表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/88

70.帝都の近くで

 

 六人は一旦休憩し、食事を取る。

 おおよその時間は午前10時くらいだろうか。

 食後に大人組を見ると、排泄の為か各々茂みに消えていった。

 まったりした時間を過ごしていると、ルーンが背中に抱きついて囁く。


「お兄ちゃんは、おトイレ行かなくていいのー?」

「1時間ぐらい前にお前の目の前で出しただろ...それも向かい合って見せ合いながら」


 ルーンは頬を赤く染め、悪戯な笑顔になって、上機嫌で俺の肩に小さな顎を乗せている。


「お兄ちゃんの、ちっちゃくてとっても可愛いんだから~。また私が綺麗にしてあげるから、したくなったらいつでも言ってね」


 時が戻っても、ルーンは相変わらず俺の排泄をまじまじと見て

「お兄ちゃんの可愛いー!リターニュ公国で暮らしていた時のとぜんぜん違う!」

「すごーい!お兄ちゃんってこんなに可愛いの持ってたんだ!」

 と、俺のを優しく握りながら、大はしゃぎしていた...。


「可愛さでいうなら俺のより、お前の股のものの方が可愛い...じゃなくて。ミラのことも考えてくれ。なんともいえない表情のミラに対して、どう声を掛けていいのやら困ったんだが」

「ミラちゃんも一緒に誘ってあげたら?」

「...もうちょっと仲良くなったらな」

「もう充分だと思うけど」


 ちょうどその時、話題のミラが恥ずかしげに声を掛けてきた。


「あ、あの...お兄様とルーンは大丈夫ですか?その...おトイレ...」


 およそ100年ほど前なら、察することが出来なかっただろう。

 だが今の俺ならわかっていた。


「ああ、出発前に念の為に行こうと思ってたんだ。ミラも一緒に行くか?その...背中向けてな」

「は、はい!お供します!」


 その可愛い顔を、髪の色と同じ色に染めたミラリオは、元気よく返事した。

 三人で茂みに行き、俺は背中を向けてしゃがみこんだ。

 背後から、ルーンとミラの楽しげな声が聞こえて来た。


 ルーンはミラとうまくやってるな。

 やっぱりルーンがいると有難いな、こういった時でも頼りになる。

 うちの妻に欠点が無いことが誇らしい。


 その後六人は再び出発し、適宜休憩を取りながら、夜まで歩き続けた。

 ...ルーンは俺が排泄する時に同行し、ミラが排泄する時にも同行している。

 ミラのルーンに対する信頼はかなり上昇しており、女の子同士で仲良くなったことに、俺も嬉しかった。



 焚火の周りで眠る際に、ミラがまた恥ずかしそうに聞いてきた。


「あの、お兄様...。手を握って眠っていいですか?」

「もちろんいいよ。おいで」

「はい!」


 ミラの顔がぱあっと明るくなり、嬉しそうな顔で俺の手を両手で握る。

 もう片方の腕には、当然ルーンが抱きついていた。


「おやすみなさい、お兄ちゃん」

「おやすみなさい...お兄様」


 二人の声を聞いて、俺も眠りについた。




 翌日、朝から歩き続け、昼頃にレイドーム帝国の領内を示す関所にたどり着いた。

 関所で話を聞くと、ここから南へ歩けば2時間程で領内の町があるらしい。

 このまま東へ歩けば、夜頃に帝都に着くとのことだった。


 どうするか話し合っていると、帝都方面から3騎の人影が見えた。

 制服を着た男が三人、先頭の男は若干身分が上のようだった。

 三人は馬から降り、関所の兵士に近づくと、兵士は畏まって挨拶をした。


「これはアルフ殿、どうされましたか。本日は軍事演習のはずでは?」

「俺の部隊だけ別で指令が出たんだよ。ところでその人達は?」

「奴隷として売り飛ばされる所を、なんとか逃げて来たそうです。この身なりから間違いないかと」

「ほう...」


 アルフと呼ばれた中年の男は、訝しげに俺達を見る。

 しばらく見回した後、俺達六人に提案してきた。


「どうやら子供が三人いるようだな。俺達が馬に乗せて帝都まで運んでやるがどうだ?」


 その申し出に、関所の兵士が口を挟む。


「アルフ殿、指令が出ているのではないですか?」

「指令はこの関所までの見回りだよ。何も問題は無い」

「そうでしたが、失礼しました」


 俺とルーンは怪しんでいたが、大人組三人はアルフの提案に乗り気だった。


 なんだこいつ、見るからに怪しいぞ。

 本当に軍の関係者か?

 関所の兵士がグルになって、芝居をしているようには見えないが...。


 その時、ミラリオがアルフに話し掛けた。


「あの...ユリメア様を護衛されていた兵士様ですよね?」

「キミは...ユリメア様のお付きのメイドかな」

「はい!」


 そのやりとりを見て、俺は安心する。


 なんだ、本物の軍人か。

 ミラが言うなら間違いないな。


 俺達は申し出を受け、俺とルーンとミラリオの三人だけ、先に馬で帝都へ行くことになった。

 大人組は南の町に行くらしく、ここでお別れとなった。

 馬に乗る前に荷物を大人組に渡し、キースライトを含む鉱石2~3個だけ貰い、馬は帝都へ向けて出発した。




 途中2回休憩を挟み、関所を出発してから3時間程経過した頃、アルフが馬を止めて大きな声で言った。


「もうすぐ帝都だ。馬が痛まないよう、念の為ここでもう1回休憩しておこうか」

「はっ!」

「承知しましたっ!」


 部下二人が返事をする。

 俺は違和感を感じていた。


 え...。もうすぐ着くのになんで休憩を入れるんだ。

 馬が痛むのが心配なら、ここから歩かせればいいじゃん。

 まあいいか。わざわざ帝都の近くに戻ってまで、何かやる理由は無さそうだし。


 俺達三人は地面に腰を下ろし、乗馬の疲れを落としていた。

 道を外れると辺りは森だったが、帝都近くの為か、かなり人の手が入り管理されている森のようだった。

 俺とルーンは、油断はしていなかった。

 だが、想定外のことがあった。


「...お兄様!後ろっ!!」


 ミラリオが突然叫んだ。

 叫んだことによって、俺とルーンの背後に来ていたやつらとは別の奴が動き、ミラリオにも被害が出た。

 俺とルーンは背後の気配に警戒していた為、不意打ちをかわすことが出来たが、ミラリオは兵士によって口に布を押し当てられ、眠らされた。


 しまった、ミラのことを想定しておくべきだった...。


 ミラリオが知っている軍人が、まさか帝都の近くで強引に悪事を働くとは思っていなかった。

 また、仮に襲ってきても、俺達二人には『狂戦士』の能力がある為、それまで第一に考えていたことを果たすには、充分だと思っていた。

 第一に考えていたこととは、当然妻の身の安全である。

 これまで100年程、常にルーンの身を第一に考えて行動していた為、無意識でその行動を取るようになっていた。

 俺はルーンに対して、ルーンは俺に対して、身の危険に対して敏感になっていたが、ミラリオのことについては、ワンテンポ遅れていた。


 敵の不意打ちをかわした瞬時、俺とルーンはアイコンタクトを交わす。


 ...わかってるなルーン、やられたフリだ。


 過去にリターニュ公国で検証した際に、能力を使っている間は、薬品や毒などが著しく効きにくいことは実証されていた。

 8分咲きの時点であの感じだった為、9分咲きの今ならほぼ効かない状態になっていた。


 ルーンの目を見て、意図が伝わっていると確信した俺は、弱弱しいガキを演じる。


「ここは帝都のすぐ傍だぞ!こんなことしたらすぐにバレるぞ!!」


 だが、アルフは簡単にあしらい、部下に激を飛ばした。


「わかったわかった。おいお前ら!大事な商品に傷を付けるなよ。さっさと眠らせろ」

「はい!」

「はい!」


 俺もルーンも、必死に抵抗するフリをしながら能力を発動し、眠らされたフリをして地面に倒れた。

 それを見たアルフはニヤリとして、背を向けて満足そうに言った。


「ずっと耐えて来たクソガキのお守りも今日で終わりだ。ガキ三人とキースライトを売り飛ばせばかなりのカネになる。良い手土産が増えたな」


 なるほど...。

 ユリメアって人の護衛をやっていたが、クビになったか自分から放棄したんだな。


 部下二人はアルフの方を見ており、眠っているはずの俺達に対して、全く警戒していなかった。


「お前らさっさとガキどもを馬に乗せろ」


 アルフがそう言った直後、起き上がっていた俺とルーンは、ほんの一瞬で部下二人の首に爪を突き立てる。


 ザッ!!


 派手に血が噴き出し、二人同時に倒れて動かなくなった。


「...ただのガキだと思ってたが、能力者か?」


 振り向いたアルフは意外と冷静に、だが顔色に焦りを出して、状況を判断していた。


 さすが軍に居ただけのことはあるな。

 だが、この状況にどう対処するのか。


「ルーン、俺が行く。ミラを頼む」

「お兄ちゃん!危ないから二人で!」

「お前は周りを警戒しててくれ。他に敵が潜んでいないとも限らないからな。危なくなったら逃げるぞ!」

「はい...」


 ルーンは心配そうに返事をして、ミラリオの傍まで移動する。

 サーベルを抜いたアルフに対して、俺は軽く地面を蹴って正面から飛び込んだ。

 9分咲きの力はかなり強化されており、軽く力を入れただけでも、結構な速度が出ていた。

 太く大きく、そして硬くなった鋭い爪を突き刺すように振るう。


 カンッ!と金属音が響いた。


「ぐっ...!なんて速さだ...」


 辛うじてサーベルで防いだアルフだが、手持ちの武器は無残に折れて、大きな破片が地面に落ちる。

 歩幅4歩分ぐらい後ろに飛び、俺はアルフに向かって言い放った。


「終わりだ」


 敵が別の武器や道具を持っていないか、何か能力を使って来ないか、と警戒して、爪攻撃の勢いを殺された際に、あえて続けて攻撃せずに、余裕を見せて探りを入れていた。

 アルフは焦りとイラつきで、冷静でいられないようだった。


「ガキが、舐めるなっ!」


 足元に落ちたサーベルの破片を取り、後ろに飛びのく。

 そして、破片と折れた刀身を合わせ、アルフは能力を発動させた。


 こいつ...やはり能力者だったのか。


 折れた刀身と破片が、つなぎ目を残さず綺麗に癒着し、元のサーベルの姿に戻った。


 ...どんな能力か分かった以上、たいした脅威ではないな。

 他に何も持って無さそうだし、俺の体力もあんまり無いし...終わらせるか。


 俺はもう一度アルフに飛びかかり、続けざまに攻撃して、アルフの息の根を止めた。

 すぐに変身を解除し、フラつく足でルーンの元まで戻り、ルーンと会話する。


「ルーン、ミラは大丈夫か?」

「眠ってるだけだから大丈夫」

「...ミラに悪いことしたな」

「私も...お兄ちゃんを守ることだけで頭が一杯だった」

「まあこの反省点を活かして、次はミラに被害が及ばないようにしよう」

「はいっ!次はミラちゃんがお兄ちゃんの妻になれば、自然と守れるようになるかも!!」

「...おい。とにかく疲れたから一旦休もう」


 疲れた体をルーンに預け、俺は目を閉じた。

 時刻は午後4時頃。辺りはまだ明るい。


「やっぱりお兄ちゃん以外の男の人にくっつくのは嫌だなー」


 乗馬の嫌な経験を消すように、ルーンは両腕で俺を抱いて、俺の唇にキスをする。


「お兄ちゃんが無事で良かった」


 そう呟いて、ルーンはまた俺にキスをした。




素人が趣味で書いているものですので、何分ご容赦頂きますよう何卒宜しくお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ