ルシアの過去
時は望がルシアを追いかけ始めた時点まで遡る。
望は会場を出てルシアを追いかける。しかし、城の中は広いため、すぐにどこに行ったかが分からなくなる。
「どこに行ったんだ……?」
辺りをキョロキョロしていると、突然天井から誰かが降りてきた。
「うわっ!」
「驚かせて申し訳ありません。私はエリシア様の専属メイドであり護衛でもある、ミュールと申します。今回はエリシア様より密命を預かったため、こうして参上しました」
ミュールはそう言うと深々と頭を下げる。望もそれに合わせて少し頭を下げた。
「それで、その密命ってなんですか?」
「その辺りの話はルシア様の元に向かいながら話しましょう。ついてきてください」
ミュールが走り出すので望もそれについていく。どうやら彼女はモノスの行き先を知っているようだ。
「望様、ルシア様の秘密について覚えていらっしゃいますか?」
「はい」
望は決勝前にエリシアから聞いた話だろうと思い頷く。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ここから話すことは他言無用でお願いします。あなたのお仲間にも、ルシアにも……」
「わ、分かりました」
望はとても重要な話なのだと考えて、少し背筋を伸ばす。
「この国には私の祖父が封印した伝説の武器があります。その武器はとても強力で、一度使えば一人で国を一つ落とせると言われていたらしいです」
伝説の武器と聞いて、望はチラッと自分の腰にある剣を見る。人前で話してしまい、神装であることがバレてしまったが故に、もみくちゃにされたせいで人間に恐怖心を抱いたシュヴァルツさん。今も徹底して自分のことを知らない人がいる場では話さない。
「祖父も一度使ったことがあるみたいですが、それ以来、祖父の魔法である封印魔法によって城の地下深くに封印されたそうです」
「その武器ってもしかして神装ってやつですか?」
望は一応聞いてみた。もしかしたら、神装以外にも伝説の武器があるのかもと思ったからだ。結果は……まあ、予想通りだった。
「そうです!やはり望さんもご存知だったんですね」
(やっぱりか……)
望はシュヴァルツ以外の神装がどんなものか気になるという好奇心と、もしかしたらそいつもシュヴァルツみたいにウザかったりするのかという恐怖心を抱きながら話を聞いた。
「その神装が祖父に封印されてからは一度も人の目に触れたことはありません。それだけその封印は強力であり、祖父が亡くなった今も尚、封印は続いています。そして、封印は封印魔法でないと説くことはできません。だから、もうこの先誰も開けることはできない。神装を使うことはできないと思っていました。……ルシアが生まれてくるまでは」
エリシアの祖父が使ったのはおそらくユニークだろう。ユニークは規格外の力なので、術者が死んでも効果が残る可能性は十分に考えられる。
ただ、何故そこでルシアが出てくるのか。まだ望には話が掴めなかった。
「望さんはルシアが魔法を使っているところを見たことがありますか?」
「……いや、そう言われてみればないですね」
思い返してみれば、望はルシアが魔法を使ったところを見たことがない。今まではあまり疑問に思っていなかったが、言われてみるとおかしい気もする。
「ルシアは自分が魔法を使えないと思っています。両親にそう教えられてきたから。でも、本当は違うんです。ルシアは魔法を使うことが出来ます。祖父と同じ封印魔法が」
そこまで聞いて、望は事情を察する。何故ルシアの両親が魔法を教えなかったのか。
「なるほど、神装を狙う輩がルシアを利用するかもしれない。だから、ご両親は魔法について教えなかった。そして、人前にも出さなかったんですね」
「その通りです。本人には真実を伝えずに、人前にも出さないことにしました。病弱と偽って。事実、今までルシアが封印魔法を使えることは誰にもバレたことはありません。でも、両親が殺されてから雲行きが怪しくなってきました。どうやら、ランドスたちは神装を狙っているようなんです」
エリシアはジッと望を見つめる。
「まだルシアが封印魔法を持っているとバレたわけではありません。でも、もしかしたら何かの拍子にバレて、ルシアが危険に晒されるかもしれません。その時、あの子を守ってくれる人が必要なんです!お願いします、どうか……どうかあの子を守ってくれませんか?」
エリシアは少し涙目になりながら、望にお願いをする。それに対して、望は何の迷いも見せずに頷いた。
「もちろんです。ちょっと期限付きではありますけど、それまでは俺が仲間達と一緒に守りますよ」
「ほ、本当ですか……?ありがとう、ございます……ッ!」
エリシアがニコリと笑うのを見て、望も少し笑顔になる。
「あ、私はもう行かなくてはいけませんね。それではこれで。決勝戦も頑張ってください」
「はい、ありがとうございます」
エリシアはもう一度ローブを被って選手用の部屋を出て行った。そうして、一人きりになった望はシュヴァルツに話しかけた。
「神装がいるって本当なのか?」
『ええ、間違いありません。ワタクシもびんびんと波動を感じておりました』
「そうか……。なら、全力でルシアは守らなきゃいけないな……」
望はそう意気込むのだった。
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