天空竜討伐戦③
「来い、雷」
望がそう呟くと、クラウディスの上空から大きな雷が落ちる。それは直撃するものの、あまり効いてないみたいだった。
「それなら……」
そうして別の再現魔法を発動しようとした時、クラウディスが雄叫びをあげて突っ込んできた。
「避けろッ!!」
その叫びでティアナとシェーネはその場を離れる。そして、望は剣を構えた。
「天斬流五の型 旋空円月」
向かってくるクラウディスに対し、望は剣を上段に構える。そして、その場で回転しながら跳び上がり、突進してくるクラウディスの背を切り裂いた。
――キシャァァァァァァァァァァ!
クラウディスは大きく叫んで、また上空へ戻った。
「逃がさないぞ」
望はクラウディスに手を翳すと、再現魔法を発動した。
「再現魔法 マグマ」
クラウディスの頭上から赤く煮えたぎったマグマが降り注ぐ。マグマがクラウディスにかかると、シューという音とともにクラウディスの皮膚が焼けた。
――シャァァァァァァァァァ!!!
(うまくいったみたいだな……)
望は昨日、再現魔法の射程について考えていた。今までは割と自分に近い場所で再現していたので気づかなかったが、実際どこまでなら再現したものを出現させられるか試していなかったのだ。
そうして実験をしてみると、どうやら再現魔法は自分が見える範囲内ならどこにでも再現したものを出せるようなのだ。要するに、視界が開けている場所なら数百メートル先でも問題なく出せたのである。
だから、今回もクラウディスを少し遠くから見ることで、頭上にマグマを出現させることができた。
「『火焔双剣』!」
そこにティアナが追撃を仕掛ける。二本の炎の剣がクラウディスの腹に突き刺さり爆ぜた。
「『蒼氷扇風』」
シェーネの氷吹雪がクラウディスの体を所々凍りつかせる。急な温度変化にクラウディスは悶えているようで、苦しそうな声があたりに響き渡る。
「再現魔法 海水」
クラウディスの頭上から大量の海水が流れる。望が切った傷に海水が染みて痛いようだ。だが、望が海水を浴びせた理由はそれではない。
「再現魔法 落雷」
先ほどと同じようにクラウディスに雷が落ちる。クラウディスは更に大きな叫びを上げて暴れ倒した。今度は雷が効いているらしい。
「やっぱり電気を通すには塩水だな」
――ギュォォォォォォォォ!!
望は自信満々に言う。その時、連続攻撃でだいぶボロボロになったクラウディスが再び風のブレスを撃ってきた。
「それはもう見てるんだよ!」
望が右手を風のブレスに向けると、クラウディスの風のブレスが望の右手から撃たれた。二つのブレスは拮抗し相殺した。
「畳みかけるぞ!」
「分かったわ!」
望の言葉にティアナとシェーネは自分が撃てる最大級の魔法を撃とうと準備する。それが分かっているかのように、クラウディスは竜巻を起こして邪魔をしてきた。
「『聖護結界』」
望は『聖護結界』で竜巻を防ぐ。その間に、ティアナとシェーネは魔法の発動準備を済ませた。
「いつでもいけるわ!」
『聖護結界』は内側から撃った魔法も通さないので、ティアナの言葉を聞いて望は『聖護結界』を解除した。
「『炎剣乱舞』!」
「『原氷世界』」
ティアナが無数の炎の剣を出して攻撃し、シェーネは周りの空気ごとクラウディスを凍らせる。正反対な二人の攻撃はにクラウディスは旋風を纏うことで対応した。
「またあの風が邪魔を……」
「多分あの風は魔力を多く消費するんだろう。だから、さっきまではあまり使ってなかったけど……とうとうなりふり構わなくなってきたな」
望の分析にティアナは感心する。だが、すぐに難しい顔になる。
「それじゃあ魔法はあまり効果がないってことよね。どうしようかしら」
「俺が斬る。物理攻撃なら通るかもしれないからな」
「ちょ、危険よ!私たちの魔法で怯ませることはできないし、ブレスを食らったら『聖護結界』でも防げないのよ!?」
ティアナの言うことは最もである。何の策も無いのなら、アゼロの二の舞になりかねない。
「一つ考えがある。ぶっつけ本番だからうまくいくかは分からないけど」
そう言って剣を構える望にティアナは何か言おうとするが、グッと堪えて望の背中をバシッと叩いた。
「望なら出来るわ。だから……自分を信じて」
ティアナの言葉に望はニヤリと笑って答えた。
「ああ、任せろ」
望は一気に跳び上がる。クラウディスめがけて一直線に。それを黙って見ているわけでもなく、クラウディスはブレスを放った。これでは、さっきと何ら変わらない状況だが……。
「『守天結界』」
その時、望が勢いよく更に上に跳び上がった。風のブレスは望がさっきまでいた場所を通過する。
(よし、何とか出来た……!)
今、望が発動したのは『守天結界』という物理攻撃を防ぐ結界魔法だ。この結界の特性を活かして、空中に即席の足場を作ってブレスを躱したのだ。
クラウディスは首を上にあげて望にブレスを当てようとする。しかし、またも望は足場を作ってその場から逃げた。
そうして、ブレスを避け続けた望は徐々にクラウディスに近づいていく。クラウディスはブレス攻撃をやめて、旋風を飛ばす攻撃を放っていた。
「くっ……」
さすがにぶっつけ本番なので旋風を全て回避することは出来ずに体を掠めていく。それでも何とかそばまで行き、クラウディスに斬撃を入れていく。望の予想通り、物理攻撃は有効のようだ。
「天斬流一の型 火雷天閃」
時々、天斬流の技を挟んでクラウディスにダメージを与えていく。クラウディスも満身創痍のようで、動きの質が落ちており、望は一瞬の隙を見逃さなかった。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!」
クラウディスの首に望の会心の一撃が入る。そして、怯んだ隙にもう一度斬撃を入れようと剣を振った瞬間、クラウディスが放った旋風に剣がぶつかり、剣が真っ二つに折れた。
「な……ッ!?」
剣が折れて驚く望の元に旋風が飛んでくるが、『守天結界』の足場で上に跳んで躱す。そして再現魔法で剣を作り、上空からクラウディスめがけて突っ込んだ。
「天斬流四の型 双炎焼刃」
重力により威力が増大した剣でクラウディスの首を斬り、さらに足場を作って踏ん張り燕返しの要領で剣を切り返して下から首を斬り裂いた。
――ギャァァァァ…………
クラウディスは力の無い声を上げて墜落する。その巨体は下にあった木々をへし折りながら地面に着地した。
それを見届けると、望も即席の足場を使って地上に降りた。そしてぴくりとも動かないクラウディスの死体を見て一安心する。
「倒せたみたいだな……」
「へぇ、君がクラウディスを倒したのか。なかなかやるみたいだね」
呟く望に誰かが声をかけた。望が声の方に顔を向けると、薄緑色の髪の美形な男性がすぐ後ろにいた。
「うわぁ!」
望は驚いて後ろに飛び退く。男性はニコニコしながら自己紹介をした。
「ああ、驚かせてごめんね。僕はクラリア。一応、天空神なんだけど……まあ、君は知らないよね。異世界の勇者くん」
(ん?天空神って……神?ってか、なんで勇者って……)
クラリアの情報過多な自己紹介に望は一瞬思考が停止する。そんな中でも、クラリアは依然としてニコニコと笑っているのだった。
個人的にはアゼロをもう少し活躍させたかったのですが、ちょっと再現魔法が強すぎて出来ませんでした。なので、いずれアゼロがメインのお話をいずれ書くかもしれません。
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