第3節「FA流失が止まらない市民球団?」
私が中学生の時に世間とりわけ私の周囲をざわつかせるニュースが躍り出た。カープでホームラン王に何度かなった江藤選手のFA行使、そして巨人入りだ。当時はまだインターネットが普及してなく、テレビや新聞でその話題がセンセーショナルに出されて周囲がワイワイしていた記憶がある。
当時の私はカープが弱かったのもあって、そっちよりか音楽鑑賞やゲーム等の趣味に没頭する事が多かった。だからそんなにショックを受けてなかったが、それでも周囲と同じく「江藤、裏切り者」「巨人、お金で選手を奪ってくチーム」というイメージが脳裏にこびり付いた。周囲の大人たちが口を揃えてそんな事を話しているのだから仕方がなかったと思う。
しかしこの話、本来は横浜ベイスターズが彼の取得に動いており、読売巨人はどちらかと言うと消極的だったという流れだった事があまり話題にされてない。最終的に長嶋茂雄さんが感動的なアプローチをして彼の心が動いたなんていう美談めいた話ばかりが残っている。
それから金本知憲選手、新井貴浩選手、大竹寛選手、そして最近だと3連覇の直後に宣言して巨人入りした丸佳浩選手が記憶に新しいところだ。またこれらの選手に加え、メジャーに挑戦した黒田博樹選手やマエケンこと前田健太選手も含めFA権行使した選手は長いカープの歴史でわずか9名だ。
それなのに何故「FAで獲られるチーム」だと言われ続けたのだろうか?
それはまず広島東洋カープというチームがFAでの選手獲得に乗りださないという経営方針を持っているからだ。ただしこれを破ったケースが一度あるにはあったが(でも結局獲得はできなかった)。
そしてこれぞといった大物選手をFAで流失しているイメージが強いのもその一旦を担っていると言っていいだろう。先ほどその名を挙げた選手をざっとみてみれば、当時の強力な4番打者やエースといったまさにその時の「主力選手」といった存在が悉くカープより高い報酬をくれる球団に獲られているのだ。FA宣言し、そして行使したとある選手は涙を流しながらもこうコメントした。「辛いです」「カープが大好きだから」と。「だったら、何でFA権行使なんかをするんじゃい!」と筆者は当時激しく憤ったものだが、彼が何かに突き動かされ行動に出たように、ここぞといったところで選手を手放してしまう脆さをこの歴史から感じずにはいられない。
しかし昨年一昨年とFA流失が続々とでるだろうと噂されたカープだったが、その選手のほとんどが「カープが大好きだから」と言って残留を決断している。かつてあった「選手が獲られる球団」のイメージはかなり払拭できた感がある。従ってこのイメージからカープをバカープと揶揄する人はそんなにいないと私は少なくとも踏んでいるのだ。そもそもお金があるなしで人や人が作りだすものを軽蔑するのは寂しい人間のすることである。もはや相手にするまでもない。
ではバカープってどういうところから広く言われ始めたのか?
この話はまだ続く。まだこの話に付き合って欲しい。
そのうえで抑えて欲しいポイントが1つある。この問題はカープが弱くなったからではない。カープという文化が強くなってきたからこその問題なのである――
A・)江藤智選手のFA宣言&行使の一件に関しては今でも定かになってないところが多く、そもそも巨人入りすることが本人の願望であったこと&読売巨人軍もなんやかんや最初からそのつもりだった説の話も強くあったりするので、これは本作で説明したことが事実であるとは断定しません。