表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/56

小太刀とメリケンサック

 不気味なほどに何もなかった。琴音が帰ってきてから食事までの間、オフィス奥の部屋にて二人で座り込む。いくらはたいても無限に埃の出るクッションにため息をしながら琴音と会話する以外にすることはない。



 声をあげること自体は問題ない。そもそも声が聞き取れるような位置にたどり着かれた時点でアウトと言える。『遮音』とかを使うと魔力光によりスキルが継続発動していることがバレてしまうし、それを隠すためのスキルまで使うと魔力が漏れ出しているような流れが感知できるようになってしまう。なにより直接この部屋に踏み込まれたら一発だ。



 三角座りをしながら足が冷たいらしくときおりふっふっと足を上に持ち上げて寒さから逃走していた琴音。彼女は思い出したかのようにひそひそと話し出した。



「『幻装』、結局小太刀とメリケンサックで行くん?」


「うん。ガントレットの中にはメリケンサックとしての機能がある奴もあるらしくて、今ネットで調べてる」


「ネットって……そうかアイテムボックス経由やな」


「さっきまでレイナさんが入り口を閉じてたから使えなかったけどようやくね。向こうで何があったのかはわからないけど、電波NGだったみたいだな」


「近くに心臓の悪い人でもおったんかな」


「それなら仕方がないか」



 スマホの画面を見せると「今ならうちも繋がるかも」と彼女も端末を取り出しタッチをする。ちらりと見るとニュース記事。『速報!27個目のダンジョンを破壊した者の正体!四辻博人(16)!』……ってなんでだ!? SATはむしろ俺を内密に処理したいんじゃないのか!?



「多分これ、夢ちゃんの仕業やな。なるほど、レイナさんのやりたいことがちょっとわかった気がするわ」


「どういうこと?」


「つまり本気で博人の立場を確保しようとしてるってことや。こうやって自由東向新聞の力を使って拡散すれば仮にSATが博人を隠れて処理しようとしても追及は免れへん。さらにうちらとコンタクトした夢ちゃんはこっち側じゃなくて新聞社側とわかればそれ以上つつかれることもない」


「うわぁ……」



 色々考えているようである。ありがたいという思いがやばくないか?という思いにかき消される。日本政府の陰謀!というより金森レイナの陰謀!というイメージの方が強い。しばらくスマホを弄った後こちらの武器選びに付き合ってくれるようで琴音は体を俺の隣に寄せる。



「『幻鎧』とか『幻装』ってどういう基準で作れるんやろ?ほらよくあるやん、見たことがあるものなら作れるとか材質まで理解しないと作れへんとか」


「単一のものは見るだけ、だな。一応一定の型は用意されているっぽくて小刀と鎧はそもそも資料なしで作れるようスキルにセットされてる。だからメリケンサックの部分だけ調整しないといけないんだ」


「それならここの資料やな。あとまだここにはたどり着いていないっぽいから今のうちに小太刀の練習だけしとくで」


「詳しいな?」


「夢ちゃんのを一緒に手伝ったから覚えとんねん」



 琴音がすたりと立ち上がり先ほど使った古びた箒をぽきりと折ってこちらに渡す。そのうえでスマホから非公式のスキル表を取り出し『魔法使い』の欄から一つのスキルを見せる。『バーニングレイ』という魔術、必要SPは3、効果は目から熱線を放ち軌道上を燃やし尽くす、とのこと。



 箒を中段に構えた俺の手をちゃうちゃうと琴音は手を前に押し出す。手を限界近くまで前に出す、攻撃というよりは防御の構えだ。



「博人の売りは全てのステータスが化け物じみとる点や。やから遠距離では魔術、近距離では武器というように使い分けたほうがええ」


「それがこの『バーニングレイ』?」


「他にも使い勝手のいいスキルは幾つか教えたる。まああのSAT隊長、遠距離攻撃はできないっぽいからな。んで無理やり突っ込んできたところを刺す……わけやなく払うんや」



 そういってゆっくりと琴音が『ハイキック』と同じモーションで蹴りを入れてくる。それに対し思わず胸めがけて手を突き出そうとし、あ、そういうことかと思い至った。飛んでくる足に向けてそっと箒を当てるようにする。



「正解や。STRが拮抗してて高INTで作られた『幻装』、間違いなく大きな裂傷が入る」


「一方普通に突こうとするなら避けられてカウンターを貰うリスクがでてくると」


「技量的にはほぼ確実に、やな。だからこそ撫でるように、近接攻撃を躊躇わせるようにナイフを振り回し魔術を連射するわけや」


「どちらかといえば遠距離型なんだな。ステータスがSTRとVITが高いから近接型になるかと思ってた」


「そこを好き勝手に切り替えられるのが強みやで、そのステータスの。あとジョブはどうする?」


「行く前に取るなって言われたんだよな。だから縛りプレイ」


「そんなことあるかぁ? まあええわ、時間もないし練習するで。勿論ゆっくり」



 琴音がゆっくり拳を当てようとするのに合わせ木の棒を動かしてゆく。それと共にキックボクシングや空手特有の動きに目を慣らしていく。朝7時まで残り14時間。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ