準決勝
午後、武闘祭の準決勝が始まろうとしていた。観客たちも集まり始め、試合の準備も整っている。
「さあさあ、皆さまお待たせ致しました!これより準決勝第一試合を始めたいと思います。選手のお二人はどうぞ舞台へ!」
呼ばれた望は選手用の部屋から舞台に向かう。対戦相手のラバールも一緒だ。
「望さん。いい勝負にしましょうね」
「こちらこそ。全力で戦わせていただきます」
「はっはっは。それは怖いですね」
二人は固い握手をした後に舞台に登場する。観客たちは望とラバールの姿を見て盛り上がる。
「準決勝第一試合はノゾム=テンドウ選手対ラバール=ホーツ選手です!お互いに第一試合では面白い試合を見せてくれました。果たしてこの試合はどうなるのでしょうか!それでは参ります。よーーい、始めッ!」
試合がスタートした。まず最初に動いたのはラバールの方だ。
「『色彩光破』!」
ラバールの手から色とりどりの光が飛び出してくる。それはふよふよと浮かびながら、望に近寄っていく。
「『雨天守球』」
望は自身の周りに水の球を作り出し、光の攻撃に身を備える。すると、望の近くまで来た光が弾け飛び、衝撃が水の球の防御を超えて望の元にまでやってきた。
「ぐ……ッ」
「残念ながら『色彩光破』に防御は通用しませんよ」
ラバールはそう言うと右手を閉じた状態から開く。すると、指の間に小さな光の玉が現れた。
「まだまだいきますよ。『遮蔽光』」
光の玉が急激に発光して視界の全てを光が満たす。望はその眩しさに思わず目を閉じてしまった。
「おおっと、これは第一試合と同じ展開だ!ということはあれが来るのか!?」
ラバールの頭上に一際大きな光の玉がが出現する。どうやらこの魔法がラバールの必殺の魔法らしい。
「いけぇ!『光乱砲撃』!!」
大きな光の玉がぐるぐると回転し、そこから小さな光の玉がいくつも放たれる。それは的確に望を狙っており、眩しさで目を閉じている望には見ることが出来なかった。
「『天昇竜巻』」
望の周りに天高く突き上げる竜巻が発生する。それは光の玉を防ぐための魔法だったが、ラバールは余裕の笑みを崩さなかった。
「すごい魔法ですが……この物量を前にいつまで保ちますかね」
ラバールが言うように、光の玉はまだ出続けている。防御魔法も万能ではないので、いつかは破られてしまう。だから、ラバールはその物量を以て望が発動した魔法を破ろうとしているのだろう。
「目がうまく見えないまま発動した望選手の魔法は果たしてラバール選手の攻撃を防ぎきったのか……」
やがて光の玉の攻撃も収まり、竜巻も収束していく。竜巻が消えたその場所には無傷の望が立っていた。
「何ッ!?」
「なんと、望選手は無傷です!先ほどの試合でAランク冒険者のリガン選手を破ったあの技を見事防ぎきりました!」
自信のある攻撃を防がれてラバールは驚く。だが、あくまでラバールの攻撃を防いだのは『天昇竜巻』ではない。吹き荒れる竜巻の中でこっそりと発動していた『聖護結界』で防いでいたのだ。一時的に目の見えない望にはどんな攻撃が来るのかは分からなかった。だから、『天昇竜巻』と『聖護結界』の二重で防御をしていた。
(念のため二つ発動しておいて良かったな……。さすがにあれを耐えることは俺には無理だ。師匠なら耐えそうだけど)
そんなことを考えながら、望は反撃の魔法を展開する。
「『天風連斬』!」
望が発動したのはクラウディスが放っていた風の斬撃の攻撃だ。物量には物量をという意趣返しの攻撃である。
「『護光防壁』!」
ラバールは自身の前に大きな光の壁を生成して、風の斬撃を全て防ぐ。ラバールも魔法を極めているようで、無詠唱で魔法を発動している。しかし、望はユニークだ。普通の魔法では埋められない差がそこにはある。
「『三天大旋風』」
三つの渦巻く風が放たれる。防御魔法を発動したばかりのラバールにそれを防ぐ手立てはなく、その攻撃をモロに食らった。
「がぁぁぁぁ!!」
ラバールは風の攻撃を食らって舞台の端まで飛ばされる。そして、壁にぶつかりそのまま気を失った。
「おおっと、ここで決着ー!勝ったのは望選手です!最初のラバール選手の猛攻を防ぎきり、逆に猛攻を仕掛けて勝利を掴み取りました!」
望は肩で息をしながら選手用の部屋へと戻る。そこにはニヤついた笑みを浮かべるネイスがいた。
「とうとうお前と俺が戦うっていう未来が見えてきたな」
「次でお前が勝てばだけどな」
望はそう言って部屋に置いてあるベンチに座る。
「さて、次は準決勝第二試合、ルドー=ファルヘイム選手対ネイス=ギャレット選手です!お二人は舞台に上がってきてください!」
ルドーとネイスが舞台に向かう。そうして、準決勝第二試合が始まろうとしていた。
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