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第二話:『オレは冒険者』

東京ダンジョン36番通称『新宿魔境』

本来ならば11年前には足を踏み入れる約束をしていた。

大きく遅れて27歳になった刀花だったが

今の気持ちは11年前以上のものとすら思っている。


腰の下げたホルスターに手を当てる

ズシリと重い感覚が自身の武器を思い出させる

『ドゥリンダナ』自身が絶望したジョブの力で作り上げた

デュランダルという剣を元にしたリボルバー

猟銃のサブとして猟師をしていた時代には何度か使ったが

市販の銃とは段違いの何かを感じさせていた。


「…こんなに大きい入口だったんだな」


このダンジョンは既に十数年以上活動していて

最深の25階まで情報が出そろっている事から初心者向けでもあり

今でもそこそこ盛況で、刀花より若い者が多いが…

あの時諦めた事を振り払うのもあって、試し打ち相手に選ばれたのだ。


「…見ろよあのオッサン、銃なんか持ってるぜ

 ダンジョンで使えるもんかよ」コソコソ

「すぐ痛い目見て出てくるさ」コソコソ


(聞こえてるっての、まぁ普通ならそうそう使わねぇよな)


ダンジョンにおいて銃が武器に選ばれることはほとんど無い

デュランダルなんて代物があったように、ダンジョンの産物はほぼ剣だったり弓だったりで

"普通は"通用する銃なんてほぼ無い

それに整備も必要だがそっちに関しては後で説明しよう。


「園木刀花、錬金術師だ 確認お願いします」

「錬金術師?えっと、お仲間等は?」

「いや、ソロだ、無理はしないから問題ない」

「…了解しました、どうぞ」


ダンジョンに入るには身分証明書とかの提示が必要だ

周りの目が一層変なものを見る目に変わったが

まぁどうだっていい、今はドゥリンダナを早く打ちたい一心だ。


「…っよし! 気合い入ってきた!」


改めて装備を確認する

ちと古びた獣の皮の鎧に猟師の装備も混ざった感じで

メインにドゥリンダナ、念の為猟でも愛用してる散弾銃を背負っている

弾薬に関しては特に問題ないので、このままいけるだろう。


「おいオッサン!間違えて人に撃ったりすんなよ~」アハハ


変なヤジが飛んできたが、気になるもんじゃない

さてさて初のダンジョン『新宿魔境』だが

一般的な洞穴という印象のダンジョンであり

些か暗い事を除けば余りクセの無い場所だ。


少し進むと何とも言えない呻き声が響いてくる

モンスターだ、()()()()()()()()()は始めてだが

油断はしないように気を引き締める。


「グルル…」

「でっかい狼だな、ビッグウルフってそのまんまかよ」

「ガウウウッ!!」


大地を蹴る音と共に飛び出した狼は

ダンッ

一発の銃声と共に脳天に風穴空けて滑っていった。


「早撃ちするまでも無かったけど、良い滑り出しだな」


ウエスタンのような動きでホルスターにリボルバーを仕舞う

激しい銃声に更に呻き声が増えるが、刀花の顔には

狩人のように微笑みが浮かんでいた。


「獣がいくら束になっても負けねぇぞ!」


もう一度リボルバーに手を掛ける

刀花は猟師の経験と勘で足音から数を割り出す

「四匹…」

まず一発、短い断末魔と共に一匹倒れる

それを避けようとしたもう一匹もまた同じように脳天に風穴を空ける

警戒心を研ぎ澄ませて動きを変えた残り二匹だったが

急激な動きの変更に生じた隙を刀花は見抜き更に一匹撃ち殺す。


「残り一匹…!」


三匹の犠牲を踏み越え遂に刀花を捉えた最後の一匹は

死力を尽くして突っ込むが、突っ込んでしまったが故に

「動きが単調!」

真正面から頭を持ってかれるのだった。


「やっぱ、狩りは良いな」


シリンダーを取り出して残り一発だった弾丸を込め直す

突撃する狼の返り血を浴びていたからか

ドゥリンダナは汚れていたが…


「『等価交換』っと、これで元通りだ」


淡い光に包まれたドゥリンダナは光が止む頃には

綺麗な姿に戻っていた。

これが刀花の解決策である『等価交換』の小技

本来ならば使用した物体をそれと同価値の何かに交換できる技だが

この場合はドゥリンダナと同価値のドゥリンダナに交換したのである

こうすれば整備が必要な武器も大きく破損しない限り問題ない。


「『錬金術師』ってのも悪いもんじゃないな」


ポロっと漏れ出た言葉に自分で驚いた

思い返せば自分自身の才能である『錬金術師』を認めたのは

この11年間で初めてだった、胸に熱い物がこみ上げてくるが

一旦我慢して歩を進める、今日の目標は…


「狼、後10倍は狩ってやるか」





その後は言葉通りに狩り尽くして一旦帰る事にした

11年もやって来た以上自慢する気も無いが、こと狩りになれば

刀花にとってはモンスター相手でも変わるモノでもない

動きを読んで頭を抜く、ドゥリンダナは元の素材もあってかリボルバーながらも

ライフルに負けない火力を誇るのもあって傷を負う事なく狩りは進んだ。


「っと、少しズレてたか」

生き延びているものの藻搔くだけで何も出来ない狼を見つける

苦しめるのは目的ではないので刀花はドゥリンダナを持つ

しかしトリガーには手を掛けない。

「ウェポンチェンジ・剣」

そう唱えるとドゥリンダナはデュランダルの姿に戻った

これはデュランダルが持っていた『ウェポンチェンジャー』の能力であり

ドゥリンダナには銃としての姿だけでなく剣と槍の姿があるのだ。


「じゃあな、眠ってくれ」


そうしてデュランダルの鋭い刃で狼にトドメを刺したついでに

刀花は集めた狼の体を自身で捌き始める

皮や牙を切り離す、モンスターの肉は相当上モノじゃなければ

余り高くは売れないので一旦置く。


42匹を捌き終えると、狩りで扱ってたアイテムバッグに素材を仕舞う

肉は一部だけ回収して残りは錬金術を使用して一時的に防腐処理を行い

持ち帰る事にした。


「大量大量、親父も喜ぶぞ」


ホクホク顔でダンジョンを出てみれば

あのヤジを飛ばした連中がボロボロの姿で休んでいた

何度も齧られたり引っかかれたようだが、まぁ慣れないうちは仕方ない

ダンジョンを管理する職員に声を掛ける。


「どうも、そろそろ帰るんで報告しますわ」

「おや、良かった無事で、成果はどうでした?」


そう言うとこちらが喋る前にボロボロの連中が気づいたか

更にヤジを飛ばしてきた。

「俺達でも7匹が限界だったんだし聞いてやるなよ!」アハハ

まぁ特に自慢する気は無かったが、余り調子に乗らせるのも

ここまで行くと気に食わないのでアイテムバッグを開き持ち上げる。


「42匹程狩りました、狼は群れるから見つけやすくて助かる」

「ええ!? ひ、一人で…しかもその銃で?」

「一応十年程猟師してましたんでこれ位は朝飯前ですよ」


そう言ってもう一度仕舞い込む

あの連中は驚いて黙ったらしい

まぁ変に絡まれても困るから嫌味とか言う気はないし

それ以上に親父に成果を見せたい所だ。


「んじゃ帰ります!」


11年は無駄じゃないっていう奴だ

今日は…狼鍋にするか。

現代ダンジョンたのしい…たのしい…


どうか評価や感想を頂けると私のこれからの励みになります

・他のジョブはどうなん

・続きが読みたい!

・がんばって!

など書いていただければそれだけで何作も頑張れます!

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