アフターパーティー
前話を改稿しました。内容が大幅に変わるわけではありませんが、良ければ見てみてください。
「そういや、この世界に来て初めて城を見たな……。やっぱり西洋風の城なのか」
そう呟く望の目の前には今日のパーティーの会場でもある、帝国城がそびえ立っている。
「何言ってるの、望?お城なら王都でも見たじゃない」
「あれは遠くから眺めてただけだろ?やっぱり城は近くで見ないと」
そうして城をまじまじと見ながら歩いていくと、城の入り口に到着した。そこで望はルシアを見る。
「ルシア、大丈夫か?」
「は、はい!大丈夫です!」
望が尋ねると、ルシアは大きく頷いた。実は昨日のうちに望はエリシアと会ったことを、ルシアはティアナに自分のことを打ち明けたことを伝えた。その上でルシアはパーティーに出席する、いわば帝国城に来ることを選んだのだ。
「懐かしい……。お城はあの時のままずっと変わってないです」
ルシアは昔見ていた光景を思い出しながら城を見回す。その顔は決して暗くなく、明るい表情だった。
「楽しそうで良かったわね」
「ティアナ。絶対にルシアから目を離さないでくれ」
「わ、分かったわ」
ふと見た望の表情が険しいものだったので、ティアナは少し驚く。
「ほら、皆さんも早くー!」
「おう」
ルシアは笑顔で望たちを呼ぶ。それに答えた望の顔は普段と変わらないものに戻っていた。
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パーティー会場では様々な食事が各テーブルに置かれており、端の方ではオーケストラが生演奏をしていた。
「帝国にはオーケストラもいるのか……」
「綺麗な音色よね。演奏を聴く機会なんて滅多にないから聞けて良かったわ」
「お疲れ様です、望さん」
望たちがオーケストラの演奏を聴いていると、隣にラバールがやってきた。
「あ、どうも」
「あれ?なんか余所余所しくないですか?」
望は軽い会釈をしただけで挨拶を終える。ラバールは武闘祭の時にあれだけ会話をしたのに、そっけない対応をされたので疑問に思ったみたいだ。
「まあ、それはそれ、これはこれです。そういや、ラバールさんは一人で来たんですか?」
「ええ、他のみんなにも用事がありますから。僕は一人寂しく楽しもうと思いましてね。こうしてお酒を飲みながら食事を楽しんでた訳ですよ。望さんも一杯どうですか?」
そう言ってラバールは望にお酒を差し出す。ただ、望は地球で言えばまだ未成年だ。異世界だろうと、お酒を飲むことには多少の抵抗がある。
「いや、俺はいいです。お酒以外の飲み物を飲むので」
「そうですか……」
ラバールは少し残念そうにお酒を元々あった場所に戻したので、望は少し悪いことをしたかなと思った。
「望、あんたいつの間にラバールさんと仲良くなったのよ」
「武闘祭の時だよ。選手用の部屋で色々話してたんだ」
「そんな部屋があったのね」
望がそう言うと、ティアナは納得した表情を見せる。その時、会場の照明が薄暗くなった。そして、一箇所だけ明るく照らされる。
「皆の者。今日はアフターパーティーに参加してくれて嬉しく思う」
明るく照らされた場所でそう話し始めるのは皇帝のランドスだ。
「このパーティーを楽しんでもらうためにささやかながら食事と飲み物を用意した。オーケストラの方々の演奏を聴きながら、談笑を楽しむのもいいだろう。それぞれ好きなように楽しんでくれたまえ」
ランドスが礼をすると、参加者たちが一斉に拍手をする。一応、望も空気を読んで拍手をしておいた。
「お、明るくなった」
「私たちも食事を頂きましょ」
ティアナがルシアを連れて食事を取りに行ったので、望もシェーネと一緒に食事を選んだ。
「シェーネは何か食べたいものあるか?」
「うーん……お魚がいい」
「魚か……。あ、いいのがあったぞ」
シェーネには食事が置いてある机は少し高いので、望が食事を取って渡す。
「これでいいか?」
望が渡したのはムニエルのような食べ物だ。シェーネはそれを受け取ると、もぐもぐと食べ始めた。
「うん、美味しい」
「そうか。なら、良かったよ」
「あの、ちょっといいだろうか」
望も何か食べようかと食事を見ていると、誰かに声をかけられた。
「何ですか?」
「私はリーン=ミスティア。エルフ一族の者だ。望殿に折り入って頼みがあるのだが……良いだろうか?」
リーンはエルフというだけあって、金髪で長い耳をしている。望はどこかで聞いた名前だな、と思いつつも思い出せずにいた。
「望殿がこの強者ばかりの武闘祭で優勝できるほどの実力者であることは周知の事実だ。実は今回、私が武闘祭に参加したのは優勝するためではなく、強い人を探すためなのだ」
そこまで聞いて、望はようやく彼女が武闘祭に一般枠で参加した人だということを思い出す。
「そんな強者である望殿に、私の故郷を……エルフの里を守ってほしいのだ」
「それってどういう……」
ことですか?と聞こうとしたところで、大きな爆発音が鳴り響いた。会場にいた人たちは驚いて、一斉に音が鳴った方向を向く。
爆心地の壁には大きな穴が開いており、そこからわらわらと多くの人が入ってきた。
「なんだ……?何が起きているのだ?」
皇帝ランドスは訳が分からずに狼狽える。そんな彼の首を後ろから締め上げる者がいた。
「ぐへぇっ!き、貴様……何をするッ」
「黙れ。何も喋るな」
ランドスの首を締め上げているのは……ラバールだ。そして、ラバールは大声で叫んだ。
「全員動くなァ!動いたら魔法で吹き飛ばすぞ!」
その時のラバールの顔は、望と話している時とはまるで別人だった。
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