表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/136

1章 2話 ライブラ

「君は...」


「僕かい? 僕の名前はヒイロ! ヒイロ・グルメンズ!」

彼は満面の笑みで、自分の名を名乗った。

一応、私も名乗っておこう。


「私はクミン、クミン・シード。」


ヒイロは笑みを浮かべたまま、

「変な名前だね。」

とコメントした。


「失礼な!」と突っ込みたいところだが、今は現状を把握するほうが先だ。

とりあえず、ここはどこか訊ねてみた。


すると、ヒイロは立ち上がり、両手を大きく広げ、こう答えた。


「ここは、“ライブラ”、世界のあらゆる記憶が保管されている場所さ。」


そこには大量の本が敷き詰められた本棚が壁沿いにズラリと並べられており、高さ2メートルほどに積み上げられた本の山が至る所に存在していた。


ライブラ?世界の記憶を保管する場所?

そのような場所が第2迷宮内にあるなんて聞いたことがない。


クミンはしばらく考え込み、そして、ある一つの結論にたどり着いた。


(ここは未発見領域なのか?)


未発見領域とは、迷宮内において、冒険者ギルドに発見されていない未開拓の領域のことである。

特に今回のように、ある条件がそろわないとたどり着くが出来ない場所には、

この世界ではまだない珍しい技術が組み込まれた魔道具や物凄く強い性能の武器等のお宝が眠っていることが多い。


すると、ここには何か物凄いお宝が眠っているってことか。クミンはこの空間に隠されているであろうお宝の在処に目星をつけるべく、ヒイロにそのことを悟られないように情報を引き出そうと試みたが…。


「ねえ、ヒイロ君?ここにおたか...んっ、なにかすごいものとかあるかな~?」

「目が怖いよ、クミン、それにここには世界の記憶について書かれた本と食料以外何もないよ。」


普段の彼女は物事に対し、常に思考を巡らせて冷静に対処するのだが、金銭等、欲求を刺激させられるものを前にすると、自前の冷静さは皆無となり、ポーカーフェイスを維持できなくなるのだ。


人見知りのヒイロもこの通り、若干引きつった顔でクミンの様子を伺っている。


(クッ、駄目か。)


クミンは手鏡を取り出し、無理やり笑顔を作った。


流石にお宝のありかを口にするわけないか。それだったら、ヒイロに気付かれずにお宝を探す口実を作るしかない。


そうだな…。


クミンは、散らばった本に視線を逸らし、ある策を思いつく。


「とりあえず、助けてもらってありがとう、ヒイロ。お礼と言ってはなんだけど、何か手伝うことはないかな~。」


辺りに散乱した本。恐らくだが、彼は整理整頓が苦手な性格だ。そのせいで、足の踏み場がなく、移動や、本を探す時等、生活で何かしらの不便を感じているのだろう。そこで、私が本の片づけを手伝うことを提案すれば、本を片付ける素振りを見せつつ、違和感を感じさせずにこの空間を自由に探索できる口実を得られる。


よし、これで行こう。


クミンは自身が考えた計画に、何気ない自身を持ちつつ、ヒイロをじっと見つめる。


「だから、目が怖いよ、クミン。」


彼女はヒイロの警戒心を解く為にもう一度、表情を作り直し、彼の出方を伺う。


ヒイロはしばらく考え込み…。


「そうだね…、それだったら2つお願いを聞いてもらってもいいかな?」


クミンは首を縦に振り、頷いた。


「それだったら、一つは本の片づけを手伝ってもらおうか。」


「よーし!きたー!」


クミンは自身の思惑通りに事が運んだことに安堵し、思わずガッツポーズをしてしまった。


「え、急にどうしたの?」

「あっ、いや、なんでもないヨ~。あははは」


クミンは急いでガッツポーズをしまう。


「それで、もう一つは?」


ヒイロは顔を下に向ける。


「もう一つは本の片づけが終わってから…」


そう答えるとヒイロは何も言わずに、本の片づけに取り掛かった。


先程まで豊かな表情を見せていた彼がいきなり、あのような霞がかかったような暗い表情をするとは、もう一つのお願いとは一体…。


とはいえ、自由にこの空間を探索できる口実を得た私は、散らばっている本を整理するふりをし、辺りを散策した。


~~~~~~~~~~~~

2時間後。


お宝らしいものは、見つかりませんでした。


あっちに本、こっちにも本、前方にも本、後方にも本、左右にも本、どこでも本、見渡す限りの本…。ここには本しかないのか!


まさか、この本全部がお宝か?


と一瞬思ったのだが、残念ながら、本の中身はどれも、都市にある国の王立図書館で目にしたものばかりだ。流石に、迷宮外にある物と同じ物に希少的価値があるとは思えない。


クミンは2時間前に抱いていた期待が大いに外れ、ガッカリしたという意味の大きなため息をついた。


一方、ヒイロはもくもくと作業をつづけている。


そういえば、もう一つのお願いって、なんだろうか。

クミンはお宝さがしの最中、ヒイロの霞がかかったような表情が頭が離れず、ずっともう一つのお願いのことが気にかかっていた。


「はぁ、仕方がない。」


私はお宝さがしをあきらめ、彼を手伝った。


片付けの最中、二人の間に一切言葉はなく、黙々と作業をしていたせいか、あたり一帯に散らばっていた本は次々と本棚へと戻っていき、気付けば、国の王立図書館のように綺麗に整備された空間へと変化していく。


そして、クミンは床に散らばっていた最後の本を手に取った。


「これは…」


そこには、彼女が幼いころに訪れたことのある花畑について書かれていた。


「きれいな場所だね。そこ」


沈黙を貫いていたヒイロの口が開く。


どうやら、彼はこの場所に興味があるみたいだ。クミンは彼の暗い気持ちを紛らわすために、本にかかれてある花畑のことについて話してみた。


「この花畑はね、季節によって違う花が咲くの。春は桃色や黄色の花、夏には青色や空色、秋には紫色や橙色、そして冬には赤色や白色の花が咲くの。それでね…」


ヒイロは興味津々で彼女の話を聞いた。


しばらくして、花畑について話終えると、彼は、次のページをめくり、ページに写っている写真のを指さし、「ここは?」と写真の場所について訊ねる。


クミンは仕方ないと思いながら、この本に移っている場所について全部説明した。


ページを1ページ、1ページと、めくるたびに、ヒイロの顔に太陽のように、あたたかく、明るい笑顔が戻っていく。彼の表情につられ、クミンも思わず笑みを浮かべた。


思い出すな、私がまだ幼いころに兄と一緒にお母さんが本を読み聞かせをしてくれたことを。あの頃に戻った気分だ。そう、私と兄、母と父、家族全員で一つのテーブルを輪のように囲んでいた頃に…。


しばらく二人は、幸せなひと時を過ごした。


~~~~~~~~~~~


最後のページをめくり終える。


「…もしよかったらだけど、他の本のことも教えよっか?」

「いや、いいよ。」

「…そう。」

「さてと、片づけも終わったことだし、もう一つのお願い、聞いてもらってもいいかな。」

「いいよ。」


クミンは少し身構え、頷く。この時点で、彼女は彼のもう一つのお願いについてなんとなく察しがついていた。


彼の願い。それは…


「クミン、僕をここから連れ出して!」

世界のあらゆる記録が保管されている場所”ライブラ”

この場所は後々物語の謎を解くうえで重要な場所となります。


何故、ヒイロがこの場所に閉じ込められているのか?

それはかなーり先の話となります。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ