言葉の力
「よくもやってくれたな……」
モノスはボソッと呟く。
「もう諦めな。あんたの魔法の正体は分かった」
「何?俺の魔法が分かっただと?」
モノスはジッと望を睨みつける。その目には様々な負の感情が混ざっているようだった。
「ああ、お前の魔法は言葉を媒介にする。つまり、発した言葉をそのまま現実にする魔法だ。お前がこれまで発していたのは魔法名じゃなくて、魔法そのものだったんだ」
望が一通り説明すると、モノスは何も言わずに眉をピクリと動かした。
「何も言わないってことは、正解ってことでいいか?」
「黙れ……!『風の鎌』!」
モノスが風の鎌を放つ。それは望の説明が当たっているということを証明していた。
「『聖護結界』」
望が発動した『聖護結界』により、風の鎌は全て打ち消される。
「チッ、厄介な魔法だな!だが、お前の魔法も分かっているぞ。お前は他人の魔法を使うことができる魔法だろう?」
「さあ、どうかな」
望はシュヴァルツを構える。お互いに魔法の内容は把握している。つまり、ここからは純粋に強い方が勝つということだ。
「『炎の波』!」
その名の通り、炎で出来た波が望に覆い被さろうと迫る。
「『天昇竜巻』!」
望の足元から竜巻が現れ、炎の波を巻き込みながら上へと昇っていく。
「『風の弓』」
炎の波を防がれたモノスは今度は風の弓を作って、同じく風の矢を放つ。望は上に飛び上がり、風の矢を躱しつつモノスに近づいた。
「『土の壁』!」
望とモノスの間に土の壁がせり上がる。しかし、望は慌てない。
「『守天結界』」
足元に物理攻撃を防ぐ結界を作り出すことで、一時的な足場にして土の壁を躱す。
「天斬流一の型 火雷天閃」
望は剣術を繰り出してモノスに攻撃する。ただ、モノスもそれを黙って見てる訳ではない。
「『吹き飛べ』!!」
モノスがそう叫ぶと、望は何かの力に押されて後方へ大きく吹き飛んだ。
(そんなことも出来るのか。厄介だな……)
さすが言葉を具現化する魔法と言うべきか。『吹き飛べ』と叫べば、強制的に吹き飛ばされる攻撃に警戒を覚える。
「まだまだいくぞ!『槍の雨』!」
先ほどは火の雨が降り注いだが、今度は槍が雨のように望に降り注ぐ。
その槍の雨を時に躱し、時にシュヴァルツで弾くことで防いでいく。その間にも、望は反撃の機会を窺っていた。
「『砂嵐』!」
槍の雨の次は砂嵐が望を襲う。間髪入れずに放たれたその攻撃に、望は少し防御が遅れた。
「ぐ……『雨天守球』」
大きな水の球が望を包み込み、砂嵐から守る。しかし、周りは砂嵐に囲まれているので、外の状況が確認できなかった。
(仕掛けてくるなら、砂嵐が晴れた直後か。それなら……)
望はモノスが何かを仕掛けてくると考え、その備えをしておく。そして、砂嵐が晴れた。
「『業火の大砲』!」
モノスの目の前に炎でできた大砲が出現する。そして、そこから燃え盛る砲弾が何度も放たれた。
「『守天結界』!」
空中にどんどんと『守天結界』が生成されていく。望はその一つに向かって跳び上がると、それを蹴って更に別の結界を踏む。
「ちょこまかと動きやがって!」
モノスは大砲を動かして空中を走る望に狙いを定める。しかし、宙を駆ける望に砲弾を直撃させることは不可能に近く、モノスは舌打ちをした。
「『破裂炎』」
空中で放った望の魔法に砲弾がぶつかり、爆発が起きる。その爆発により上がった土煙でモノスは視界を奪われた。
「『空臨絶火』!」
そのため望が放った一撃に気づかず、まともに食らって壁際まで吹き飛んでいった。
「がはッッ!」
今まで膠着状態だった二人の戦いだったが、とうとう望が優勢になる。ここから一気に畳みかけようとした望だったが、嫌な感じがしたので一度下がる。
(なんだ、このプレッシャーは?)
吹き飛ばされたモノスは無言で立ち上がる。心なしか、モノスの周りが少し光っているように見えた。
「褒めてやろう。俺にダメージを与えたことを。そして、誇りに思え。俺の本気を見れることに……」
モノスの魔力が急激に高まる。そして、高まった魔力が弾けた。
「神魔 言霊」
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