決着?
ここ最近忙しいので投稿の時間が遅くなることがあります。毎日の投稿は頑張るので、空いた時間に投稿されているか見にきていただけると幸いです。
それから試合は順調に進んでいった。
第二試合はAランク冒険者のリガンと魔法使いのリーダーのラバールとの試合だった。最初はリガンがAランクとしての実力を遺憾なく発揮していたが、途中からラバールが多彩な技で翻弄し始め、そのまま押し切りラバールが勝利した。
続いて第三試合では、近衛騎士団の団長であるルドーと予選を勝ち抜いたリーンが戦った。リーンはレイピアによる攻撃と風魔法とのコンビ技を繰り出すが、ルドーの剣技と魔法の前には歯が立たずにルドーの勝利となった。
一回戦最後の試合では、近衛騎士団副団長のクロードと二人目の予選勝者ネイスの試合だった。この試合は前回の試合がルドーが勝利したことから、クロードが勝つのだと誰もが思っていたが、それに反してネイスがクロードを圧倒し勝利を収めた。
そうして一回戦が終わると、武闘祭は一度昼休憩に入った。準決勝と決勝は午後から行われるらしい。
望は一度選手用の部屋を出て、客席にいるティアナたちの元に向かった。その途中で望は試合を見た人に話しかけられた。
「おぅ、兄ちゃん!さっきの試合は良かったぜ!」
「あ、ありがとうございます」
と、こういう風に純粋に褒めてくれる人はいいのだが、稀にいるのが……。
「あ、あんたは女の子を取り合ってた人だね。勝ててよかったねぇ」
「お、兄ちゃん!末長くお幸せにな!」
「女の子は大切にするんだよ」
デジカの提案を色恋沙汰の話と勘違いした人たちが冷やかしてくることがある。内心では「違うっつーの」と思いながらも、軽く会釈をしておく。内容が内容だけに、この件についての詳細はあまり他言したくないのだ。
「おーい」
数分後、闘技場の中から出てくるティアナたちを見つけて呼び止める。
「お疲れ様。さっきの試合、良かったわよ」
「ああ、ありがとう」
「望、手加減した?」
「いや、あの魔法自体見た目はすごそうだけど、威力はそれほどだからな。相手が魔力で身を守ってるって分かったから遠慮なく発動したよ」
望があの試合で発動した魔法(『原氷世界』以外)は直撃しても死なない程度の威力の魔法である。『原氷世界』も最初は発動するつもりはなかったのだが、バンが望を殺すつもりで魔法を撃ってきたので対抗したにすぎない。
望たちが話している中、ルシアは俯きながらじっと黙っていた。やはり今回の件に負い目を感じているらしい。
「ルシア」
「は、はい……」
望に名前を呼ばれたルシアはゆっくりと顔を上げる。その顔は今にも泣き出しそうだった。
「そんな顔はしなくていいよ。俺はただ大会に出て、試合に勝っただけだから」
「でも!私のせいで……また、望さんが……」
「前にも言ったろ?ルシアは俺の仲間だって。仲間を守るのは当然のことだ」
望はルシアの頭を撫でる。その時、あの男が望たちの元にやってきた。
「見つけたぞォォ!!」
急な大声に驚き、声がした方を振り返る。すると、そこには髪をボサボサにしたデジカが立っていた。デジカはずっと望を睨んでおり、その手にはナイフが握られている。
「みんな、俺の後ろに」
望は全員を自分の後ろに下がらせる。デジカの狙いが自分だと思っての対処だろう。
「ルシアは……俺のモノなんだ……。そレを……そレヲ貴様ガ………!」
明らかにデジカの様子がおかしい。言葉がカタコトなのに加え、足取りもおぼつかない。
「死ネェェェェ!!」
デジカが手のナイフを振り上げて走り出した。狙いはもちろん望だ。
「天斬流無刀 風車」
望はデジカのナイフを持った手を掴み、勢いよく下に下げた。すると、デジカはその場で勢いよく回転して地面に叩きつけられた。
そして、望はすぐにデジカの腕を固めて身動きが取れないようにする。
「観念しろ。お前は一線を越えたんだ。騒ぎを聞きつけた騎士団に突き出してやるよ」
望がそう告げると、デジカが暴れ出した。しかし、デジカは商人。力では圧倒的に望の方が勝っている。だから、余裕で抑え込めると思ったのだが……。
(なんだ、こいつの異常な力は……!?)
望は全力でデジカを抑えている。だが、デジカはその力で望の拘束を外しかけているのだ。
「ガァァァァァァァァァ!!!」
デジカが耳障りな奇声を上げた時に、とうとう望の拘束が外れた。そして、デジカの顔を見た時に望はまた驚く。なぜなら、デジカがまるで魔物のように変化していたからだ。
「グギャァァァァ!!」
デジカは雄叫びを上げながら、鋭くなった自身の爪で望に切りかかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
時は遡って、帝国武闘祭の数日前の夜のこと。
「デジカ殿、招待選手の準備は整いましたか?」
「ああ、こいつで頼む」
「なるほど、『無敵の傭兵』のバン=シークですか……」
「なんだ?何か文句でもあるのか?」
「いえ。それでは手筈通りに進めさせていただきます」
黒ずくめの男はそう言って帰ろうとする。だが、何か思い出したのか、「あ」という声と共に振り返った。
「デジカ殿。これをあなたに差し上げます」
「なんだ、これは?」
「精神安定剤でございます。デジカ殿の顔色が良くないので、気分が優れないのかと思いまして」
黒ずくめの男が言う通り、デジカは昨日の一件からイライラが収まらなかった。それを当てられてデジカは驚くが、当てられたからこそ素直にその薬を貰うことにした。
「すまんな。お前の言う通り、あの件以来気分が優れないんだ。有り難くいただいておこう」
「いえいえ、お気になさらず。その薬は少し効果が強いので、一日一錠ずつお飲みください。もし、その薬でもダメだった場合はこちらを」
黒ずくめの男は懐から更に薬を取り出す。
「こちらは更に強力なものとなっておりますので、精神が乱れた時に飲んでいただければきっと楽になれますよ。ただし、最初に渡した薬を飲み切ってから服用するようにしてください」
「あ、ああ、分かった」
「では、私はこれで失礼します」
そうして黒ずくめの男はその場から消え去った。後に残されたデジカは早速貰った薬を一錠飲む。その薬はちょうど武闘祭の一日前に無くなり、後で貰った薬を武闘祭当日に飲むように調整されていた。
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