神魔
モノスの髪と目が金色に光る。そして、モノスの体から黄色の魔力光が溢れ出す。魔法を発動する時でもないのに、これほどの魔力光が出ることはまず無い。特別な状態と言っていいだろう。
「『光の速度』」
モノスがそう呟くと、目にも留まらぬ速さで望に近づく。そして、トンと望に触れると、更に言葉を放った。
「『転移』」
すると、二人は城の地下から城の上空まで瞬間移動した。急に景色が変わったことに望は驚く。
「なッ!?」
「『吹き飛べ』」
モノスは間髪入れずに言葉を放つ。望はその言葉通り後方へと吹き飛ばされた。
「『茨の拘束』『剣の雨』」
吹き飛んだ望の体が茨によって縛られる。少しでも体を動かそうとすると、茨の棘が体に食い込んで激痛が走る。しかも、そこに無数の剣が降り注いだ。
「『天風纏嵐』!」
望は旋風を纏って、自身に絡みつく茨を切り裂くと同時に、降り注いでくる剣を弾き飛ばす。
「『氷の牢獄』『光速の斬撃』」
今度は望の周りに氷の牢獄が形成されて、そこに光の速さで斬撃が飛来する。
「『転移』!」
氷の牢獄に捕まった瞬間、望は咄嗟にモノスが使った『転移』を発動して逃げる。そして、逃げた先で自分が捕まっていた牢獄が斬撃で真っ二つになる所を見てゾッとする。
(危ねぇぇ!少しでも遅かったら真っ二つだったぞ……)
その望の様子をモノスは無表情で見つめる。望は急に何もして来なくなったモノスに警戒しつつも、魔法を発動した。
「『炎の大剣』!」
燃え盛る大剣がモノスに向かって飛んでいく。しかし、モノスは何もせずに、ただジッと炎の大剣を見ていた。
そして、炎の大剣はモノスにぶつかる。すると、ぶつかった先から炎の大剣は徐々に消えていった。
「魔法が……消えた……?」
なぜかモノスには魔法が通用しないらしい。モノスは手をグーパーと開いたり閉じたりしながら、自分の体の状態を確かめる。
「どんなものかと思って魔法を受けてみたが、やはりこの状態ではユニークですら造作でもないな」
モノスはニヤリと笑う。だが、望はまだ本気を出していない。打てる手ならまだある。
「『三天大旋風』!」
三つの渦巻く風がモノスを襲う。だが、モノスはまるで微風に当たるように、腕を組んで涼しげにしていた。
「これもダメか……」
望は苦い表情をする。どうやら天空魔法でもダメらしい。ならば、と望は更に魔法を発動した。
「『剣の雨』!」
モノスが神魔の状態になってから発動した魔法を、望は再現魔法で放つ。これを見たモノスは少し顔を顰めて、言葉を放った。
「『魔法障壁』」
モノスは神魔の状態になって初めて望の魔法を防いだ。それはつまり、モノス自身の魔法は効果があるということだ。
(奴の魔法なら通じる……!)
少しの光明が見えた望だったが、自分の魔法が通じることに気づかれたというのに、モノスが黙って見ているわけもなかった。
「チッ、お遊びはもう終わりだ!『針の嵐』!」
望の近くで風の代わりに針が回る嵐が起きる。
「『転移』!」
さすがにこの魔法を受けるのはまずいので、望は魔法を発動して躱した。しかし、モノスの猛攻はまだまだ止まらない。
「『殲滅の大槍』!」
今度は、望の身長の五倍はあろうかというほど大きな槍が望に迫る。
「『聖護結界』!」
望が作った結界とモノスが作った大槍がぶつかる。大槍の一撃で結界にヒビが入るも、先に大槍が先端から瓦解した。
「はぁ……はぁ……」
しかし、ここにきて体力と魔力の低下による疲労が顕著に出てくる。これを好機と見たのか、モノスは最大の一撃を放った。
「『制裁の鉄槌』!」
先ほどの大槍よりも大きな鉄槌が望に向かって振り下ろされる。望は再び『転移』を発動してその場から逃げた。
「まだだ!『制裁の鉄槌』!」
しかし、逃げた先でもう一度同じ攻撃が放たれる。望は咄嗟に『聖護結界』を発動して防ごうとした。
「『聖護結界』!」
だが、鉄槌が結界にぶつかると、少しは耐えたものの、すぐに結界は壊れた。そして、その勢いを落とさずに、望に迫る。
「ま、ずい……ッ」
魔法を発動する暇もなく、望は鉄槌の一撃を食らって地面に叩きつけられる。
「がッ……」
鉄槌に殴られた衝撃と地面にぶつかった衝撃で、望は気を失った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
精神世界。
ここはそう表現するのが一番正しいだろう。その中で、望は一人佇んでいた。
(あれ……?俺は今までモノスと戦って……)
気を失ってから目を覚ましたら、突然別の場所にいたので少し混乱する。
その時、紫色の光がふよふよと望の近くに漂ってきた。
(なんだ、これ?光ってるけど……)
――諦めるの?
(え?)
急に頭の中に声が響いてくる。それは透き通るような女性の声だった。望は何となくだが、その声が目の前の紫色の光から発せられていることに気づく。
望が戸惑って答えずにいると、更にその声は望に語りかけてきた。
――まだ戦いは終わってないわ。早く目を覚まさないと、本当に死んでしまうわよ?
(でも、俺に魔力はほぼ残されていない。それに、俺はあくまで奴が発動した魔法しか使えない。だから、奴に手の内が知られてしまっているのと同じなんだ。どう頑張っても対策を取られてしまう……)
珍しく弱気な発言をする望に、その声は深いため息を吐いた。
――はぁ……何、弱気なことを言っているの?あなたは最強の魔法を持っているのよ。勝つ方法はいくらでもあるじゃない。
(最強の魔法?)
――再現魔法に決まってるでしょ。あなたは再現魔法の本質を理解してないわ。それが分かれば、あの男に勝つことなんて簡単よ。
(本質か……)
望は考える。再現魔法は自分が見たことあるものや現象を再現する魔法、と望は実験をして確認した。だが、その声が言うには、それだけでは足りないらしい。
――もう、仕方ないわね。少しだけヒントをあげるわ。再現魔法は全てを再現する魔法よ。あなたが見たものならね。
(全てを再現する……。俺が見たもの……)
声のヒントから望はある一つの推測が思い浮かぶ。もし、それが可能なら、モノスに勝つことも出来るだろう、と。
(分かった、ありがとう。助言のおかげで何とかなるかもしれない)
――まあ、あなたと私は一心同体。あなたが死ぬのは私にとっても喜ばしくないことだからね。それに……
その先は声が遠くなっていって、望には聞き取ることができなかった。
そして、望は現実世界で目を覚ます。
すみませんが、これから一週間ほど更新を停止させていただきます。理由はこれから少し忙しくなるためです。この忙しさがもう少し落ち着いたら、また更新を再開するので、来週あたりに覗きにきていただけると幸いです。
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