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71.西部広場で

 

 少し休んだ後、今後のことについてルーンと話す。


「やっかいなことに巻き込まれたな。この後どうしようか」

「お兄ちゃんは帝都に用事があるの?」

「いや、特に無い」

「じゃあミラをお医者さんに診せて、一旦宿に泊まる?」

「そうだな、まずは部屋を取ろう。そんで夜にゆっくり考えよう」

「私も、お兄ちゃんの腕の中でゆっくり考える!」


 方針が決まり、俺は始末した元兵士三人の所持品を漁る。

 帝都には戻らずどこか別の国に行くつもりだったのか、所持金や食料など、そこそこの量があった。


 カネと食い物と...念の為これも回収しておくか。


 ミラリオを眠らせた、薬品が染み込んでいる布も回収しておいた。

 俺は荷物をルーンに渡し、ミラリオを馬に乗せて、その後ろに座る。

 別の馬には、ルーンと荷物が乗っている。

 2頭の馬は、ゆっくりと歩き出した。


 そういえばあれは40歳ぐらいの頃だったか、オクタル諸島の森が深い島で、俺達は馬に乗って森の中を回っていたな。


 リターニュ公国の首都で受託した依頼の為だったが、結局すぐに仕事を終わらせて、馬に乗って島中を探検していた。

 もちろん森の中で、何度もルーンと愛し合ったのは言うまでもない。


 あの時は恥じらうルーンが可愛くて、何かとお願いしてたなぁ。


「...お兄ちゃん、エッチなこと考えてる?」


 すぐ隣にぴったり並んで馬を歩かせるルーンが話し掛けてきた。


「おい、なんでわかったんだ。...いや別にやましいことじゃないぞ。むしろお前がどれだけ可愛いか再認識してたところだ」

「もー、なに考えてたの?」

「ほら、俺が40歳ぐらいの頃に、依頼を受けてオクタル諸島の森の島に行っただろ。あの時に二人で馬に乗ったの覚えてるか?」

「あー!私がおトイレ行きたくなる度に、お兄ちゃんがじっくり観察してた!あの森のこと!!」

「...なんでそこだけピンポイントに覚えてるんだよ」

「だってお兄ちゃんってば、興味しんしんでとっても可愛いかったもん。当時は私がお家のおトイレでするとこを毎日見てたのに、お兄ちゃんも私と同じように、いつも新鮮な気持ちでドキドキしてたんだよね?」

「ああ、それが『開花』の力の一部だな」

「あっ...もうっ、思い出したらドキドキしてきちゃったよ、お兄ちゃん...」


 当時の光景を思い出しているのか、ルーンの顔がだんだん赤くなっていた。


「あの時はお外だからお兄ちゃんはいつもより興奮してたよ...。お兄ちゃんは私のおトイレの度にムラムラしちゃって、私のおなかにミルクを飲ませてくれたんだよねっ」

「それは半分お前がねだったからだろーが...。それもどっちも飲ませてって...」

「もー、お兄ちゃんだってはっきり覚えてるじゃない。お兄ちゃんったらいっぱい出すんだから...私のおなかが、こぼさないようにゴクゴク飲んでたよ!」

「...ルーンのおなかは何て言ってた?」

「甘くて美味しいの、もっと飲ませて!って言ってた」

「...よしっ、ミラが心配だ。医者に行こう」

「もー、お兄ちゃん可愛いんだから」


 馬1頭と三人の遺体をそのままにして、俺達三人は帝都へ向かった。





 辺りが薄暗くなる頃に帝都に辿り着き、馬のまま西門を通過して、帝都西部の広場まで来た。

 西門兵士に医者について聞くと、西部広場に軍医がいるとのことだったので、馬から丁寧にミラリオを降ろし、容態を見てもらった。


 ...そういやこれも見せたほうがいいな。


 例の布を軍医に見せると、話が早かった。

 一時的に眠っているだけらしく、身体に障害などは無いとのこと。

 2~3時間で自然に目覚めるので、安静にしておくように、とのことだった。

 このまま三人で宿に向かおうとした時、俺達に対して警告の声が広場に響いた。


「そこの子供二人!その娘をどこへ連れて行く気だ!!」


 声の方を見れば、斧を持った若干デブの中年男性が俺達を睨んでおり、その男の傍には、いかにも上流階級らしき派手な装いの貴婦人と、お付きの武官が四人居た。

 よく見れば貴婦人の後ろに隠れて、小さい女の子もいる。

 デブのおっさんが続けて俺達に警告する。


「その娘は城で働いている者だ!今すぐ返してもらおう!!」


 また面倒なことになったな...。

 まずこいつは誰なんだよ。


 俺は落ち着いて、丁寧に返事を返した。


「私たちが攫ったわけじゃありません。どっちかというと救助したんですが」


 しかしデブの方は、俺達を一切信用していなかった。


「怪しいな、口だけならなんとでも言える。とりあえずその娘を渡してもらおう。話はそれからだ」


 俺達を誘拐犯扱いで、まともに事情を聞く気が無いとみると、俺は内心ニヤリとして、反論した。

 広場には噴水があり、綺麗な水が循環している。


「渡すわけにはいきませんね。この娘が城でひどい目に遭って逃げ出したかもしれない。いや、そもそも城で働いている者かどうかもわからない。口だけならなんとでも言えますよね」


 アルフとの会話で、ミラリオ城で働いていたことはわかっていたが、自分達を信用してない相手には、相応の態度を取っていた。

 デブは苛立って言葉を返す。


「...なんと礼儀知らずで愚かな小僧だ。いいかよく聞け、その娘はこちらにいらっしゃる、トランロッド卿のご令嬢、ユリメア様お付きのメイドだ」


 はーん、なるほど。

 あの娘がユリメアか。

 となると、あの貴婦人は公爵夫人か伯爵夫人てとこかな。

 で、このデブは部下を連れて護衛している、ちょっと身分の高い軍人か、貴族お抱えの騎士ってとこか。


「理解したならさっさと投降しろ!」


 デブは威圧するように叫ぶ。


 だがまだ、城でひどい目に遭って逃げ出した、という可能性は否定されていない。

 ユリメアはミラよりも年下に見えるが、目つきがキッとして、見るからに生意気そうなガキだな。

 アルフが投げ出すのもやむなしってとこか。


 俺は隣のルーンを見た。意図を込めてルーンの瞳を見た。

 ルーンは俺の目を見返し、俺の手を握った。

 これだけでルーンの意図は伝わった。


 俺のわがままに付き合ってくれるか、さすがは俺の妻だ。


「やむをえん!どうしても渡さないというなら、力づくで取り返すまでだ!」


 デブがまた叫ぶ。

 部下に指示を出そうとするデブを遮って、俺も叫んでいた。

 広場には何事かと、若干の人だかりができていた。


「まあ待てって、おっさん。この娘はもうすぐ目を覚ます、そしたらこの娘から話を聞いて、もしあんたらが信用できるなら、この娘を渡すから保護してくれ。同時に、俺達が攫ったり眠らせたりしていないってことは、この娘の口から聞けるだろ?」

「もうすぐ目を覚ますだと?お前が眠らせていないなら、なぜそんなことがわかる?」

「この医者に診てもらったからだ、疑うなら聞いてみればわかる」

「...アドニス!間違いないか!!」


 アドニスと呼ばれた老年の医師は、丁寧に返事をした。


「はい、間違いございません」


 俺はニヤリとして、続けて畳み掛けた。

 広場はざわざわと、人だかりができていた。


「そもそもこの娘を眠らせたのは、この国の軍人だ。アルフといったか、あんたらの仲間だよ」


 デブはアルフの名前に反応した。


「アルフだと?あいつは今朝がた除名したところだが...」

「俺達はアルフってやつに襲われたんだよ。この国では、元軍人であれば辞めたら何をしてもいいのか?この被害はそっちの不手際が招いたことだろーが」

「ぐっ...」


 アルフの人間性に心当たりがあるのか、何も言い返せないデブを相手に、俺はいい気になってベラベラとまくし立てる。


「とにかく!ほんの少し待てば、この娘から話を聞くだけで解決するんだ。わざわざ争う必要は無いだろ、違うか?」


 それを聞いて、デブは唸って黙り込む。


「ううむ...」


 その時、そこまで黙っていた高貴な婦人が、凛とした声を出した。


「殺して取り返しなさい」


 デブが驚いて返事をする。


「ヴィルシオン様!?しかし...何も殺すことは...。取り押さえれば解決しますので...」

「殺しなさい」


 有無を言わせぬ指示に、デブは諦めたようだった。

 部下に指示を出すデブを見て、俺も諦めたように言い放つ。


「やめとけ。話し合いで解決することだろ。被害が大きくなるぞ!」

「小僧、今日連れているのは自慢の精鋭ばかりだ、せめて楽に逝かせてやろう」


 精鋭と自慢する部下に指示を出し、四人の内の一人が剣を抜いて前に出る。


 バカが...。


 ミラリオをルーンに預けようとしたが、ルーンが真剣な顔で俺に告げた。


「お兄ちゃん、私がやる」

「おいルーン。俺がやるからお前はミラを...」

「私にやらせて」

「...わかった。だが少しでも危ないと思ったら強制的に止めるからな」

「うん...大丈夫だよ、お兄ちゃん」


 俺とルーンのやりとりは、相手には聞こえていない。

 剣を抜いた精鋭らしき兵士が、俺を目掛けて襲って来た。

 俺はあきれた様子で、しかし幼いながらもドスのきいた声で、デブに対して言った、


「おいおっさん。...俺は確かに、警告したからな」


 兵士が俺から5mほどの距離まで近づいた時、ルーンが高速で兵士とすれ違った。

 ピタッと止まった兵士の首から血が噴き出し、そのまま倒れて血だまりの中で息絶えた。

 しんと静まり返った広場で、俺は集まった大勢の人たちに聞こえるように、はっきり言った。


「この兵士は俺達を殺す気で襲って来た。だったら自分が殺されても当然文句は言えないよな、おっさん」


 100年も生きてると肝が据わっており、いけしゃあしゃあと述べる。


「俺達は自分の身を守っただけだ、この返り討ちについては、悪行と言われると筋が通らないぜ。むしろこっちが悪行の被害者だよな」


 デブは驚愕の言葉を発した。


「な、なんということだ...」


 自慢の精鋭である部下が、子供によってあっさり殺される様を目の当たりにし、わなわなと震えている。

 デブの都合などお構いなしに、俺は続ける。


「どうする、まだやるか?ちなみに俺は、今あんたの精鋭を倒したこの娘よりも強いぜ」


 調子に乗って挑発してると、トランロッド卿夫人、ヴィルシオンが苛立った声でデブに命じた。


「四人でかかりなさい!早く!」


 俺も負けじとデブに命じる。


「おいおっさん!あんたも軍人か騎士なら力の差はわかるだろ。こんなことで自慢の部下を失うのか?あんたは戦って死ぬことに躊躇が無いかもしれんが、部下の身になって考えてみたか?」


 尤もらしいセリフが効いたのか、デブがヴィルシオンの前で跪き、首を垂れた。


「ヴィルシオン様。ここは私に任せてもらえないでしょうか。必ずや、責任を取りますので...どうか...!」

「...いいでしょう。ユリメアのメイドを取り返しなさい。方法はあなたに任せるわ」

「はっ!心得ました!」


 それから、話し合いの結果、適当な宿屋で部屋を取り、ミラリオが起きるのを待つことになった。

 デブは城で丁重に迎えると言ってたが、当然却下して無作為に選んだ宿屋にした。

 今、部屋の中にいるのは俺とルーン、眠っているミラリオ、若干デブのおっさん、おっさんの精鋭部下三人、ヴィルシオン、そしてユリメアだった。


 部屋が狭い...。

 さすがにもう無いとは思うが、ここで殺し合いになったらどーすんだこれ。


 やることがなくて、俺を守るように立っているルーンの手を握った。

 何かのサインではなく、意味も無く握ったのだが、意味も無く握ったことも、ルーンは分かっていた。

 もちろん俺もルーンも警戒を解かずに、相手を見張っていた。


 お互いに拮抗状態が10分程続き、漸くミラリオが目を覚ました。




素人が趣味で書いているものですので、何分ご容赦頂きますよう何卒宜しくお願い申し上げます。

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