ルドーの実力
「さあさあ、ついにやって来ました。帝国武闘祭決勝戦!早速選手に登場していただきましょう。まずは一人目、帝国最強とも名高い近衛騎士団の団長、ルドー=ファルヘイムー!!」
名前を呼ばれたルドーが舞台に現れる。近衛騎士団たちの治癒系の魔法により、ネイス戦で負った傷は綺麗さっぱり消えている。
「対するは、王国からの刺客!一回戦二回戦共に強力な魔法を繰り出して勝利を収めた大魔法使い、ノゾム=テンドウー!!」
次に望の名前が呼ばれ、控室から舞台へと向かう。ただ、紹介文の"大魔法使い"という部分には少々疑問を覚えたが。
「いくか、シュヴァルツ」
『ええ、頑張りましょう。ご主人様の活躍を期待してますよ!』
望が舞台に出ると、観客たちの盛り上がりも最高潮に達する。
「望くんだったかな?いい試合にしよう」
「はい、よろしくお願いします」
ルドーが手を差し伸べるので、望はその手を取り固い握手を交わす。
「お二人が握手を交わしたところで、早速始めていきたいと思います!」
望とルドーは距離を取る。そして、向かい合って互いに剣を抜いた。
「では、決勝戦よーい、始めッッ!!」
試合開始と共にルドーが仕掛ける。
「『抜刀 緋炎烈火』!」
ルドーの剣に炎が纏う。そして、その剣を大きく振り払うと、周りに炎が飛び散る。
「いくぞ。『炎羅』」
ルドーが燃える剣を横に薙ぐと、その斬撃が具現化して望の元に飛んでくる。
「『天風 鎌鼬』」
その炎の斬撃に対抗するように、望も風の大きな斬撃を生成して放つ。二つの斬撃は互いのちょうど真ん中辺りでぶつかり相殺しあった。
「天斬流一の型 火雷天閃」
二つの斬撃がぶつかったことによる爆風が吹き荒れる内に、望はルドーとの間合いを詰めて技を繰り出す。
「甘いッ!『爆地砲』!」
しかし、ルドーにはそれが見えているようで、逆に望の背後に回り込み、剣の炎を爆発させて望にダメージを与える。
「ぐっ……」
舞台の端の方まで吹き飛ばされた望に、ルドーは更に追撃を仕掛ける。
「『火映 御神火』!」
望に向かって一直線上に炎が地面から噴き上がっていく。その攻撃を望は宙に浮くことによって躱した。
「『三天大旋風』」
そして、反撃の魔法をルドーにお見舞いする。だが、三本の渦巻く風が迫ってくるのをルドーが見ているだけな訳もなく、防御魔法を展開して防ごうとした。
「『炎円焔下』」
円盤状の炎が三つの渦巻く風を防ぐ。しかし、完璧に防ぐことができなかったようで、徐々に後ろへと押されていった。
「『緋天演舞』!」
火の球がまるで隕石のようにルドーに降り注ぐ。しかも、火の球はルドーをロックオンしているらしく、躱しても地面にぶつからずにルドーを追いかけた。
「チッ、面倒だな。『空臨絶火』!」
ルドーが出した唸る炎が火の球をすべて飲み込んでいき、更には望まで飲み込まんと空を駆け上がっていく。
「『聖護結界』」
望の周りに魔法を防ぐ結界が張られ、炎は望を飲み込むことはできずに消え去った。
「何という魔法の応酬なんだぁぁ!お互いに様々な魔法を使って相手を追い詰めていくが、もう一歩のところで仕留めきれない!」
望は一度地面に降りる。宙に浮いているだけでも魔力は消費する。今は少しの魔力も消費したくないのだ。
「いや、実に予想以上だ。攻守において一級品の魔法を持っている上に剣術までも使いこなすとは……。うちの騎士団に入ってほしいくらいだよ」
ルドーは手放しで望を褒める。
「何を言ってるんですか。ルドーさんの方こそすごい魔法ばかり使うじゃないですか」
「まあ、俺はこの国の騎士団の団長だ。国を守る責務を背負っている者として生半可な実力ではいけない。そして、俺は最強でなければならない。国民に疑わせてはいけないんだ。本当にこの国を守れるのかってね」
望と話しながら、ルドーの魔力がどんどん高まっていく。それに気づいた望は気を引き締めた。
「だからこそ、本気で行かせてもらうよ」
ルドーの周りに風が吹く。それはどんどん勢いを増し、砂埃を上げるほどの風になったところでルドーの左手に収束した。
「『抜刀 青嵐時風』」
収束した風が剣の形を取る。ルドーは右手に燃え盛る剣を、左手に吹き荒れる剣を構えた。
「さあ、第二ラウンドといこうか」
そう言って、ルドーは全力で駆け出した。
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