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第5節「ビジパフォ問題がみせた悪魔の姿」

 バカープという言葉を調べてみてよく分かったことがあった。それはその流派にもよるが、どうやら「マナーの悪いカープファン」という意味が大筋らしい。一方で単にカープや広島に強く嫌悪感を抱いている人たちがカープの悪口を書き記すのに使用していることも分かった。また「マナーの悪いカープファン」って意味ではカープファンがその悪態をついた同胞に対して使うこともしばしばある模様だ。まったく、とんだ凡庸性のある言葉だなと感心するばかりである(笑)



 さて、今回の一節のタイトルにある「ビジパフォ問題」であるが、これこそが他球団ファンからのヘイトを集めるキッカケとなったことを本エッセイの筆者である私は全く以て疑わない。そこをまず記すことから始めよう。



 野球ファンの間で俗に知られている「ビジパフォ問題」についてだが、これはマツダスタジアムに設置されたビジターパフォーマンス席のシステム変更を巡る問題であると軽く説明しておこう。



 マツダスタジアムはその地理的な構造上、レフト側の席が大きく削られた形となっている。球場の真横に山陽本線という電車の線路が通っている為に仕方ない仕様なのだ。野球チームのビジター側は基本的にレフトスタンドで私設応援団が鳴り物を鳴らす等して応援するのが普通の光景だ。しかし此処でそれはできない。そこで3塁側ファウルグランド付近にてビジターの私設応援団が応援可能な席を設置することにした。それが「ビジターパフォーマンス席」というスペースだ。



 しかし問題はこの席の設置から間もなくして起きた。まずこの席、レフト側が見えないのである。レフト側に飛んだ打球は勿論、レフトを護る選手すらも目に入らない。



 さらに広島はセ・リーグの中でも首都圏から最も離れたチームだとされている。広島駅がすぐ間近にあるとはいえ、東京や横浜在住の彼らがスタジアム席に来るまでにかなりの金銭、もしくはかなりの時間を要する事が遠征に求められるのだ。そしてはるばる応援しにやってきたと思ったらレフトが見切れて観られないのだ。こんな状況で応援しているチームが負けていたら、酷く萎えてしまうのも納得だろう。



 そしてそんな影響を受けて、中日戦、横浜戦、ヤクルト戦ではガラ空きのビジターパフォーマンス席が目立つ日があった。そしてこの現象には裏があった。



 問題はここに留まらない。



 あるネット週刊誌の記事が全国に広まった。それはビジターパフォーマンス席にて女性の観客がヤクルトファンの人達に氷入りの液体のような物をばら撒いたと言うのだ。当然ヤクルトファンと彼女は口論に。警備員の介入で彼女は聴取を受けるが、その後カープ側の席に近寄ってカープが得点をした後にハイタッチをしている姿を目撃された。そしてその光景をヤクルトファンである週刊誌の記者なる男性が間近で目撃したのだ。彼はすぐにその事実をツイッターでツイート。多くの賛否を集めつつも凄まじい反響を呼び、彼が書いた記事が更にまた話題となった――



 ここでこの件に関して追記するがこの日、ビジターパフォーマンス席はカープファンとヤクルトファンで左右対称に分割するというシステムを導入していた。この女性はヤクルト側の席に座っていたらしいが、特にユニフォームは着てない様子だったという。また警備員は僅か1名の配置。まったく笑えない配置だ。



 この問題はこの件から野球ファンの間で血気盛んに議論されることとなった。そもそも空席が目立っていた時期だが、あのときにビジターパフォーマンス席のチケットをなんとカープファンが購入。カープのユニフォーム着用が禁止されているビジターパフォーマンス席には座らず、そのままコンコースまでなだれ込むなんていう現象が起きていたというのだ。



 カープファンの勢いは当時凄かったものだが、それにしても筆者は疑問に思う。私が少年時代あるいは警備員をやっていた時にこんなことがあっただろうかと。当時は広島市民球場。マツダスタジアムよりもアクセスは悪くて、球場の規模もだいぶ控えめなモノだった。それでも他球団ファンの事を大切にしていた気がするのだ。健全な経営を志すのは悪いことではないが、それは試合で切磋琢磨する相手チームに対しても敬意を払ってこそではないだろうか。



 ある中日ファンは試合中に大声で言い放った。「原爆落ちろ! 広島!」と。



 私たち野球ファンは忘れてはならないことがある。



 競う相手がいるからこそ野球はできるのだ。



 そこに勝ち負けがあるのは必然だ。勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。



 それでも忘れてはいけないものがある。




 どんなスポーツも競う相手が共にいるから成り立つ――




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