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少女カッサンドラ

はぁ……今日も一日が始まった……

退屈な日常が……


「おっはよ! あんた今日も陰気な顔してんねー!」


「おはよう……陰気な顔で悪かったね……」


「それよりさ、一時間目って算学じゃん? 宿題やった? もちろんやったよね? 見せて!」


「はいよ……」


「やったー! さっすがカーサ! あの先生怖いもんねー! 借りとくねー!」


一時間目が始まるまでに返ってくるかな……別に返ってこなくても困らないけど。





「一時間目の授業を始める! 本来ならワイアット先生の算学だったが、先生に急な出張が入ったため歴史の授業を行うことになった! ちょうど王国一武闘会も近いことだし初等学校の内容から復習をするぞ!」


今さら初等学校の内容なんてされてもね……ま、ここにいる半数は忘れてるんだろうけどさ……


「カッサンドラ! 現在の国王陛下は何代目であらせられるか? また御名(みな)を答えてみよ!」


馴れ馴れしく名前で呼ぶな……しかも本当に初等学校の復習からやるのかよ……


「十五代目、グレンウッド・クリムゾン・ローランド陛下です……」


「その通りだ! 座ってよし!」


当たり前だ……私らもう中等学校四年だぞ? 知らない方がどうかしてる……むしろ近衛騎士の前で知らないなんて言ったら斬られるな。




「……といった経緯で大陸全土を統一なされた初代国王ムラサキ・イチロー・ローランド陛下の偉業とローランド王国建国の志を忘れぬために! 五年に一度この大会は開かれることになったのだ! ところでカッサンドラ! 初代国王陛下の諡号(しごう)を言ってみろ!」


ちっ、もう一周まわりやがったか……


「統一勇王です……」


大陸を統一した勇者であり国王。そのまんまじゃねーか……少しぐらいひねってやれよな……


「正解だ! よく勉強しているな! 座ってよし!」


まあこれは知らない奴は知らないもんな……


「ところで! 今回の王国一武闘会だが、今週末に十五歳以下の部があるな! 参加する者は手を挙げろ!」


歴史の授業じゃねーのかよ……まあこの脳筋教師は私らの担任だもんな……


「一、二、三……六人か。まあこんなもんだろう。おっ、カッサンドラもか。お前はどっちに参加するんだ?」


私にばっかり質問するんじゃねーよ……


「魔法あり部門です……」


当たり前だろうが……私の細腕で魔法なし部門になんか出られるかよ……


「ほう、そうか。お前ならそこそこ勝ち抜けるだろうな。ベクトリーキナー家の名に恥じぬ戦いをするんだぞ?」


「はい……」


うるせぇんだよ……私は私のために戦うんだよ! くそが……




カッサンドラ・ド・ベクトリーキナーか……

いつからかな……この長ったらしいベクトリーキナーの名が重くなってきたのは……

これでも小さい頃は父親が自慢だった。国に一人しかいない『魔法工学博士』だからな。何人もの弟子を『魔法工学士』として育てあげ、本人だって国王陛下からの信頼も厚い。そのおかげで私だって陛下に頭を撫でていただいたことだってある……


それなのに……あれは確か初等学校三年ぐらいだったかな……

学年末テストで初めて首席をとった時、二位の子に言われたっけ。『お前の父上はベクトリーキナー卿だもんな』って……

それからだ……どんなに私が努力して、全教科で首席をとっても『ベクトリーキナー卿の娘だから』で済まされる……

クソが……貴族学校ならともかくここは中等学校だぞ? ここじゃあ身分による加点なんかほとんどねぇーんだよ! だいたい身分による加点があっても勝てないお前らは何なんだ! 私よりよっぽど家柄がいいくせに! うちは祖父の代に平民からのし上がった一代貴族だぞ? 実力を示さないことには代替わりで平民落ちになるのが確定してんだよ! クソが!


だから出たくもない王国一武闘会なんかに参加するんだよ! あそこで優勝すればどこでも好きな所に進学する権利が貰えるからな……そうすれば将来だって……


「カーサ、昼だよ。食堂行こうよ!」


「あ、ああ……」


ちなみにこいつは一時間目が歴史だったのにまだノートを返してこない。昼食を奢らせるから別にいいけどね……

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― 新着の感想 ―
[一言] カッサンドラちゃんは色々悩みが深そうですね! この感覚、ちょうど中学生頃の自分を見ているような……(笑) 続き楽しみにしています。
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