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61.プラン

 初めて王都やウィラルへ旅をした時から7年が過ぎた。

 たいした出来事もなく、平穏に過ぎた7年だった。


 ルーンの魔法習得については、特別秀でた才能は無かった。

 全く才能が無いわけではないが、たぶん普通レベルだと思われる。


 例の隠してある船については、特に使い道が無いのでほったらかしになっていた。

 定期的に様子を見に行ってはいるが、特に海や川を渡る予定があるわけではなかった。

 エネルギーの補給をやってみたが、問題は無さそうだった。

 いざという時に、海上を移動する手段として使えるが、その時はまず来ないと思われた。


 ルーンとの生活においても、衣食住については何も問題が無かった。

 7年間で二人とも成長し、俺は身長と体重が大きく増えた。

 また、『開花』の力についても、ルーンの白い花は5分咲きになった。

 これは俺に対しての好意が増していると、そう考えて間違い無いと感じていた。


 生活が順調であった為か、精神的にも大きく余裕ができた。

 俺はガタイが大きくなったことに加えて、5分咲きになって『狂戦士』の能力がパワーアップしたことも相まって、かなり天狗になっていた。

 いざという時の切り札である祝福の力も、体力が大きく成長したので、7年前と比べて力を使える時間が大きく伸びた。

 本気を出せば倒せない者などいないんじゃないかと、そんな根拠の無い思い込みがあった。

 自分の強大な力を発揮する機会が無いものかと、好戦的になっていたかもしれない。

 だがそんな不穏な場面は一切無く、日々狩りをしたり、魔法の短剣を片手に近接戦闘のトレーニングをしたり、その成果をルーンに自慢する、のほほんとした生活だった。


 しかし、1点だけ問題があった。

 それはもちろん、性欲である。

 ルーンは獣人なのか成長が早く、女の子なので当然胸部や臀部が膨らみ、俺も年ごろになったので性欲が旺盛になった。

 7年前とは違い、ルーンも今やお風呂やトイレについてくることは無い。

 ベッドは同じだが、べったりと抱き着いて寝ることはなくなった。


 うーむ、どうしたものか。


 俺は悩んでいた。

 素直にルーンに好きだと言えば、まず間違いなく恋人の仲になるだろう。


 しかしこれは...、勇気がいるもんだな。


 俺は勇気が出せずにいた。

 普段の生活やルーンの言動から、仮に押し倒したとしても、拒まれることは絶対に無いという確信はあった。

 だがもちろん、そんな乱暴なマネは死んでも出来ない。


 普通に言えば解決するんだが、その普通が出来ないもんだな。


 相思相愛だという確信と根拠は山ほどあったのだが、いざ言うとなると言葉が出なかった。

 そして散々悩んだ挙句、もし恋仲になれば好きなだけイチャイチャ出来るのに、そこに至っていない現実に耐えられなくなり、旅先でルーンに告白しようと、無理矢理に旅行プランを作った。


 よし...!

 旅先では普段とは違う環境だし、勢いでなんとかなるだろう。

 ルーンだから大丈夫だ。振られるなんてことは億に1つも無い。


 俺も変なプライドがあったのかもしれない。

 絶対に拒絶されないとわかっていても、最初の告白だけは特別なものにしないといけない、恰好悪い形で好きだと伝えてはいけない、という何かに憑りつかれていた。


 そして、俺とルーンは今...メイヴェリアの王都から東に進み、港街のフトへ向かってる途中である。

 フトから船に乗って北にある島に行き、そこで白い花を探すつもりだった。

 花を見つけたらその後どうするか、なんてことは考えていない。

 綺麗な白い花を見て、ルーンに好きだという。

 ただそれだけのプランだった。


 晴天の中、俺はすぐ横を歩くルーンに声を掛ける。

 すぐ横を歩いてはいるが、手を繋いでるわけではない。


「ルーン、荷物重くないか?」

「大丈夫だよ、お兄ちゃん」


 ルーンは明るい声で返事する。

 顔色や声色から、余裕があるように感じられた。


 7年前はあれだけルーンの手を引いて歩いたもんだが、今となっては手を繋ぐことがこんなに難しいとは。


 ルーンを見ると、心なしか寂しそうな顔をしている。


 すまんルーン、勇気が出ないんだ。

 いや、俺からじゃなくても、お前から手を握ってくれてもいいんだが...。


 ふと、相手任せの解決策を思いつくが、俺はすぐに反省した。


 これは良くないな。

 自分にやる勇気が無いからって、ルーンに期待するのは良くない。


 俺が手を繋ぐ勇気を出せずにいると、ルーンもそれを察したのか、顔を真っ赤にして俯く。

 真っ赤な顔のまま、思いつめたような、決意したような、そんな表情が見てとれるが、最後は寂しそうな顔になった。


 ...やっぱり勇気がいるよな。

 わかるぞルーン。


 俺は歩きながら、ぼんやりと7年前にメイヴェリア領内に行った時のことを思い出していた。


 あの時は荷物が重かったなぁ。

 行きの旅は所持金が無かったから、荷物をいっぱい持っていたし。


 当時は大金が手に入るなんて思っていなかった。

 ただ鉱石を売って、少し買い物が出来ればいいな、ぐらいにしか考えていなかった。


 で、結局森の中で生活しているとカネを使うことが無いから、所持金もあの時とほぼ同じだな。


 今回の旅行は、街で買えば済む物は始めから持って来ていない。

 食べる量は大きく増えたが、成長して力も体力も増え、荷物も減り、7年前の時と比べてかなり楽だった。


 まあとにかく島に行こう、島に行けばうまくいくはず...ん?


 俺は前方から向かって来る人影を確認した。

 背が低く太った中年の男と、すぐそばに体格のいい男、そしてその後ろに...手錠で繋がれた二人の女の人が歩いていた。


 あれは...奴隷か罪人を引っ張ってるのか?


 俺は心の中で怒りが沸き上がるのを感じた。

 ルーンもすぐにそれを察知し、俺に声を掛ける。


「お兄ちゃん...」


 ルーンの声を受けて、俺は小さく低くはっきりした声でルーンに返事する。


「ルーン、あれがもし奴隷商なら...場合によってはやるぞ」


 しばらく俺と生活していたルーンは、俺の性格をよく理解していた。

 俺の言葉に対して、ルーンもはっきりと返事した。


「...うん。わかった、お兄ちゃん」


 ルーンの声に躊躇は無い。

 それを聞いた俺は、拳を握り締め、はっきりと前方を見つめる。

 怒りの衝動が大きかったが、その中には、自分の力を思う存分振るいたい衝動もあった。




素人が趣味で書いているものですので、何分ご容赦頂きますよう何卒宜しくお願い申し上げます。

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