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孤高の再現魔法使い  作者: 潮騒
第二章
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反乱



「よくやった、ラバール。お前はそのまま皇帝を拘束しておけ」


 会場の隅で今までの状況を見ていた男がラバールの元へ歩いてきた。その男はラバールに指示をすると、ニヤリと笑った。


「お、お前、モノス!まさか……」

「そうですよ、陛下。すべて私の計画通りです」


 ランドスは今にも殴りかかりそうな勢いだが、ラバールに抑えられて身動きが取れずにいた。


「いやー、この一年大変でしたよ。無能なあなたのために私がどれだけ働いたことか……っと、この口調もやめるか。あぁ、全部あんたを騙すためとはいえ、最初の頃は辛かったぜ。いちいち意識してあの口調を使わないといけなかったからな」


 モノスはそう言いながら会場全体を見回す。そして、望を見た時、「チッ」と舌打ちをした。


「はぁ……おい、ラバール。なんであのガキはピンピンしてるんだ?午前中の連戦で疲れさせたんじゃないのか?」

「い、いやそのはずなんですが……」

「これじゃああの催し物を推薦した意味がねえだろ。仕方ねぇ。ラバール、そいつを抑えとけよ。まだ利用価値はある。その間に俺はもう一つの目的を果たす」

「承知しました」


 モノスはそう言って突然のことすぎて訳の分かっていない招待客たちの前に出た。


「無駄な抵抗はやめた方がいいぞ。近衛騎士団は助けに来ないからな」

「ど、どういうことだ!」


 招待客の一人がそう叫ぶ。モノスはニヤリと笑いながら答えた。


「団長のルドーは昨日の傷を癒さずに放置しておいたし、副団長のクロードは今はこの国にいない。その上、団員たちには睡眠薬を飲ませておいたから今頃夢の中だろうさ」

「そ、そんな……」


 どうやらモノスは準備を念入りにするタイプらしい。その計画は抜け目の無いように思える。


「まあ、安心しな。あんたらは殺さない。これから、帝国のために頑張ってもらわなきゃならねえからな。というか、あんたら貴族がまともに戦えるとも思ってねえし」


 殺されないと聞いた招待客は安心したのか、一つ息を吐く。


「それと。おい、そこのガキ。こっちに来い」


 そう言ってモノスが呼んだのはルシアだった。


「え?わ、私ですか?」

「そうだ、お前だ。前皇帝の娘、ルシア=ダフリス」


 ルシアは自分の名前を呼ばれてビクッとする。まさか、自分のことを知っている人がいるなんて思っていなかったからだ。


「お前にはやってもらわなくちゃいけないことがあるんだよ。だから、俺と一緒に来てもらわなくちゃならねぇ」


 モノスに見られて怯えるルシアの前に望が立つ。それはルシアを渡さないという望の意思表示だったが、モノスには関係なかった。


「別に従わなくてもいいさ。強制的に従わせるだけだからな。『こっちに来い』」


 モノスがそう言うと、ルシアがトボトボと歩き始めた。


「ルシア?」


 望が呼ぶが、返事はない。咄嗟にルシアの腕を掴むが、それも振り解かれた。


「やめて!私は行かないといけないの……」

「ルシア、『魔法を使え』」


 モノスの言葉にルシアは反応して、使えないはずの魔法を発動した。


「『封動陣(シーラー)』」


 すると、望の足元に魔法陣のようなものが生成される。それと同時に、望の身に異変が起きた。


「体が、動かない……?」


 望は力を入れて必死に動こうとするが、一切の身動きが取れなくなっていた。


「ふははッ!無様だな!ルシア、『私についてこい』」


 望が動けなくなったことを確認したモノスはルシアを連れてどこかへ行ってしまう。


「ティアナ!ルシアを頼む!」

「任せて!」


 望はティアナに任せるが、その前に魔法使いの集団が立ち塞がった。


「悪いね、ここから先は行かせないよ」

「くっ、そこを退きなさい!」


 ティアナはそう言って魔法を準備して放つ。だが、相手は集団だ。一人の力でどうにかなる話ではない。


「ふふっ、一人でどうしようってんだい」

「私もいるぞ!」


 ティアナの隣に剣を構えたリーンがやってくる。


「あなたも戦ってくれるの?」

「事情はあまり分からないが、少女が連れ去られたというのに、黙って見ているほど廃ってはいない」


 リーンはそう言ってティアナに笑いかける。その時、魔法使いの数人が氷に吹っ飛ばされた。


「私も戦う」

「ええ、任せたわよ、シェーネ!」


 シェーネもやる気満々みたいだ。ルシアを連れていかれたのが頭に来ているらしい。


「い、今の攻撃はこの子が……?」


 シェーネの実力を知らないリーンはその圧倒的火力の魔法に驚いている。それは敵である魔法使いたちも同様だった。


 そうしている間に、望にかかっていた魔法が解けて、望は自由に動けるようになった。


「解けた……!よし、じゃあ四人で……」

「望はルシアを助けてきて!ここは私たちだけで大丈夫だから!」


 望はそう言われて迷う。ティアナたちの実力を疑っているわけではない。しかし、さすがに敵の量が多すぎる。普通に考えれば、四人で戦った方がいいだろう。


 だが、それでは間に合わない可能性がある。モノスがルシアに何をさせようとしているのか分からない以上、一刻も早くルシアの元に駆けつける必要がある。


(どうする……?行くべきか、先にここを片付けるべきか……)


「望!」


 迷う望をティアナが大きな声で呼んだ。そして、望をじっと見て頷く。それを見た望はティアナに頷き返してルシアの跡を追った。


「させない!」

「それはこっちのセリフよ!」


 魔法使いの一人が望を狙うが、それをティアナが阻止する。


「望の邪魔は……絶対にさせないんだからッ!」


 ティアナの気持ちの込もった叫びが会場全体に響き渡った。




もし面白いと思っていただけたら、評価、ブクマなどなどよろしくお願いします。作者がホルンを演奏します。

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