第一話:『オレは錬金術師』
この世界にはダンジョンと呼ばれる人類未踏の地が幾つも生まれては消えていた
地球の意志とも大地の恵とも呼ばれるソレは未知の領域だけでは無く
人類に不思議な力、ジョブと称される力を与えた。
戦士であれば怪物にも負けない勇気と膂力を
義賊であれば無数の目をくぐり抜けて目的を勝ち取る技量を
魔術士であれば目に見えぬ力を操り戦う魂を。
この星にもたらされた力を物にしてダンジョンに潜り
金銀財宝或いは夢を求めて戦うのが今の世にも続く仕事
『冒険者』である。
そしてオレ、園木刀花もまた
16歳になりこの国日本においてダンジョンへの潜掘が許される年齢となり
準備を兼ねて適正ジョブを審査しに来たのだ。
「個人的にはやっぱり、戦士とかわかりやすくていいよな~」
「僕は魔術士とかもロマンあって好きだよ」
「私は義賊でがっぽり稼ぎたい!」
この二人は金田総司と白狐咲だ
昔から一緒にダンジョンに行こうって約束してて
今日やっと挑戦条件を満たした訳なのだ。
「名前順でやるか~」
「あの板に写るんだよね」
今日から楽しい冒険者生活が始まるんだ
オレは戦士が良いとは言ったけど義賊や魔術士にだって
全然アリだし、そもそも他もあり得る! やっぱ楽しみ。
「僕は魔戦士?だって! 魔法も前衛も出来るって豪勢だなぁ…」
「私は盗賊、義賊より悪そうだけど稼げそうだな~」
「オレもなんかすごい奴になったぞ!」
「おお~、なんなんだい?」
「稼げそう?」
「聞いて驚け…『錬金術師』だってさ!」
その時空気が凍りついたのは今も覚えている
なぜそうなったかって? 難しい話じゃない。
「…刀花、落ち着いて聞いてほしい」
「んだよ、妬いてんのか?
わかるぜ、鋼のヤツとか好きって言ってたしな!」
「違うんだ!」
「…?」
総司は神妙な顔つきでオレを見つめていた
ふと目をやると、あの咲も申し訳なさそうに目を逸らしていた。
「錬金術師は…戦闘用の職じゃない!」
「…………は?」
あの日、オレの冒険者人生は始まる事無く終わった
花咲く事を夢見ていた芽はそもそも地表に出る前に既に
腐りきって死んでいた事を知った。
意気消沈したオレは、二人に呼び止められたのも聞こえずに
その場を去り、抜け殻のように生きていた
親にも同情されたりしたけど、もうどうでもよかった
幸いにも、錬金術師はダンジョン以外は便利だったから
親の仕事を手伝っていればまともに生活は出来ていた。
あれから11年…
「…」
バァン!
「今日も微妙にモンスターが出てきてやがる」
何もかもどうでもいい生活を続けていたオレを見かねて
趣味を見つけろと言った親父に教わって
オレは最近射撃や狩猟をするようになっていた、結構いろんな銃使えたりするし他にも
ダンジョンから迷い出てきたモンスターなんかも駆除したり出来るのもあって
何となく、鬱憤晴らしにもなっていた。
「なぁ刀花、実は…」
「どうしたんだ、親父?」
「成人祝いに、お前に渡そうと思ってたものがあったんだが…」
「え、う 嬉しいけどなんかあったのか?」
「用意していたのはその…何年も前からだったんだ」
その口ぶりで、何となく親父の言いたいことが分かった
親父は冒険者になる事を何も言わないけど、裏では応援してくれてた
だから…。
「…いつか渡そうと決めてたんだが、すまん」
そう言った親父の前には綺麗な装飾がされた剣があった
間違いなくダンジョンの産物だ、安い買い物じゃない。
「………………いや、嬉しいよ
親父が応援してくれてたのが、今でも」
「おう…」
『デュランダル』と言われてた剣らしく、オレは使えないと知っていても
あの時消えたと思っていたやる気というか、情熱が呼び覚まされた。
「…!」
「どうかしたか?」
「親父さ、アレ見たことある?」
「アレって?」
オレの頭の中に、新しい道が見えた
『錬金術師』でも…いや可能だとしたら
『錬金術師』にしかできない道だ!
それはある作品で思いついた物だった、そう…。
「ダークタワーって映画!」
■
それから数か月、オレは目を背けてた『錬金術師』に向き合って
色んな技能を磨いた、オレだけの技能を
『原子変格』で物を別の物に組み替えたり
『技術継』を覚えて全く別の物体に物の能力や歴史を載せ替えたり
『等価交換』を駆使して持ってない素材も用意したり
オレはオレだけの武器を手にする事へ近づいて行った。
「親父、オレやるよ」
「遂にか…」
「デュランダル、ありがとう
これが無かったらオレは挑戦する日が来なかった」
「良いって事よ、まだ27だぜ やれるさ」
「おうとも!」
オレはデュランダルを手に取ってその形と歴史を見通す
その剣には力と歴史があった
『耐久性・極』『ウェポンチェンジャー・槍/剣』の二つ
このデュランダルには無限に等しい耐久性と槍と剣になる機能がある事は知っていたが
その細かい性質や機能性まで見えた。
そしてその剣の歴史は長く
『現在:刀花の剣』『父からのプレゼント』と最近の歴史から
『東京ダンジョン35番にて発生』と、ここに来る前のものまで。
「見えてきた…やれるはずだ」
親父に改めて感謝して、デュランダルの形をオレの技能で曖昧にしていく
頭の中で完成してる"形"にまるで粘土を捏ねるように近づけて
大まかな形が産まれてからはブッシュアップの為に
更にこの身に込められた力を詰め上げていく。
「どうか完成してくれ、オレの未来…!」
完成形が近づく中で何通りもの形から一番自身のイメージに近しい物を掴み取り
オレは――
「…………出来た!」
デュランダルを錬金して見せた。
「しっかし、伝説の武器を銃にしちまうとはなぁ」
「デュランダル改めてドゥリンダナ、だな!」
「お前にはそっちの方が慣れてるもんな」
ドゥリンダナ、伝説の剣から生まれたリボルバー
オレはこの銃を手にした時、完全に心に燃え上がっていた
情熱の炎を感じていた。
「11年前から、諦めきれてなかったもんな」
「…行ってきたらいいさ」
親父が車のキーとチラシを渡してきた
そこは4年前行くと決めていたあのダンジョンがあった
あの時出来立てだったそこはもう4年の老舗。
「憂いなんて断ち切ってこい、いいな!」
「勿論!」
そんなオレの返事はこの11年の間で一番前向きで、自信に満ち溢れていた。
また新作書きたくなる発作である
どうか評価や感想を頂けると私のこれからの励みになります
・ダンジョンってなんぞ
・続きが読みたい!
・がんばって!
など書いていただければそれだけで何作も頑張れます!