60.森に帰る ■
ルーンの視点です。
物語そのものは進展しません。
王都に着いてから三人で歩き出す。
ティルさんがギルドまで案内してくれた。
途中、お兄ちゃんが屋台で焼き鳥を買って、三人でベンチに座って食べる。
大きなお肉を、お口いっぱいに頬張ってるお兄ちゃんって可愛い。
ギルドに着くと、まずティルさんが一人で入っていく。
顔見知りのティルさんが、話を通してくれるみたいだった。
ギルド前でお兄ちゃんと二人で待っていると、お兄ちゃんが話し掛けて来た。
「ルーン、ごめんな。ゆっくりと街を見て回れば良かったんだけど。キースライトの原石があんなに高価な物だと思わなかった。警戒しないといけないから、観光どころじゃないよな」
私はお兄ちゃんの手をぎゅっと握り、本心を伝えた。
「...私はお兄ちゃんが無事なら、それでいい」
それからしばらくすると、ティルさんとギルドの人が出て来た。
ドラヒルという名前の副ギルド長さんで、オークションまで私達を案内をしてくれた。
これがオークション会場...大きな建物。
副ギルド長さんもいるし、ここで原石を預けたらしばらくは安心かな。
別室に案内されて、お兄ちゃんがオークショニアのグリスベルさんと会話する。
すぐに綺麗な女の人が、グラスを乗せたトレイを持って来る。
お兄ちゃん見とれてるの?
いや、お兄ちゃんのこの目は...感心してるのかな。
話がまとまり、無事キースライトの原石を預けて、出品の手配が済んだようだった。
手持ちのお金が少なかったから、お兄ちゃんが前払いの交渉をしたら、金貨5枚もプレゼントしてくれた。
王都ともなると、お客様に対する扱いがそれなりになるようだった。
金貨5枚もくれるなんて、グリスベルさんの裁量だったのかな?
親切な人で良かった。
お兄ちゃんがドラヒルさんに船について詳しい話を聞き、私達三人はオークション会場を後にした。
所持金が増えたので、お兄ちゃんは宿の前に買い物をするようだった。
「ティル、本屋に行きたいんだが知ってるか?」
「知ってるわ。ついて来て」
ティルさんが本屋に案内してくれて、お兄ちゃんと一緒に魔法が身に着く本を探す。
お店の人に案内され、初心者向けの本がいくつかある棚を探していると、お兄ちゃんが1冊の本を進めてくれた。
「ルーン、この青い本はどうだ」
私は中身をざっと見て、お兄ちゃんに返事した。
「うん、わかりやすそう!お兄ちゃんもそう思ったの?」
「ああ、魔法の才能が無い俺でもわかりそうだった。まあカネはあるから、好きな本を何冊でも買えるぞ。気に入ったやつは全部買おう」
何冊も買うと帰りの荷物が重くなるとお兄ちゃんに言って、結局その1冊を買ってもらうことになった。
お兄ちゃんみたいに魔法が使えたらいいな。
本屋を出て、私達三人は宿に向かって歩く。
途中で花屋に寄ったが、何も買わずに店内を見て回った後で店を出る。
お兄ちゃんがお店の人に何か聞いてたけど、欲しい花でもあるのかな。
森に戻ったら...お兄ちゃんと一緒に花壇とか作ったら楽しそうかも!
そんなことをぼんやりと考えながら宿まで歩き、その日はティルさんも一緒に、三人で眠りについた。
翌日、お兄ちゃんが受付で金貨をもう1枚払い、同じ部屋を取ってくれた。
その日私達三人はお店を見て回り、お買い物を楽しんだ。
夕方になり、喫茶店で三人楽しくお話をする。
今日は楽しかったな...。
ティルさんも楽しそうだったし、お兄ちゃんも楽しそうだった。
王都に来てよかった。
その日も同じ宿で夕飯を取り、同じ夜を過ごした。
翌朝、私達三人はオークション会場に行き、この前と同じ部屋に案内された。
すぐにグリスベルさんがやって来て、金貨3500枚で落札されたとお兄ちゃんに伝える。
「落札者の方がその場でお支払い頂きましたので、1割を差し引いた額の、金貨3150枚を用意させて頂きました」
そう言って呼び鈴を鳴らすと、この前見た綺麗な女の人が、カートにたくさんの金貨を乗せて部屋に入って来た。
わっ、すごい。
私はキラキラと金色に輝く金貨の山を前にして、息を吞んだ。
お兄ちゃんも目を奪われていたようだったが、グリスベルさんが魔法の袋について聞いてきたので、我に返って返事をする。
「それなんですが...、今この大量の金貨を収納できる袋を持ってません。なのでこの金貨の一部を使って、その袋を購入したいんですが、どこで売ってるか教えてもらえますか?」
お兄ちゃんがそう言うと、グリスベルさんがまた呼び鈴を鳴らす。
すると、先ほどの女の人が両手で1つの袋を持って入室し、テーブルにその袋を置いた。
グリスベルさんはお兄ちゃんに対して、その袋を差し上げると伝えた。
お兄ちゃんはグリスベルさんから使い方を教わり、私達三人はオークション会場を後にして、ウィラルに戻る為にワイバーン発着場に向かった。
無事に終わってよかった...。
お兄ちゃんは大金が手に入ってとっても嬉しそう。
途中、お兄ちゃんは焼き鳥を買って、また三人で座って食べる。
お兄ちゃんたら、6本も食べてる。
タレとか塩とか焼き方とか、帰ったらお兄ちゃんと一緒に研究しようかなあ。
焼き鳥を食べ終わった私達は、ワイバーン発着場に行き、無事に王都を飛び立った。
上空の籠の中で、お兄ちゃんはティルさんに、ここまでの護衛料を支払っていた。
そして、ウィラルの街を出て少しの間まで護衛してもらうよう、ティルさんと新しく契約を結んでいた。
よかった...。ティルさんが一緒だと安心。
それから特に問題も無くウィラルの街に到着し、街で食料と道具を買って北門から外に出た。
夕暮れで辺りは暗くなっていたが、街道を外れ、三人で森に向かってまっすぐ進む。
森に入ってすぐ、お兄ちゃんがティルさんに確認する。
「おいティル...尾行の気配はあるか?」
「ちょっと待って」
ティルさんはすぐに後ろを振り向いて、気配を探っている。
何かを察知したのか、ティルさんが呟いた。
「二人...たぶん武装してる」
お兄ちゃんはティルさんと話をつけ、ここでお別れとなった。
私はティルさんにお礼を言った。
「ティルさん、お兄ちゃんを守ってくれてありがとう」
「ルーンもまた王都に来てね」
「...はい」
ティルさんと別れた後、お兄ちゃんは私の手を引いて、少しの間を二人で走る。
それからすぐに私を抱えて、『狂戦士』の力を使って勢いよく走り出した。
手足が肥大化し、体毛が長く濃くなり、お兄ちゃんの外見はどう見ても獣のそれだった。
私もこんな姿になっていたのかと思うと、恥ずかしくなった。
お兄ちゃんは10分程私を抱えて走り続けた後、祝福の力を解除し、横になって休憩した。
元気になったお兄ちゃんと一緒に歩き、その日は森の中でテントを張ってひと晩過ごした。
翌日もお兄ちゃんと川沿いを一緒に歩き、夜にはお家の前に到着した。
家の前でお兄ちゃんから声がかかる。
「ルーン、お疲れ様」
私はお兄ちゃんの声に安心し、手を引かれてお家に入った。
お兄ちゃんと一緒に、無事に帰れてよかった...。
お家の中が出発した時と同じ姿で、私は心から安堵した。
1年と1カ月以上更新してませんでした...。
今日からなるべく短い間隔で更新出来るよう努めます。




