力を合わせて
「グギャァァァァ!!!」
魔物化したラバールが雄叫びを上げて、ルドーを睨む。目の前で人間が魔物化するという現象に驚いていたルドーも、本能的に剣を構えた。
(先ほどとは桁違いの魔力だ……。だが、自我を失っている。人の時よりも御しやすくはあるが……)
そう考えるも、ルドーは自分の限界が近いことに気づいていた。『四属性支配』はいわば魔力を前借りする魔法だ。普通なら時間経過もしくはポーションなどのアイテムで回復する魔力を、精霊から供給してもらい、更にその力を使うことができる。ただ、時間が経てば、その効果は切れて更に反動がルドーを襲う。
(反動が来ている間は動くことすら不可能だ。ポーションで魔力が回復できれば話は別だが、手元にポーションはない。ならば……速攻で決着をつけるのみ!)
ルドーは四本の剣をラバールに向かわせる。それぞれの剣はラバールに攻撃を仕掛け、更にはルドーもラバールの近くまで詰め寄る。
「くらえッ、精霊剣……」
ルドーが早速精霊奥義を使おうとする。しかし、ルドーは魔物化したラバールの実力を見誤っていた。
「グギャァァァァ!!」
叫んだラバールの体が急激に光り出す。そして、光った体から、無作為に光のレーザーが飛び出した。
「くっ……」
光のレーザーは四本の剣とルドーを弾き飛ばす。さらには建物にも当たり、壁や床をを破壊していった。
「ちょっと、大丈夫!?」
「あ、ああ。問題ない……ッ!!」
ティアナの問いかけにルドーは口ではそう言うものの、その場で片膝をついた。精霊奥義を発動しようとしたため、一気に限界が近づいたのだろう。
「全然ダメじゃない!ここは私たちに任せて、あなたは少し休んで……」
「問題ないと言っているだろう!!」
ルドーの大きな声にティアナは驚く。それだけ、今のルドーの声には鬼気迫るものがあったのだ。
「これは我が国の問題だ。これ以上、部外者である君たちの手を借りる訳にはいかない。それに、この程度の敵ですら倒せないとなれば、帝国近衛騎士団の名が廃る」
ルドーはゆっくりと立ち上がる。そして、剣を構えた。しかし、ティアナには分かっていた。ルドーは既に戦えるような状態ではない。魔力がほぼ無いのだ。
(せめて、ポーションがあれば……)
ティアナはパーティーの前に望に渡したポーションを思い出す。あの時、もっと買っておけばルドーにも渡せたのに、と。
その時、誰かの声がこの場に響き渡った。
「皆さん!大丈夫ですか!」
長い藤色の髪の毛を靡かせた綺麗な女性が何かを持って現れた。
「エリシア様ッ……!」
「エリシアって……まさか皇后!?」
ルドーが名を呼んだことによって、ティアナたちも彼女の正体を知る。
「皆さんに渡したいものがあるんです!」
そう言って、エリシアはルドーたちの元に駆け寄ろうとした。しかし、ラバールは次のターゲットにエリシアを選んだ。
「グルァァァァァァ!!」
ラバールはものすごい勢いでエリシアに近づく。そして、その鋭い爪でエリシアを切り裂こうとした。
「くっ……させるかぁ!」
咄嗟にルドーは持っていた剣を投げつける。その剣は振りかぶっていたラバールの手に突き刺さった。それにより、ラバールは一時攻撃を中断する。
「『破裂炎』!」
そこにティアナの魔法が炸裂し、ラバールは後方へと吹き飛ばされた。
「エリシア様ッ!」
「ルドーさん。これを」
なんとかエリシアのそばまで行ったルドーは、エリシアから何かを受け取る。
「これは……ポーション!?」
「はい。きっと皆さんのお役に立つだろうと思いまして」
エリシアは続けてティアナたちにも渡した。
「すごい!このポーション、他のものよりも回復スピードも回復量も桁違いね!」
「帝国が有している最高級ポーションですから!効果はすごいですよ!」
ルドーも渡されたポーションを一気に飲み干す。これでまだもう少し戦うことができるようになった。
「ありがとうございます、エリシア様。我が剣にかけて、奴を排除してみせます」
「はい!頑張ってください!」
ルドーは少し笑うと、四属性の剣を自分の元に引き寄せた。そして、四つの剣が混じり合い、やがて一つの剣となる。
「グルァァァァァァァァ!!!」
ラバールが叫ぶと、その数が一気に増えた。十人のラバールがルドーたちを睨んでいる。
「なるほど。人間の時の魔法も使えるのか。だが、本体を叩けば終わりだ」
そう言ったルドーの隣にティアナが立つ。
「仕方ないわね。援護はしてあげるわ」
ティアナがそう言うと、続いてシェーネとリーンもティアナの横に並んだ。
「私も手伝う」
「一度乗りかかった船だからな。私も協力しよう」
ルドーはティアナたちを一瞥すると、剣を構えた。
「では、お言葉に甘えるとしよう」
ルドーは一気に本物のラバールとの距離を縮める。その間に、偽物のラバールが爪攻撃をしようとしたり、魔法を放とうとする。しかし、それらはティアナたちがすべて防いでいった。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!」
ルドーは真正面から飛んでくる本体の攻撃のみ弾きながら近づく。そして、トドメの一撃を放った。
「精霊剣 クアッドストライク!」
四属性の力を込めた斬撃がラバールを胴体から真っ二つに斬り裂く。ラバールは力なく倒れて、そのまま動かなくなった。それと同時に偽物も綺麗さっぱり消えていく。
「ふぅ……」
一つ息を吐いたルドーは『四属性支配』を解除するのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その頃、誰もいなくなった封印部屋に一人の男が入ってきた。白いウエスタンハットを被ったその男は、未だに開かない扉に触った。
「へぇ、さすがは三格のユニークだ。モノスの言霊魔法でも開けられない訳だな」
その男――ネイス=ギャレットはそう呟くと、腰から一つの銃を引き抜いた。それは彼が武闘祭で使っていた魔銃とは別のものだ。
『あら、ようやくアタシを使ってくれるの?』
奇妙なことに、その魔銃は意志を持っているかのように話し出した。ネイスはそれに驚きもせずに答えた。
「悪いが、ロット。君の出番はもう少し後だ。まずはこの中のものを回収しなきゃいけない」
『そうなの……。それはそうと、その姿どうにかしてくれないかしら?アタシの大好きなオリバに戻ってよ!』
「ああ、そうか。たしかにこの姿でいる必要はないね。『分身』解除」
ネイスもといオリバがそう言うと、彼の姿がダンディな男から少年へと変貌する。声色も変わり、見た目にあった幼い声になっている。
「じゃあ、お次は……『規則変更』」
オリバの目の前に透明なディスプレイが現れる。そこには『封印魔法 万人の入札を禁ずる』と書かれていた。
「さぁて、どういう風に変えようか……。そうだ、『ユニーク所持者の通行のみ許可する』にしよう!」
オリバがディスプレイをいじると、『万人の入室を禁ずる』という欄が『ユニーク所持者の通行のみ許可する』に変更されていた。
「これで……よし、開いたね」
今まで封印されていたはずの扉がいとも簡単に開いた。オリバは扉を通り、部屋の中へ入っていく。部屋の中はとても殺風景だった。ただの空間と言った方が正しいくらいだ。その部屋の真ん中にポツンと一つだけ物が置かれていた。
「これが神装『神血槍グラウ』か……。やっぱり君と同じ気配がするよ」
『もう、当たり前でしょ?同じ神装なんだから。それより、早くしないと彼が戻ってくるかもしれないわよ?』
「うん、そうだね。それに、あの方への報告も早くしたいしね。『インベントリ』」
オリバが魔法を発動すると、グラウが瞬く間に消える。
(今回は遊べなかったけど、また会える時を楽しみにしてるよ。それじゃあね、天道望くん)
そうして、目的を達成したオリバはその場を後にし、堂々と城から出て行ったのだった。
もし面白いと思っていただけたら、評価、ブクマなどなどよろしくお願いします。作者がけん玉をします。




