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二番館

 近代において個人の用いる武器と言えば銃だった。無論ナイフが使われたりすることもあるが、最も活用された武器が銃であることは間違いない。しかしダンジョン、そして冒険者の性質により最強の武器の座は再び空白となったのだ。



「すげぇ、こんなに種類が……!」


「色々あるやろ。ここら辺は単純な加工のみの武器たちや、例えばそこの骨槍はオーガの骨を引っこ抜いて作られとる。安い割に強度が高いから便利な奴やな」



 オーガの骨、なんていうとそこまで解体しているのかと思うかもしれないが実際は違い、骨以外が自然とよくわからない土くれとなる。骨や鱗、目などは魔力が通りやすく死んでも力を保ったままになるがそれ以外の部分は元の物質に戻るわけだ。ダンジョン内の魔物は文字通り魔の物、あくまで生命としての形を模倣しているだけにすぎない。



 故に自然と残ったものは強い魔力を帯びていて異様な強さを誇るわけだ。例えばサラマンダーの鱗は圧倒的な断熱性、バジリスクの牙は魔力的な毒を持ち続けていて、そんなものを不用意に外に持ち出すと不味い事態になるのは当然で、だから外への持ち出しは国が管理している。



 特区東街2番館、その2階。ここは商店街のような小さな店舗が数多内部にひしめき、突き当り、一番東側に大きな黒い店がどんと構えていた。右をみても左をみても武器、武器、武器。相も変わらず浮足だちながら質問をしていく俺にはいはい、と琴音も若干満足げに答える。



「冒険者の武器って色々あるけど結局どれが強いんだ?最強はメイス、なんて話は聞くけれど」


「ゴーレムメイスやな。素材が手に入りやすくてレベル60帯やのに異様に安い、下手すれば現金での購入も検討できるレベル」


「いくら?」


「420万やな」


「高くないか!?ってそうか、確かさっきも言ってたけど国に取り仕切られるから……」


「よく覚えてたな、せやよ。素材と交換するにしてもレートが低いから便利や」



 ほうほう、と二つ隣にあるメイス専門店高田を覗く。何かが焼けているようなそんな匂いと汚れた床。明らかに客受けしなさそうな店であるし実際店主以外誰一人店内にはいない。だがゴーレムメイスはきちんと外から見えるよう大量に置かれていた。



「高田さんの店か、そこは実質ゴーレムメイス専門店でそれくらい序盤はメイスと銃が強いで」


「銃もなのか?」


「うん、そのレベル帯やと硬い敵はでてこうへんし仮に出てきても逃げたりメイスに持ち替えたりしたら済むから。それにここダンジョン生成から銃の価格はどんどん下がっとるしな」



 言うまでもなく未だ銃刀法は健在だ。にもかかわらず何故銃が大丈夫かと言えばこの敷地内という制限があるから。とはいっても厳密に制限できているわけではなく流出自体は止められないらしい。それができるなら昨日俺がダンジョンに侵入できているわけがない。なんなら国の一部が横流しを行っているという噂があるくらいだ、この均衡は薄氷の上で成り立っている。



 そんなよく言うとガバガバ、悪く言うとクソそのもののこの街の統治機構ではあるがでは国としてみればどうか、というと意外とそうでもない。利益を出しつつ冒険者を管理し、自衛官や警官を冒険者たちを利用し高速でレベルアップさせ各地に配備することで治安の悪化自体は収まってきている。凶悪犯罪者、それこそSODとかは力をつけているが一方で個人の犯罪は激減したのだ。



「なるほど、じゃあ俺にオススメな武器とかあるか?」


「うーん、どうせ『幻装』使うのが大前提やろ、あれどれくらいの物まで作れるん?」


「確か単一の構成物であることが条件だから機構とかは組み込めないと思う」


「なら近接武器か弓矢か。熟練度からすると……釘バット?」


「おい」



 てへ、と笑う琴音であるがその提案自体は意外と現実的だ。折れにくく威力があり肉に引っかかれば大変なことになる。釘は一つの生成物として認められるのかな……という気にはなるが、間違いなく雑に扱っても強い武器である。



 というかこのSTRで振れば大抵は殺人的な威力になるはずなのだが、あの足立相手に対策をしておきたいのだ。あの動きで徹底的にスコップを避けられ顔面を蹴られまくった記憶は忘れ難い。しかもボディーブロー叩き込んだのにすぐに追っかけてくるし、今のままでは決定力にかけすぎる。



 そんな話を聞かれていないことを確認してから話すとああなるほど、と琴音は言いながらベンチに腰掛ける。いつの間にやら手にしていたココアを熱そうにはふはふと喉の奥に押しこんでから話を続けた。



「よし、それならうちの目的地にいってみるで。そこの店長が確か『幻装』使いやから」

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