冒険者ギルドにて
ホルテンの街に入った望たちはまず宿泊する場所を探す。大通りの宿はなかなか値段が張ったので、裏通りにあった安めの宿に決めてチェックインする。
「はい、じゃあニ部屋での宿泊で一日銀貨三枚になります」
「とりあえず三日分お願いします」
「三日で銀貨九枚ですね。ありがとうございます。お部屋にご案内するので少々お待ちください」
望たちの部屋は二階の端っこの部屋二つだ。そこに荷物を置いて街中へと出発する。
「とりあえず一通り何があるか見て回るか」
まず望たちが向かったのは大通りだ。ここは多くの人が行き交い、たくさんの店が軒を連ねている。
「そうだ。ルシアの服を買うか」
「私のですか?別にこれでも……」
そう言いながらルシアはくるりと回る。本人はそう言うものの、丈が短かったり首のあたりが伸びていたりするので、チラチラと見えてはいけない部分が見えてしまっている。
「うん、買わなきゃダメだな」
「ルシアって意外に大きいのね……」
年下なのに色々と大きいルシアと自分を比べるティアナ。もしかしたら少し大きいかもしれないと落ち込むのは気にしないでおこう。
「あそこの店に行くか」
近くにあったブティックに入る。少し高級感が漂うが、一応見るだけ見てみることにした。
「いらっしゃいませ!」
店員が笑顔で望たちに応対する。望は店員に軽い会釈をしつつ、陳列されている服を見ていく。
(やっぱり高いな……)
並べられている服の値段はどれも金貨が必要だ。中には大金貨が必要なものもある。
「ルシア、どれか気になる服はあるか?」
望は一応ルシアに尋ねる。ルシアはうーんと考えてから答えた。
「他の服も見たいので、他のお店に行ってもいいですか?」
「そうか。じゃあ別の店にも行こうか」
望の心を読んだのか、ルシアは他の店に行きたいと言う。心の中でありがとうございますと言いつつ、望たちはその店を後にした。
次にやってきたのは一般的な値段の服が売られている店だ。ここでルシアは薄緑色の服と茶色いスカートを選んだ。ただ、ここでは着替えられないので、ティアナと一旦宿に戻ることにした。
「俺たちは冒険者ギルドに行くから、着替えたら来てくれ」
「分かったわ」
望はシェーネと一緒に先に冒険者ギルドに行くことにした。一応冒険者ギルドはどの国家にも属さない組織なので、どの場所でも内装は変わらないはずだが、少し気になって見たくなったのだ。
「シェーネも冒険者登録できたらいいんだけどな」
「まだ無理?」
「冒険者ギルドの規定で、十二歳以上じゃないと登録できない決まってるらしいんだ」
シェーネのしっかりとした年齢は分からないのだが、多分十二歳より下だろうということで登録はしてもらえなかったのだ。
そうして通りを歩いていくと、お馴染みの建物を見つけた。木でできた扉を開けて中に入る。
「おぉー、なかなか賑わってるな……」
ざわざわと人の声が色々なところから聞こえてくる。この街自体人が多いということもあって、ギルド内にも人は多いみたいだ。
「クエストでも見に行ってみるか」
「うん」
二人は人が集まっているクエストボードへ行き、クエストの内容を確認してみる。王都のギルドで見た内容のクエストもあれば、一度も見たことがない内容のものもあった。
その時、クエストを見ていた望の後ろから誰かが声をかけてきた。
「おい、なにガキを連れて冒険者ギルドに来てるんだ?ここはガキの遊び場じゃねぇんだぞ?」
派手な鎧を着た図体の大きい男の冒険者がそう話しかけてくる。望は少しイラっとするものの、面倒なことは避けたいので黙ってそこを退いた。
「へっ、最初からそうしてりゃいいんだよ」
男は鼻で笑いながらそう言う。更にイラっとするが、大丈夫、まだ我慢できる。ステーイ、ステーイ。
「あれ、兄さんじゃないっすか!」
「あ?」
男のせいでだいぶイライラしていた望を兄さんと呼ぶ人物が現れた。彼はSランクの冒険者を目指して日々頑張る、新米冒険者のラルツ君だ。彼は王都の冒険者ギルドで、望たちが竜を倒したという報告をした時に居合わせた人物で、竜を倒した望を兄さんと呼び慕っていた。
「ちょ、怖いっすよ兄さん!」
「あー、ラルツか。すまん、ちょっとイライラしててな」
「いえ、分かってますよ兄さん。俺は一部始終を見てましたからね」
ラルツはうんうんと頷く。どうやら男とのやり取りを見ていたらしい。
「俺に任せてください!」
そう言って大きくサムズアップすると、ラルツは男の方に歩いていった。
「ちょ、ちょっと待て、ラルツ!」
なんだか嫌な予感がした望はラルツを止めようとする。しかし、ラルツは全く聞かずに逆に望を馬鹿にした男を呼び止めた。
「おい、そこのお前!」
「あ、なんだ?俺様に何か用か?」
「お前は誰にあんな口を聞いたか分かっているのか?兄さん、いや望さんは竜を倒したお方なんだぞ!」
言ったよ、こいつ。と言わんばかりに望は顔に手を当てて項垂れる。望は分かっていた。こんな状況下で竜のことを言ったって誰も信じないことに。
「ギャハハハハハ!こいつは傑作だな!そいつが竜を倒しただぁ?無理に決まってんだろ!」
「そ、そんなことはない!兄さんはアリシア王国で竜を討伐したんだ!冒険者ギルドもそれを確認して認めたから本当なんだよ!」
「じゃあ聞いてみようじゃねえか。おい、受付の姉ちゃん!アリシア王国で竜が討伐されたって話は本当なのか?」
男はニヤニヤしながら受付嬢に聞く。しかし、返答は男が想像していたものとは違っていた。
「は、はい。そう聞いておりますが……」
「は?」
受付嬢があっさりと認めたことに男は驚く。それと同時に、それまであり得ないと思っていた可能性が浮上してきた。
「ど、どうせ別の奴の話だろ!お前じゃない、もっとすごい奴の……」
「彼だよ。竜を討伐したのは」
そこに追い討ちをかけるようにある人物が登場した。その人は望もよく知っている女性だ。
「フィリさん!」
「久しぶりね、望くん」
その人物とは、王都の冒険者ギルドのギルドマスター、フィリ=クローシアだった。
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