5章 16話 ラブズハート
そこら中に拡散していた魔力があるべき場所へと戻っていく。
…プゥッン。
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『ああああああぁぁああああああああああああああっ。』
人形を抱きかかえ泣き叫ぶ■■■■。
そんな■■■■を見下ろす■■■■とギザな恰好をした■■■。
いや、よくみると■■■■はその現状から目を逸らしていた。
■■■■は■■■■にこう言った。
「済まない。私は■■■…いや、■■の■■■を壊してしまったようだ。」
…プゥッン。
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コレハ、ナニ。
それは、ワタシの中にない記録。
ワタシハ、ヒイロニ、マリョクワケテ、ニンギョウノ、トナリニ…。
人形?
よく見ると、■■■■が抱きかかえている人形…同じだ。
あれ、■■■■って誰?
いや、何処かで聞いたことがある名前。
確か…。
『ナオシテ…クレテ…アリガトウ。』
えっ。
その声は突然、私の中に響いてきた。ヒイロとお話しをする時と同じ、とてもあたたかくて、やさしい…そんな思考回路で満たされていく。
ナオシタ?ナニヲ?
私はまだ、あなたの…あなたの壊れた『ココロ』を直せていないのに。それどころか、あなたを守ることが出来ずに、壊してしまった。
感謝されることなんて、一度もしてない…感謝される道理なんてどこにもない。
なのに、そのような私の罪悪感さえも、この思考回路はやさしく包んでくれる。
『いいえ、私はもう、壊れてしまっているの。』
もう…壊れている?それじゃあ…私は一体、何を直したって言うの?
『あなたが直してくれたのは、道半ばで折してしまったココロ。一度挫いてしまったココロはどれだけ手を尽くしてもどれだけ時が流れようとも、癒える事はほぼない。ましてや、その傷が深ければ深いほど…。』
深いココロの傷?
『だけど、あなたが、一握りの勇気を絞り出し、背中を押してくれたことにより、ココロの傷は癒え、ひとつ、ほんのひとつ、小さな一歩を踏み出すことができた。』
一握りの勇気…私が?
『それだけではない、共に喜びを、時には悲しみを分かち合い、今に至るまでにずっと支えてくれた者達の存在があったからこそ、ここまで来ることが出来た。勿論、その者達の中に、あなたも含まれる。』
『だから、私は君たちに感謝の気持ちを述べる…ありがとう。』
「リイナ…君のおかげで、大切なことに気付くことが出来たよ…ありがとう。」
内側と外側から同時に入ってきた感謝の言葉。それは私の思考回路を幸せな気持ちとやらで満たしてくれた。誰かに感謝されたことは初めて…こんなにも思考回路が高揚してしまうとは…思考回路が溢れる…受け止めきれないほどに。
わたしは知らぬ間に生物でいう涙とやらをポタポタと流していたようだ。
『さてと、これからあなたは消えていく定め…。』
そうだ、私は命を使い果たし、語らない鉄クズとなったのだ。もう、外の話…ヒイロのお話しを聞くことも出来なくなるのか。そう思ってしまうと、未だに止まらないこの涙が別の物へと変化し、思いとどめていた思考回路のダムが決壊してしまいそうだ。
もっと、外の事を知りたい。もっと、ヒイロの話を聞きたい。
もし、叶うのであれば…ヒイロと一緒に、外の世界に触れて、感じて、それらすべてを共有したい。
『やっぱり…同じだね、彼らも、そして、私達も。』
えっ?
『いいえ、なんでもない。』
その声は何処か寂しそうだった。
あの…。
「さてと、あなたに一つの選択肢を与えましょう。」
選択肢?
「そう、それは、私と一つとなり、彼らについていくこと。その代償として、貴方は一生その身を尽くして彼らを守る事。」
それは、私が夢に描いていた理想、もう一度、ヒイロの隣にいることが出来る。それが叶うのであれば、私は…私はその都合の良い提案にだってしがみついて見せる。
私は自らの意思で、自らの感情で、その選択肢を選んだ。
『…分かったわ。』
視界が開けてくる。
『さあ、私の代わりに見て、感じてきなさい。私が諦めた旅の続き…その先を。』
貴方は一体?
声の名前を聞く前に、私の意識は外へと旅立ってしまった。
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損傷部、修復開始…修復完了。
フラッシュサーベルによって刺された腹部の深い傷にリイナが大事に持っていた【ココロ】が入った後、その傷は完全に消え、ついでに所々にあった掠り傷も完治。焼き焦げたような黒い髪は日の光を浴び、金色に輝き始める。
そして、周囲に分散していた魔力の一部が一体の人形の元へと集まり…
【ダウンロード100%完了。】
【起動…開始。】
パッ。
腹部の傷口から侵入した【ココロ】は胸部のあるべき場所へと返り、淡く光り出す。
「私は…私の名前は、リイナ・二ーナ。我が使命は、私に名を与えてくださった主様…ヒイロ様とその仲間を守る事。彼らを妨げる障害は排除します。」
人形は覚醒した。
リイナが見据える先にはヒイロとクミンを襲撃する馬型の魔物トロイア。
【工作。】砂に埋もれた鉄クズを引き寄せ、解体、熱を生成し溶接、再構築し、1.5メートルあたりの鉄製の筒を生成。
【充魔】周囲に拡散していた魔力を筒の内部へと吸収し、凝縮。
【発砲】凝縮された魔力は、一筋の光となり、筒状から発射し、ものの数秒でトロイアの厚く固い胴体を貫いた。
「ヒイロ様…クミン様…わたしが…守る。」
「あなたは…。」
「もしかして…リイナ?」
「はい、そうです、私です、リイナです。」
「えっ、リイナ?リイナってあの小さい魔物の事?でも、あれって、私とリックスが保護した女性…でも、髪が金髪?確か黒髪だったはず…え?どういうこと?」
クミンの思考回路はぐちゃぐちゃしていた。
それもそうだ、先程までそこにいたのは道中で保護した黒髪長髪の女性、しかも、トロイアの出現をトリガーに、中層からやってきたフラッシュサーベルに不意の一撃をくらい、倒れてしまったはず。それなのに、その女性が復活し、容姿も、黒髪から金髪へ変化している、挙句の果てに、小さな魔物であったリイナの名を語る始末。
クミンはあまりの情報量の多さに処理速度が追い付けず、彼女の身に起こった事について考える事を放棄していた。
一方、ヒイロは魔力の質から、彼女がリイナであることを悟ったようだ。ヒイロは、どんな形であれ、リイナが戻ってきてくれたことに、大きく喜び、「リイナ…よかった。よかった。」と涙を流した。
だが、喜んでいたのは彼だけではない。
『見ツケタ、ツイニ、ミツケタ、【ラブズハート】。』
トロイアを乗っ取ったヒュースは歓喜していた。
どうやら、彼の真の目的はリイナ、いや、正確に言えば、リイナが大事に持っていた【ココロ】、その名を【ラブズハート】。元々は黒髪長髪の女性が持っていたのだが、ヒュースが彼女を見つけた時には【ラブズハート】はリイナの手に渡っていた為、ヒュースは激怒し、迷宮内を荒探ししていたようだ。
その過程で迷宮内のあらゆるオブジェクトに触れまくり、魔物の大量発生やトロイアの出現の引き金を間接的に引いてしまっていたのだ。
これが今回の事件の真相。
ヒュースはリイナを奪取するために、彼女目掛けて、トロイアを前進させ始める。
だが、人は欲望に目が眩むと周りが見えなくなるもの、ヒュースの目的を察したヒイロとクミンはトロイアの足元にワイヤートラップと接着性の粘液を仕掛け、リイナへ突進するトロイアを盛大にコケさせることに成功。
その隙に、ヒイロとクミンはリイナの元へダッシュし、トロイアを足止め…いや、ここまで来たら討伐するための作戦を伝える。
先程までは黄金のナイフの破損により、罠魔法と初級魔法しか使えなくなったヒイロと魔素コントロールを習得したが小規模でしか制御できないクミンと、足止め程度しかできなかった彼らであったが、トロイアの頑丈な体を貫ける程の高火力を放つことが出来るリイナの参戦により、状況は大いに変化。もしかしたら、トロイアを倒せるかもしれない。
ヒイロとクミンで足止めしつつ、トロイアの身体にある無数の砲台を封じ、リイナはトロイアの四肢を破壊してもらう。本当は急所を狙い、一撃で終わらせたいところだが、もし、外したら、狙った場所が急所でなかった場合、戦況を建て直し、再度挑戦することは困難、いや不可能だ。敵は私達より何枚も上手、こんな単純で分かりやすい策など簡単に見破られてしまう。だからこそ、一発逆転ではなく、万全を期して、トドメを刺す必要があるのだ。いつ、誰かがフィニッシュを決められるのであれば…。
クミンが接着性の粘液で砲台の口を塞いだり、トロイアの足に着け、動きを封じたりし、さらに、砂色の煙を発生させ、視界を暗ませるなどして、妨害工作に専念。
その隙に、
罠魔法【スピア】+光魔法【ライトニング】=【ライトニングスピア】
ヒイロが光属性の初級魔法と鉄の槍を生成する罠魔法を組み合わせた攻撃魔法で砲台を潰しつつ、罠魔法で鎖を身体中に括りつけたり、トロイアの足元にワイヤートラップを仕掛けたりと、攻撃兼かく乱兼妨害工作をこなす。
そうして、ヒイロとクミンが敵の注意を引き付けている隙に、リイナが遠距離から攻撃し、足を一本一本削っていく。
だが、敵もそう一筋縄ではいかず、激しく抵抗するどころか、彼らの狙いを読み、反撃に転じる。
『…ハック。』
近くに転がっていたフラッシュサーベルや火炎放射器を身に着けた魔物の残骸を操り、足元のワイヤートラップを切断、接着性の粘液を溶解させ、行動制限を解除、更に傀儡と化した魔物共をヒイロとクミンにぶつけ、その隙にリイナへと銃口を向けながら突進。
「そうはさせねえぜ。ヒイロ、あれを、飛び跳ねる奴!」
ヒイロは荒々しい声を聞くと同時にその声の要望を察して、第八迷宮攻略作戦のアスレチックエリア攻略時にフェンが出した四角形の図形、【バウンド・スタンド】を彼の足元に出した。
【バウンド・スタンド】を踏み抜いた彼はトロイアの巨大な体長をはるかに飛び越え、ある高度に達した後、円盤状の盾とゴツゴツとした槌を手に取り、トロイアの頭上目掛けて急降下。
「喰らえ、クソデカ物!」
【シールド・バッシュ】+【ハンマー・クラッシュ】=【ツイン・インパクト】
『グゥゲォ…。』
槌で盾を打ち付ける事により、二重の衝撃波がトロイアの脳天にクリティカルヒット。トロイアは千鳥足みたいに、上手く歩行できず、前足を挫き、転倒。
「ふぅ、勘一発。どうやら、コイツの思考制御はここでやっているようだぜ。」
「リックス!」
クミンの暴走により吸収された魔力が戻ってきたようで、完全とは言い切れない物の、戦闘に参戦できる程に体調が回復したようだ。リックスが復活したということは…。
「♪~♬~」
体中に魔力のベールが纏っていく。
「バフかけておいたよ。」
「ハーディー!」
クミンの暴走が収まり、リックスの看病から解放された事により、ハーディーも本格参戦。
音魔法【羊の綿集め(コットン・ウォール)】により耐久性を、【兎の協奏曲】により俊敏性を強化し、チームをサポート。
「さてと、チームのブレーンさん。俺たちに指示を!」
リックスはニヤッと笑いながらクミンを見つめると、同時にヒイロ、ハーディー、リイナもクミンに信頼の眼差しを向ける。
クミンは「全く、分かった、分かったよ。」と苦笑いしながら愚痴をこぼし、彼らの信頼に応えるべく、それぞれに指示を送った。
「リックスは、前衛で敵の注意を引き付ける。ヒイロは引き続き、砲台を削りつつ、敵をかく乱。私とリイナは周囲に沸いた魔物共の殲滅をしつつ、リックスとヒイロをアシスト。ハーディーは魔物共のかく乱をお願い。」
「「「「了解!」」」」
まず、最初にアクションを起こしたのは前衛役のリックス。
「ヘイト・ウォーリア。」
自身の盾に敵を引き付けさせる妨害魔法。この魔法にかかった敵はおよそ30秒間、魔法の発動者以外に攻撃を加えられない、正確に言えば、他者を対象にした攻撃は全て発動者へと引き寄せられてしまうのだ。
『クソッ、メンドウクセェェェェ。』
トロイアは銃口すべてをリックスに向け、集中砲火。リックスは瓶に入った液体を二つ取り出し、まず一方を飲み、自身の身体を覆う鱗の強度を大きく向上させる。鋼の鎧を得たリックスは自前の盾と全身を使い、銃口から放たれる豆鉄砲を弾き飛ばす。
一定間隔で銃口から放たれる巨大な魔力弾に対しては、もう一つの瓶に入った液体を飲み干すことで発動できる【ファイヤー・ブレス】で粉砕。
巨体な分、大雑把な攻撃しかできないトロイア。となると次に打って出てくるのは小回りの利く傀儡達。リックス目掛けて、大量の魔物が襲い掛かって来る。
が、リックスだって、一人で戦っているわけではない。
「ヒールスタンプ…【トライデント・ディス・アーム】」
地面から無数の鉄の槍が出現し、魔物共の身体を貫いていく。
「フェンの見様見真似だけど…どうかな?」
「完璧じゃねえか、ヒイロ。」
続けてヒイロは地面に刺さった鉄の槍に雷属性の初級魔法【サンダー】を加え、磁力を纏った鉄の槍をトロイアの銃口目掛けて一斉掃射。さらに、体中に刺さった鉄の槍に鎖の杭として利用し、トロイアの身体中に鎖を括りつけ、トロイアの動きを制限させる。
『チョコザイィッ。』
リックスの【ヘイト・ウォーリア】の効果は短時間かつ、引き付けられる敵の数に限りがある。できるだけ敵が分散しないように定期的に【ヘイト・ウォーリア】を発動させているが、それでも、打ち漏らしが発生する。
ヒュースはそれらの魔物を利用し、トロイアの拘束を解こうとするが…。
べちゃっ&ドッカーン。
クミンが接着性の粘液を次々と生み出し、魔物共を次々と拘束し、身動きが取れなくなった魔物共をリイナの遠距離高火力砲で一斉清掃。
別のところでは、魔物が訳も分からず右往左往している様子。どうやら、ハーディーの音魔法【鼠の迷走曲】により、方向感覚を狂わせられて、思考処理が身体に追い付けずに混乱しているみたいだ。
『クソッ。』
傀儡を増やし、数で圧倒かつ敵をかく乱させ、不意の一撃で敵を仕留めるのがヒュースのやり方なのだが、現状を見てみれば、逆にこちら側がかく乱させられている。
だが、自分に、トロイアに、確実にトドメを刺せるのは、【ラブズハート】を持つ奴だけ。奴にだけ気を付けていれば…。
「…と思ったでしょ。残念。」
まさか…。
ヒュースが彼らの真の狙いに気が付いた瞬間、もう時は既に遅し、トロイアの頭上に鉄の筒を手にしたヒイロの姿があった。
フェンから教わったことを思い出せ。
手に全魔力を集め、それらをこの武器に注ぎ込み、一点に凝縮。そう、リイナが放った筋状の光のように…。これ以上は筒が破裂してしまう、魔力量はこのくらいでいい。
『オイ、ナニヲ、バカ、ヨセ、ヤメロ。』
ヒュースはヒイロが筒に込めた膨大な魔力の量を察知し、声を荒げるが、そんな彼の卑屈な声に耳を傾けずに、着々と状況を整えるヒイロ。
準備完了、よし、今だ。
「発射!」
ジュウシャアァアアアアボオォォンバアァァァアアーン。
それは、予想だにしない超高火力。
頑丈なはずのトロイアの頭はバルーンボールのように首ごと軽く吹っ飛び、木っ端みじんに。その衝撃で筒状の武器は大破、本来であればヒイロの腕ごと吹っ飛ぶ大惨事であったが、ハーディーが何重にも防御力向上の補助魔法を掛けていた為、最悪の事態は何とか回避、身体ごと空中に吹っ飛び、そのまま砂の大地へ真っ逆さまにダイビングしていった。
「ヒイロ!」
ハーディーとリックスで地面から飛び出たヒイロの両足を引っ張り上げ、砂の大地からヒイロを無事救出。
その近くでは、首なしのオブジェクトがボロボロの四つ足で必死に突っ立っていた。
「どうやら、やった…みたいだな。」
「…ええ。」
クミンは茫然と突っ立っていた。
本来、上級冒険者が数十人がかりで倒すはずの魔物をここにいる五人、自分達でたおしてしまったのだ。今までの自分では考えられないこの光景にクミンは、「夢ではないか。」と自身の頬を引っ張りつつ、一瞬現実逃避する。
だが、これは現実で、現に、目の前に重要機関が破損し、ビクとも動かない敵の屍があるのだ。
「やったね、クミン。」
砂まみれのヒイロがクミンに賞賛の声をかける。
「…うん。やったね、ヒイロ。」
クミンはヒイロに満面の笑みを見せた。
これで一件落着、と思った矢先…。
『マダダ、マダダァァァアアアア』
一体のフラッシュサーベルが地面から現れ、リイナに襲い掛かる。
どうやら、ヒュースはトロイアの頭部が破壊されると察知した途端、すぐに自身の意識を胴体へと移していたのだ。
「危ない。」
咄嗟の出来事。誰も瞬時に行動が出来ない中、唯一、ヒイロだけが行動を起こし、リイナを庇う。
フラッシュサーベルの刃がヒイロの腹部へと伸びる。
ヤバい、ハーディーのバフはもう解けている…刺さる。
ヤバい…。
【ブロック・フラック】
カッキーン。
ヒイロの腹部に突如、盾のエンブレムが現れ、フォトンサーベルの刃をしっかりと弾く。
これは、ナタリーの…いや違う、今は彼女の、クミンの魔法だ。
「もう、誰も傷つけさせない、もう、失わせない。そう心に誓ったんだから…。」
ヒイロの背後に旗を構えるクミンの姿。
態勢を崩したフォトンサーベルはもう片方の刃を伸ばし、再度襲撃を試みるが、その瞬間、一筋の光が胴体を貫く。
「リイナ?」
「いえ、私ではありません。」
「それじゃあ、まさか。」
その場にいた五人のココロに希望の光が灯る。
フォトンサーベルの胴体を貫いたのはSランク冒険者【輝姫】アイリス・ソーサラー。
やっと、ついに、応援部隊が駆け付けて来てくれたのだ。
「遅れて申し訳ございません。皆様、ご無事でしょうか?」
「はい、お姉さま!」
ボロボロの姿で駆け付けたアイリス達を見て、五人は「遅すぎるよ。」という言葉をグッと飲み込んだ。恐らく、トロイア出現による中層からの魔物の大量進出に足止めを喰らっていたのだろう。そんなトラブルを片付けてまで、こちらへと向かってきたのだから文句の言いようがない。
『クソォッ…クソォッ…。セメテ、ラブズハート…ラブズハートノカイシュウダケデモ…。』
ヒュースが周囲に散乱していた魔物の残骸を操作しようと…。
「獣王拳 奥義弐の型 獣痕」
ドッカーン。
突如上空から振ってきた巨大な拳により、トロイアの胴体は木っ端みじんに。
「ふぅ~。これで良し。」
トロイアの残骸からSランク冒険者【獣王】レオン・ワイルドハートが姿を現す。
「よっ、大丈夫か、坊主共。」
「…。」
「おいおい、マジかよ。」
五人が力を合わせて全力で戦っても、完全に倒しきれなかった敵を、こうもあっさりと倒してしまう冒険者ギルド三強の一角の実力に呆気を取られるヒイロ達御一行様。
ともあれ、事態はほぼ完全に収束。
ヒイロ達は緊張の糸が完全にほどけ、その場に倒れ込むのであった。
ラブズハート争奪戦、終戦。
残り、事後処理と後日談の数話で、5章完結。
次話、新たな仲間、お楽しみ。




