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孤高の再現魔法使い  作者: 潮騒
第一章
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国王アレクサンドラ=アシリア



 謁見の間は白い柱が何本も立ち、扉の前にいた騎士が端の方にずらっと並んでいた。そして扉の反対側、謁見の間の奥に真っ赤なマントを羽織り王冠を被った国王がいた。


「さあ、参りましょう」


 最後に入ってきたルヴェリアが先導して国王の前まで進む。そして、敷かれているレッドカーペットが切れる寸前まで行くと、そこで跪いた。宗治たちもルヴェリアに倣って跪く。


「よくぞ参った、異世界の勇者たちよ。儂はアシリア王国の国王アレクサンドラ=アシリアだ。我らアシリア王国は諸君ら異世界の勇者を歓迎しよう」


 国王アレクサンドラの言葉とともに隣にいる王女らしき人や周りの騎士たちが一斉に拍手をする。そして、拍手が止むとルヴェリアがアレクサンドラに発言をした。


「勇者の皆様は一様に我々の世界を守ってくださると仰ってくださいました。そして、我らアーストライト大神殿の神官もそのお手伝いをさせていただきます。陛下には勇者の皆様の戦闘面と知識面においての教育をお願いしたいのです」


 ルヴェリアの提言にアレクサンドラは大きく頷いて答えた。


「もちろんだ。我々は諸君らに必要なものを全て揃えると約束しよう。教育に関しては、一流の者を充てさせる。寝床は王城内の空室を使っていただいて構わん」


 アレクサンドラは近くにいた宰相を呼び、宗治たちを空室に案内するように言う。


「勇者の皆様、今からお部屋へ案内いたします。私についてきてくだされ」


 宗治はチラッとルヴェリアの方を向くと、ルヴェリアは宗治に向かって一つ頷いた。それを見て、宗治は宰相の後ろを追った。


「みんな、行こう」


 宗治の一言でクラスメイトたちは立ち上がり、謁見の間を後にする。





「こちらが一帯が皆様の部屋になります。場所はどこでもお好きなところをお選びください。何か必要なものや気になることがあれば、給仕の者に言ってください」


 宰相は一礼すると、その場を立ち去った。クラスメイトたちはそれぞれ仲の良い人と近い部屋を選んで入る。奈緒はもちろん紗夜と隣同士だ。二人は約束をしてそれぞれの部屋に入る。


「じゃあ後で部屋に行くね」

「うん、待ってるよ」


 宗治は同じバスケ部で仲の良い柿谷(かきたに)幸治(こうじ)と隣の部屋になり、宗治の部屋で少し雑談をしていた。


「なんか改めて考えると、俺らすごい経験してるよな」

「急にどうしたんだ、幸治」

「いや、なんか最初はワクワクしてたんだけどさ。こうやって落ち着いて考えてみると、普通の人はこんな経験しないんだよなって思って」


 普段はおちゃらけている幸治が珍しく色々と考えているのを知って、宗治は少し驚く。


「それにさ、ここに来るまでにいろんな村とか街とか通ってきたじゃん。そこで働いている人とか遊んでる子供とか見るとさ、やっぱり俺たちが救わなきゃって感じたんだよ」


 幸治の言葉を聞いた後、宗治は少し微笑み幸治の肩を叩いた。


「お前って本当こういう時はしっかりしてるよな」

「な、心外だな!俺はいつでもちゃんとしてるっつーの!」

「ちゃんとふざけてるの間違いだろ?」

「うるせぇ!」


 いつものようなやり取りをするが、内心では幸治の考えを聞いて世界を救うという大役を務める勇気をもらった宗治だった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 その日の夜、奈緒は紗夜の部屋に行っていた。まだまだ話したいことがあったからだ。


「なんかまだ夢なんじゃないかって思うよね。こんなお城にいるのも、そもそも異世界に来たってことも」

「私たちにとって魔法はファンタジーの中のものだったから、そう思うのも仕方ないでしょ」

「そうだよね〜。そういえばさ、望くんってどうしてるんだろう……」


 奈緒は物憂げな表情でそう呟く。それは一人で出ていった望を心配しての言葉であり、紗夜もそのことを理解していた。


「天道くんなら頭も良いし、きっと大丈夫だよ。それでも気になるんだったら、強くなってから探せばいいよ。ここの人たちが手伝ってくれるみたいだし」

「うん、私強くなるよ。それで望くんを探す。あ、もちろん世界を救うことも忘れてないけどね」


 奈緒が笑うと、紗夜も少し微笑む。二人はその後も話を続けるのだった。









 他の部屋でも奈緒たちと同じように話をしている所があった。この部屋はその一つである。


「あーあ、なんだよ新山のやつ。剣魔法なんていう主人公みたいな魔法持ちやがって」

「お前だって他の奴とは違う魔法なんだろ?じゃあいいじゃねぇか」

「いやいや、糸魔法なんて地味すぎんだろ。もっとこうカッコいいやつがいいんだよな」

「まあ、そこら辺は運みたいなもんだろ?もうどうしようもねぇんだし、切り替えたほうがいいぞ」


 男子生徒はうーんと考える。納得がいきそうでいかないようだ。


「まあ、そうなんだけどよぉ……」

「それに、糸魔法だって使ってみれば強いかもしれねえじゃねぇか。使う前から決めつけんのは良くないだろ」

「そうか……そうだよな。明日には魔法を使った特訓だがあるみたいだし、ちょっと頑張ってみるか」


 彼らはそうやって自身の魔法について語り合う。しかし、彼らは知らなかった。この時、何気なく話していたことが現実になるなんて。




もし面白いと思っていただけたら、評価、ブクマなどなどよろしくお願いします。作者が家を掃除します。

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