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孤高の再現魔法使い  作者: 潮騒
第二章
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それぞれの思惑



――フィリの場合――


 決勝戦で望がルドーに勝った時、フィリは密かにガッツポーズをしていた。全てがフィリの目論見通りに進んだからだ。


(いやー、さすが望くんだ。想像以上の成果を出してくれたよ。まさか、あの近衛騎士団の団長を倒してしまうとは。さすがに彼に勝つことは無理かと思ったけど……やってくれたね)


 今回、フィリが帝国側から来賓の誘いと招待選手の話を聞いた時に、帝国の冒険者ギルドへの牽制策を思いついた。冒険者ギルド内にも派閥争いがあり、フィリは帝都の冒険者ギルドマスターであるゴードンと別の派閥に属している。だから、うちにはこんなにも強い冒険者がいるのだぞ、というアピールをしたかったのだ。


(これでこちらが強力な冒険者を有していることは分かったはず。まあ、向こうも向こうで何か考えがあったみたいだけど)


 フィリはチラッと近くにいるゴードンのことを見ながら、席を立った。望との約束である調査の続きをしに行くためだ。


(ま、望くんも頑張ってくれたんだし、こっちも頑張らないとね)


 そう考えながら、フィリは闘技場を後にした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



――ゴードンの場合――


(あの小娘……まさかあんな隠し球を持っているとはな。ルドーは相当な実力者だ。冒険者になればAランク、下手したらSランクになりかねん。その男を倒したあのガキはそれ以上ということ。チッ、面倒なことをしてきよって)


 ゴードンは元々冒険者だったこともあり、人の実力を見抜く能力に長けている。そんなゴードンが言うのであれば、ルドーは本当にAランク以上の実力を持っているのだろう。


(まあ、いい。今回の目的は達成したからな。まさか、八百長をするだけで金が貰えるとは。これを提案してきたあの男も何を考えているのやら。国のためではないことは確かだが……私はギルド職員だ。国がどうなろうと知ったことではない)


 ゴードンは手元にあった紅茶を一口啜る。そして、ニヤリと笑った。


(今に見ておれ、フィリ=クローシア。私と対立したことを後悔させてやる)


 どうやらゴードンの思惑はしっかりと進んでいるようだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



――エリシアの場合――


「良かった……」


 エリシアは内心ホッとしていた。実際に望と話してみて、いい人であるということが分かったからだ。


 ルシアを奴隷にしてからは気が気ではなかった。心配ではあるものの、ランドスの気をルシアから逸らすためには気にしていないフリをしなければならない。それでも定期的に信頼できるメイドに様子を見に行かせたりしていた。そして、まだ買われていないと聞いては胸を撫で下ろしていた。


 だが、ある時ルシアは買われてしまった。偶然立ち寄ったデジカによって。そもそもルシアは買われることがないように、とても高い値段をつけていた。それでも、無駄に金持ちなデジカは気に入って買ってしまったのだ。


 それを聞いたエリシアは卒倒するほどショックだった。自分の考えの甘さが出たと、何度自分を恨んだことか。もしかしたら、これからルシアは死ぬよりも酷い仕打ちを受けるかもしれない。そう考えるだけで心が押し潰されそうになった。


 そうして少し経ったある日、国境近くの街のホルテンでちょっとした騒ぎがあったことを聞いた。騒ぎを起こしたのはデジカと数人の旅人。その内容がデジカが自分の奴隷をその旅人たちに取られたと騒いでいるというもの。そして、旅人たちの中には自分と同じ藤色の髪の少女がいたらしいということも聞いた。


 それでエリシアは確信した。間違いなく、自分の妹のルシアであると。急いで旅人たちのことを調べさせると、そのうちの一人が今度行われる武闘祭に参加するという情報を入手した。


 そして、その大会で望がルシアを大切にしていることを知り、一度話してみたいと思ったのだ。


(強くて優しい望さんなら……きっとあの子を守ってくれる。私じゃ無理だったけど、望さんならお父様とお母様の願いを叶えられる)


 エリシアはそう思いながら、望の決勝戦を見届けたのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



――黒ずくめの男の場合――


 男はデジカの魔物化の件を聞いてほくそ笑む。これまで準備してきたことをようやく実行に移せる。デジカの魔物化は実行に移すための最後のカギでもあった。


(準備段階では色々あったが、もうすべてクリアした。この祭りも終わり、明日は後夜祭。滅多に人前に顔を出さない皇帝が出席するパーティーが行われる。そこで我らが革命を起こす!)


 そして、男は近くにいるローブを被った男に話しかけた。


「計画の実行は明日のパーティーの時だ。そこで皇帝を暗殺し、私が皇帝の座に登り詰める。お前たちは武闘祭の参加者や近衛騎士団たちを抑え込め。殺しても構わん」

「承知しました、ボス」


 黒ずくめの男は立ち上がって、ローブの男の肩を叩いた。


「お前たちの働きには期待しているぞ。すべて私が言った通りにすればお前たちは一生安泰した生活を送れる。もう飢えに困ることはなくなるんだ」

「分かっています。俺たちは誠心誠意ボスに従います」

「うむ、いい心がけだ。では、頼んだぞ、()()()()


 そう言うと、黒ずくめの男はその場から消えた。残されたローブの男ラバールは懐から薬瓶を取り出して、最後の一錠を飲み干すのだった。




もし面白いと思っていただけたら、評価、ブクマなどなどよろしくお願いします。作者が月に行きます。

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