラバールの体が急激に光り出す。そして、光った体から、無作為に光のレーザーが飛び出した。


「くっ……」


 光のレーザーは四本の剣とルドーを弾き飛ばす。さらには建物にも当たり、壁や床をを破壊していった。


「ちょっと、大丈夫!?」

「あ、ああ。問題ない……ッ!!」


 ティアナの問いかけにルドーは口ではそう言うものの、その場で片膝をついた。精霊奥義を発動しようとしたため、一気に限界が近づいたのだろう。


「全然ダメじゃない!ここは私たちに任せて、あなたは少し休んで……」

「問題ないと言っているだろう!!」


 ルドーの大きな声にティアナは驚く。それだけ、今のルドーの声には鬼気迫るものがあったのだ。


「これは我が国の問題だ。これ以上、部外者である君たちの手を借りる訳にはいかない。それに、この程度の敵ですら倒せないとなれば、帝国近衛騎士団の名が廃る」


 ルドーはゆっくりと立ち上がる。そして、剣を構えた。しかし、ティアナには分かっていた。ルドーは既に戦えるような状態ではない。魔力がほぼ無いのだ。


(せめて、ポーションがあれば……)


 ティアナはパーティーの前に望に渡したポーションを思い出す。あの時、もっと買っておけばルドーにも渡せたのに、と。


 その時、誰かの声がこの場に響き渡った。


「皆さん!大丈夫ですか!」


 長い藤色の髪の毛を靡かせた綺麗な女性が何かを持って現れた。


「エリシア様ッ……!」

「エリシアって……まさか皇后!?」


 ルドーが名を呼んだことによって、ティアナたちも彼女の正体を知る。


「皆さんに渡したいものがあるんです!」


 そう言って、エリシアはルドーたちの元に駆け寄ろうとした。しかし、ラバールは次のターゲットにエリシアを選んだ。


「グルァァァァァァ!!」


 ラバールはものすごい勢いでエリシアに近づく。そして、その鋭い爪でエリシアを切り裂こうとした。


「くっ……させるかぁ!」


 咄嗟にルドーは持っていた剣を投げつける。その剣は振りかぶっていたラバールの手に突き刺さった。それにより、ラバールは一時攻撃を中断する。


「『破裂炎(バーストフレア)』!」


 そこにティアナの魔法が炸裂し、ラバールは後方へと吹き飛ばされた。


「エリシア様ッ!」

「ルドーさん。これを」


 なんとかエリシアのそばまで行ったルドーは、エリシアから何かを受け取る。


「これは……ポーション!?」

「はい。きっと皆さんのお役に立つだろうと思いまして」


 エリシアは続けてティアナたちにも渡した。


「すごい!このポーション、他のものよりも回復スピードも回復量も桁違いね!」

「帝国が有している最高級ポーションですから!効果はすごいですよ!」


 ルドーも渡されたポーションを一気に飲み干す。これでまだもう少し戦うことができるようになった。


「ありがとうございます、エリシア様。我が剣にかけて、奴を排除してみせます」

「はい!頑張ってください!」


 ルドーは少し笑うと、四属性の剣を自分の元に引き寄せた。そして、四つの剣が混じり合い、やがて一つの剣となる。


「グルァァァァァァァァ!!!」


 ラバールが叫ぶと、その数が一気に増えた。十人のラバールがルドーたちを睨んでいる。


「なるほど。人間の時の魔法も使えるのか。だが、本体を叩けば終わりだ」


 そう言ったルドーの隣にティアナが立つ。


「仕方ないわね。援護はしてあげるわ」


 ティアナがそう言うと、続いてシェーネとリーンもティアナの横に並んだ。


「私も手伝う」

「一度乗りかかった船だからな。私も協力しよう」


 ルドーはティアナたちを一瞥すると、剣を構えた。


「では、お言葉に甘えるとしよう」


 ルドーは一気に本物のラバールとの距離を縮める。その間に、偽物のラバールが爪攻撃をしようとしたり、魔法を放とうとする。しかし、それらはティアナたちがすべて防いでいった。


「はぁぁぁぁぁぁ!!!」


 ルドーは真正面から飛んでくる本体の攻撃のみ弾きながら近づく。そして、トドメの一撃を放った。


「精霊剣 クアッドストライク!」


 四属性の力を込めた斬撃がラバールを胴体から真っ二つに斬り裂く。ラバールは力なく倒れて、そのまま動かなくなった。それと同時に偽物も綺麗さっぱり消えていく。


「ふぅ……」


 一つ息を吐いたルドーは『四属性支配(クアッドルーラー)』を解除するのだった。


 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 その頃、誰もいなくなった封印部屋に一人の男が入ってきた。白いウエスタンハットを被ったその男は、未だに開かない扉に触った。


「へぇ、さすがは()()のユニークだ。モノスの言霊魔法でも開けられない訳だな」


 その男――ネイス=ギャレットはそう呟くと、腰から一つの銃を引き抜いた。それは彼が武闘祭で使っていた魔銃とは別のものだ。


『あら、ようやくアタシを使ってくれるの?』


 奇妙なことに、その魔銃は意志を持っているかのように話し出した。ネイスはそれに驚きもせずに答えた。


「悪いが、ロット。君の出番はもう少し後だ。まずはこの中のものを回収しなきゃいけない」

『そうなの……。それはそうと、その姿どうにかしてくれないかしら?アタシの大好きなオリバに戻ってよ!』

「ああ、そうか。たしかにこの姿でいる必要はないね。『分身(アバター)』解除」


 ネイスもといオリバがそう言うと、彼の姿がダンディな男から少年へと変貌する。声色も変わり、見た目にあった幼い声になっている。


「じゃあ、お次は……『規則変更(ルールチェンジ)』」


 オリバの目の前に透明なディスプレイが現れる。そこには『封印魔法 万人の入札を禁ずる』と書かれていた。


「さぁて、どういう風に変えようか……。そうだ、『ユニーク所持者の通行のみ許可する』にしよう!」


 オリバがディスプレイをいじると、『万人の入室を禁ずる』という欄が『ユニーク所持者の通行のみ許可する』に変更されていた。


「これで……よし、開いたね」


 今まで封印されていたはずの扉がいとも簡単に開いた。オリバは扉を通り、部屋の中へ入っていく。部屋の中はとても殺風景だった。ただの空間と言った方が正しいくらいだ。その部屋の真ん中にポツンと一つだけ物が置かれていた。


「これが神装『神血槍グラウ』か……。やっぱり君と同じ気配がするよ」

『もう、当たり前でしょ?同じ神装なんだから。それより、早くしないと彼が戻ってくるかもしれないわよ?』

「うん、そうだね。それに、あの方への報告も早くしたいしね。『インベントリ』」


 オリバが魔法を発動すると、グラウが瞬く間に消える。


(今回は遊べなかったけど、また会える時を楽しみにしてるよ。それじゃあね、天道望くん)


 そうして、目的を達成したオリバはその場を後にし、堂々と城から出て行ったのだった。



 

もし面白いと思っていただけたら、評価、ブクマなどなどよろしくお願いします。作者がけん玉をします。

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