前夜祭のパレード
昨日は急用で投稿できなくてすみません!お詫びでこの話の後にSSを一つ投稿するので、よかったら見てください。
それから三日間は帝都を散策したり、祭りのために建てられた屋台やイベントブースを見て回ったりした。この世界特有の屋台もあれば、射的やヨーヨーすくいなどの地球のお祭りで見る屋台もあった。おそらく、何年も前に召喚されたという地球人が流行らせたのだろう。
そして、今日は帝国武闘祭の前夜祭の日だ。特別な催し物として魔法使いたちによるパレードが行われるらしい。
「たしかパレードって昼と夜の二回あるんだよな?」
「そうよ。どうする?お昼も特にすることないし、見に行ってみる?」
当初の予定では、望たちは夜にパレードを見に行こうとしていた。しかし、この三日間で行きたいところはすべて行ってしまったため、この日は暇になってしまったのだ。
「そうだな。一日で二回やるってことは少し内容も変えてきそうだし、両方見てみるのもアリか」
「私も見てみたいです!」
ルシアも賛成したので、望たちは昼のパレードへ行くことにした。
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帝都内の大通りでパレードは行われる。今までその場所に軒を連ねていた屋台も、パレードの時間になると営業を中止していた。
「もう少しで始まるな」
望たちは大通りの真ん中あたりでパレードが始まるのを待っていた。周りには沢山の人がおり、皆パレードを待ち侘びているようだった。
「すごい盛り上がりだな……」
「パレードをする魔法使いたちは色々な国で活動する、結構有名な人達らしいわよ?しかも、全員この帝国出身なんですって」
「ああ、道理で盛り上がる訳だ」
パレードをする魔法使いたちはいわゆるサーカス集団のような人達らしく、世界中を回って公演を行っているみたいだ。
「すごいわよね。世界中を回ってるなんて」
「俺らも似たような感じじゃないか?」
「まあ、そうなんだけど……」
その時、ティアナが後ろから声をかけられた。
「お、そこの君!可愛いねぇ。今から俺とお茶しない?」
白いウエスタンハットを被り、咥えタバコをした男性がティアナをお茶に誘う。ただ、周りからすればティアナは望と一緒にいるため、お前隣に男がいる奴によくナンパ出来たなと、思われている。
「いいえ、結構です」
ティアナはハッキリと断る。だが、咥えタバコの男は諦めない。
「ふっ、そんな照れなくていいから。俺がエスコートしてあげるよ!」
「大丈夫です」
今度は顔も見ずに断る。しかし、それでも男は食い下がる。この男、強メンタルすぎる……!
「分かった。お金の心配してるんだ!そんなの気にしなくて良いよ。全部俺が奢るからさッ!」
「何よ!悪かったわね、貧乏で!」
珍しくツインテールにした深紅の髪が、ティアナの怒りに呼応するように逆立つ。その怒りには流石に男もたじろいだようだ。
「お、おい、坊主。お前の知り合いの子、全然靡かないんだけど」
「俺に聞くなよ。というか、あんたは誰なんだよ」
男は望にそう聞かれたので、咥えたタバコをふかしながら自己紹介をした。
「俺はネイスだ。よろしくな、坊主」
「はぁ、どうも」
「おいおい、俺にだけ自己紹介させて自分はしないのか?」
別に誰かと聞いたのは名前を教えてほしかったから聞いたのではないのだが、そう言われてしまうと自己紹介しなくてはいけなくなってしまう。
「俺は望だ。あと、いい歳してナンパはやめた方がいいぞ」
「ふん、分かってねえな。この歳だからこそナンパはするもんなんだよ。お前みたいな若造がナンパしても意味ねえってことだ」
ネイスはそう言って望をデコピンする。
「痛ッ」
「おっと、もうこんな時間か。じゃ、俺は行くぜ。また会おうな、嬢ちゃん、坊主」
左腕につけている時計を見ると、ネイスはそのままどこかへ行ってしまった。一体何をしに来たのだろうか。
「何だったんだ……」
「人のことを貧乏呼ばわりするなんて、きっとロクな奴じゃないわよ」
ティアナは腕を組みながらそう言う。貧乏という自覚があるから余計怒っているのだろう。
「まあまあ、お二人とも。もうすぐでパレードが始まりますよ……あっ、始まったみたいです!」
パレードが始まる場所から大きな歓声が聞こえてきた。先頭の魔法使いたちが出てきたのだろう。
『みなさーん、今日はお集まりいただきありがとうございまーーす!!本日は昼と夜の二回、公演をやらさせていただきます。どっちも見に来てくれた皆さんが楽しめるように精一杯頑張りますので、応援どうぞよろしくお願いします!!』
一番最初に出てきた魔法使いの声が望たちの元までしっかりと聞こえてくる。おそらく何かの魔法を使っているのだろう。
「今の声がリーダーのラバールさんです。ラバールさんが呼びかけて今のメンバーが集まったらしいですよ」
ルシアが豆知識を教えてくれる。それに頷きながら、望たちは向かってくる魔法使いたちの方を見た。
「おぉ、ここからでも結構見えるな」
「色んな光が弾けて綺麗ね」
魔法使いたちはネイスを先頭に魔法で様々な演出をしながら歩いていく。上空に炎の輪っかや噴水を作り出し、さらには色とりどりの光を弾けさせて花火のような演出を行う。
「シェーネ、見えるか?」
「見える、とても綺麗」
望たちは最前列にいるので、背が小さなシェーネでも魔法の演出を見ることができている。
そして、とうとう先頭のネイスが望たちの目の前に来た。その間もネイスはずっと光魔法を発動し続けている。どうやらネイスの魔力量は多いみたいだ。
すると、ネイスはチラッと望の方を見た。それはほんの一瞬の出来事だったが、望はたしかに自分が見られていると感じた。
(俺を見た……?ただの偶然か……いや、あれは確実に意図を持って俺を見ていた。だが、一体なぜ……)
望がもう一度ネイスを見た時、ネイスはすでに先へと進んでいた。そのためもう一度試すことはできないが、きっとまた会えるだろうと思い、今はパレードに集中することにした。
それからパレードは滞りなく進み、昼の部は何の問題も起こることなく終わった。パレードを見ていた人達はその内容にとても満足しているようだった。
「いやー、パレードすごかったな」
「ええ、久しぶりにはしゃいじゃったわ」
「私も初めて見ましたけど、とても綺麗でした!これだけ人気が出るのも納得ですね!」
望たちも互いに感想を言い合う。シェーネはみんなの意見を聞きながら、うんうんと頷いていた。
「これは夜の部も楽しみだな」
「また違った景色が見れそうよね」
それから望たちは夜まで時間を潰して夜の部のパレードも見るのだが、その話はまた別の機会に……。
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