2章 7話 迷宮【ラビリンス】
2章前半のあらすじ
フォールリーフの町にたどり着いたヒイロはクミンの助言で、この国で生活するための資金を稼ぐため、冒険者になることを決意する。
翌日、冒険者ギルドで登録手続きを終え、戦闘力測定試験に挑む。少々トラブルはあったものの無事登録を終え、初級冒険者として、冒険者ライフの第一歩を踏み出した。
そして、一週間後、年に一度行われる新人冒険者研修が取り行われ、初級冒険者であるヒイロとクミンは上級冒険者ナタリー先導の元、研修先である第3迷宮ロストフォレストへと向かう。
道中、魔物に襲われ、全身血まみれで深い傷を負った兎獣人の男の子を保護。
近くに設置されてあるギルドキャンプへ急いで向かい、彼を医療班に預ける。
しばらくして、準備を整え終えたヒイロ、クミン、ナタリーの三人は研修を再開させ、迷宮の中へと入っていった。
第3迷宮 ロストフォレスト
迷宮内では、巨大な苔むした樹木が辺り一帯に繁茂しており、地面には太い根が複雑に絡み合っている。木立は密生し、外部からの光を遮断する。代わりに根っこから養分を大量に吸った巨大キノコが光る胞子を散らせ、辺りを照らす。
ここが、ロストフォレスト…。
前に潜った迷宮【ニューホテル】とは、また違った雰囲気だ。
ヒイロは初めて見る草花に興味を示し、辺りを右往左往する。一方、クミンも彼の事を気にも留めず、珍しい植物や魔法実験の素材となりそうなものと見つけては瓶に詰めマジックバックに入れていく。
「二人とも、私から離れないでください!」
そんな二人を見て、ナタリーは勝手な行動を取らないよう厳重に注意。
そのような調子でナタリーを先頭に、クミンとヒイロは辺りを見渡しながら、奥へと進んでいく。
しばらく探索を続けていると、ヒイロが唐突に口を開き、二人に質問をし始めた。
「そういえば、迷宮って何?」
「えっ!」
ナタリーは驚いた表情をしながら、即座に振り向いた。
そうだった、迷宮の事まだ教えてなかった。
ライブラに籠っていたから知りませんでしたとか絶対に言えない。ライブラのことはギルドに報告してないからだ。もし、バレたら色々と面倒なことになるだろうな…しかたがない、なんとか誤魔化さないと。
クミンは慌てて、ヒイロのフォローに回った。
「ごめんなさい!この子田舎出身なもので一般常識が欠けていまして…。」
「あっ、えっと。そうなんですね!でしたら…」
ナタリーは迷宮の事について説明を始めた。
現在、世界は魔物で溢れかえっている。
魔物の侵攻を防ぐためには、魔物が生み出される場所、12の迷宮を攻略し、封印結界を発動させる必要がある。
迷宮攻略の基本的な手順は以下のとおりである。
まず、魔物が発生している12の遺跡から迷宮の入口を発見する。次に、迷宮内を散策し、最深部を発見する。その後、そこに潜む大型の魔物、つまり迷宮の主を倒す。主の討伐完了をトリガーに、封印結界が発動される。
これにより、迷宮内に魔物を閉じ込めることが出来、結果、魔物の侵攻を防ぐことが可能となる。
現在、12の遺跡の内、7つの迷宮区の入口が発見されている。
第1迷宮 エデン
第2迷宮 ニューホテル
第3迷宮 ロストフォレスト
第4迷宮 ファイトアイランド
第5迷宮 ブルーマウンテン
第6迷宮 ミヤコト
第7迷宮 ラブズベルト
内、第2・4・5・6・7の5つは攻略済みである。
今回探索する第3迷宮ロストフォレストは世界で3番目に発見されたが、未だに最深部が発見されていない。つまり、未攻略の状態である。
「ここの魔物は他の迷宮の魔物と比べ、あまり強くはないのですが、迷宮自体が広いため、未だ最深部が見つけられていないのです。そのため、今回の新人冒険者研修のように、定期的に冒険者を集めて、探索を行っているのです。」
「そんな目的もあったんだ…。」
クミンは腕を組み、頷く。
一方で、ヒイロは目を点にし、首を傾げていた。
「第3迷宮が未攻略な理由は分かったけど、第1迷宮は?一番最初に発見されたんでしょ?」
ヒイロがそう口にした途端、クミンは血相を変え、唇をかみしめる。その様子を隠すかのようにナタリーはクミンの前に立ち、第1迷宮の事について話し始めた。
「第1迷宮が、攻略できていない理由。それは、単に迷宮内の魔物1体1体がケタ外れた強さを持っているからです。それに、第1迷宮がある場所は…。」
ナタリーは右手の人差し指を立て、上空を指す。
ヒイロは顔を上げ、木々の隙間からほんの少し覗かせている薄水色を見つめた。
「空」
「そう、迷宮自体が空に浮いているのです。天候や移動手段など様々な条件が整わないと、迷宮にたどり着くことすら難しいと言われています。」
「でも、何度か挑戦したんだよね?」
「はい、過去に2回、一回目は…。」
「やめて!」
ナタリーが第1迷宮の挑戦記録について話し出そうとした瞬間、クミンが声を荒げ、地面にふさぎ込む。
「ど、どうしたの?クミン」
突如情緒不安定になるクミンにヒイロは何がなんだか、訳が分からず、混乱したまま、その場に立ち尽くす。
一方、彼女の事情を知るナタリーは彼女の元に寄り添い、抱きしめ、頭を撫でる。
介抱のかいもあり、しばらくして、クミンは落ち着きを取り戻した。
「ごめんなさい。私としたことが…。」
「あっ、いいえ、ナタリーさんは悪くないです。私こそ、すみませんでした。」
クミンはゆっくりと立ち上がり、そして、蚊帳の外でボーと突っ立っている、ヒイロの元に駆け寄り、頭を下げた。
「ヒイロ…ごめん。」
「うん、いいよ。それより…。」
ヒイロはマジックバックからナイフを取り出し、周囲を警戒し始めた。
「ヒイロさん。気付いたみたいですね。」
ナタリーがそっと前方にある茂みを指さす。
よく観察してみると、少し揺れている。
(恐らく、先程私が大声を発したせいで、集まってきたのだろう…。)
クミンとナタリーはそれぞれマジックバックから戦闘用具を取り出し、構える。
「まずは、ヒイロさんとクミンさんの実力を見ます。私が魔物を誘き寄せますので、二人は出てきた魔物を倒してください。」
ヒイロとクミンは頷き、行動し始めた。
3月まで多忙のため、更新頻度少なめです。ご了承ください。
今回は迷宮についての話。
なぜ、迷宮というものがこの世界にあるのか?
そもそも迷宮とはいったいなんなのか?それはまだ先の話。伏線はちょくちょくばらまいていくので見落とさないようご注意を!




