諦めない
「あんた達、相手は三人だ!数の力で押し切るよ!」
魔法使いの集団を指揮する女が水の魔法でティアナに攻撃する。
「『火炎壁』!」
しかし、ティアナが作り出した炎の壁によって女の攻撃が通ることはなかった。どうやら、魔法の実力に関してはティアナの方が上らしい。
「チッ、厄介な子だね……。あんた達、一斉に行くよ!」
女は近くの魔法使い達とタイミングを合わせて魔法を放つ。それを見越していたティアナは相手の魔法に合わせて、準備をしておいた魔法を撃った。
「『炎の大剣』!」
炎で作られた大剣が魔法使いたちが放った魔法にぶつかる。そして、大きな爆発を起こした。
「くっ……」
その爆発に魔法使いたちは少し怯むが、ティアナは次の魔法の準備をしていた。
「『火弾乱射』!」
小さな火の弾が魔法使いたちの元に飛んでいく。一つ一つの威力は弱いものの、数が多いので動きを止めるには十分だった。
「『氷結弾』」
シェーネがバスケットボールサイズの氷の弾を何発も放つ。ティアナの撃った炎の弾に気を取られていた魔法使いたちは氷の弾をまともに食らって何人か吹っ飛んでいった。
「あんた達!子供相手に何やってんだい!」
「す、すみません!でも、あいつら異常に強くて……」
シェーネに攻撃を仕掛けていた魔法使いはそう呟く。
「なら、もう一人は……」
そう言って、女はリーンがいる方向を向く。ひとまず一人は倒しておきたい女だったが、リーンを見てそれは難しいことを悟った。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
リーンは近づいてきた敵をレイピアで薙ぎ払い、遠くの敵を魔法で近づけさせないようにする戦法で魔法使い達を圧倒している。どうやら彼女は一対多という戦いに慣れているみたいだ。
(なんでこいつらはこんなに強いのよ……ッ!武闘祭に出ていたエルフならまだしも、赤髪はただの付き添いでもう一人に関しては子供なのよ!?それなのに……)
「何をやってるんだ、エルダ。さっさと終わらせろ」
遠くで戦闘を見ていたラバールが指示するが、指揮を任されていた女魔法使いのエルダは返事をすることが出来なかった。
「はぁ……もういい。俺がやる。エルダはこいつを見ていろ」
ラバールはエルダ達の方に回り込み、ランドスをエルダに渡して戦闘に参加した。
「だ、団長!すみません!俺たちが不甲斐ないばかりに……」
「謝るなら結果で示せ。俺もボスもその方が喜ぶ」
「はい!」
そして、ラバールはティアナの前に立ち塞がる。一対一で戦おうとしているようだ。
「お前らは他の二人を。俺はこいつの相手をする」
そう言うと、ラバールは魔法を発動した。
「『色彩光破』!」
色とりどりの光がティアナに迫る。しかし、その攻撃は一度望との戦いの時に放った魔法だ。当然、どんな魔法かはティアナにも分かっている。
(あれは近づかせちゃいけないわね)
「『火炎壁』!」
ティアナはいつもより少し前に炎の壁を生成する。色とりどりの光は炎の壁にぶつかると弾けた。防御魔法すら貫通する威力を持つこの魔法だが、今回はティアナに届くことはなかった。
「ま、さすがに防ぐか……。だが、これはどうかな?」
ラバールはニヤリと笑い、次の魔法を発動した。
「『輝きの嵐』!」
唸る光の奔流がティアナに向けて放たれる。武闘祭では見せなかったその技に、ティアナは先ほどと同じように『火炎壁』を発動した。
しかし、いとも簡単に光の奔流は炎の壁を突破してティアナを襲った。
「きゃあぁぁぁ!!」
光の奔流に飲み込まれたティアナは壁際まで吹き飛ばされた。
(強い……。他の魔法使い達とは比べ物にならないくらいだわ)
今の魔法を見て、ティアナはそう実感する。事実、今の技は武闘祭で見せた技よりも強かった。つまり、ラバールは武闘祭では本気を出していなかったということだ。
「やはりお前もその程度か。それなら倒すのは簡単だ」
ラバールは歩きながらティアナに近づいていく。それを見ながら、ティアナはゆっくりと立ち上がった。
「はぁ……はぁ……」
「随分と辛そうだな。そこで大人しくしてるなら、これ以上攻撃しないが……どうする?」
肩で息をするティアナはそのラバールの問いに笑いながら答えた。
「冗談、言ってんじゃないわよ……!二人が……望が頑張ってるのに……私だけ諦めるわけないでしょ!」
その叫びにラバールは少し後ずさる。だが、すぐにティアナを睨みつけて魔法を発動した。
「そうか、なら死ね。『幻影虚光』」
ラバールに光が当たり、すぐ隣にもう一人のラバールが現れる。そして、二人のラバールは同時に同じ魔法を発動した。
「「『輝きの嵐』!」」
先ほど防げなかった魔法が今度は二つになってティアナに迫る。ティアナはなんとか力を振り絞って魔法を発動した。
「『炎の大剣』!」
炎で作られた大剣が二本の光の奔流を斬らんと飛んでいく。しかし、即席で生成した魔法では通用せず、光の奔流に飲み込まれて消えた。
シェーネもリーンも魔法使い達の対処に集中しており、ティアナのカバーに来れそうにない。
(くっ……ここまでかしら……)
ティアナは覚悟を決める。今の状態ではラバールの魔法を躱すことは出来ず、新たな魔法を撃つことも出来ないからだ。
(……まだよッ!まだ耐えれば何とかなるわ!)
ティアナはクラウディス戦のアゼロを思い出す。あの時のアゼロはクラウディスのブレス攻撃を魔力による強化をすることで何とか耐えていた。それと同じように、魔力で自身を強化すれば、魔法が直撃しても耐えることが出来るかもしれないと考えたのだ。
「……くっ」
残った魔力を自身の強化に注ぎ込む。そして、衝撃に備えるために目を瞑った。
その時、誰かがティアナの前に立ちはだかった。
「『炎嵐輝刃』!」
その人物の魔法で光の奔流は切り刻まれて無に帰す。いつまで経っても来ない衝撃をおかしく思ったティアナは恐る恐る目を開ける。
「すまない。来るのが遅れたみたいだな」
そこには、いるはずのないルドーが立っていた。
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