ノテュヲノン
主人公置いてきぼりのターン。ここら辺の設定の詳細はいずれやるので今はなんか考えてんだなー、くらいに捉えていただければと。
日本ランキング、実力のある冒険者を評価する東向新聞社主催のシステムでこの順位が高いほど日本国内で強い、という認識される。というか実質世界ランキングだと評する声すらあったりして、何故ならスキルやステータスシステムが海外には存在せず冒険者が育成されにくいからだ。実際多くの国で未だダンジョンの攻略は国の仕事であり主兵装は機関銃と地雷、しかも攻略というよりは魔物が外に出るのを抑え込んでるだけの所も多い。
だからこそその上位、しかも3位でありSATにスカウトされたという異例の経歴を持つ男の危険性は特に理解できた。
(『暴君』なんて言われてたよな冒険者時代には……。確か戦闘スタイルはキックボクシングと空手をベースにした前衛特化型、ジョブは『拳士』。そして下半身麻痺により歩行は全てスキルを用いて行っている……!)
一体どれだけの努力をしたのだろうか、その癇に障る表情の裏には血汗が積み重なっているはずだ。足がまともに動かないというハンデを捻りつぶすのは並大抵の技ではない。恐らく小手先の技は通用しないだろう、経験をひたすら積み重ねた冒険者としての大先輩である。
そして俺の背後に現れた人間もどきは奴の言葉が本当ならばSOD、あの『血惨事件』の首謀者ということになるが……。
「久しいのう小僧。2年前の池袋以来じゃな、どうだそろそろ引退する気になったか?」
「黙れノテュヲノン、まだ53だ現役続行に決まっているだろ」
「それは残念じゃ。ところで小僧たちはなぜそこの鎧男を?」
背の高い足が触手の女性、ノテュヲノンと呼ばれた女性が不機嫌そうに語る。低く、それでいて艶やかな声。年齢は30程度であろうか、明らかに53の足立を小僧扱い出来ない年齢のはずであるが、まあそれは置いておくとして。青いロングヘア―に強気そうな、しかしそこか寛容な何かを含ませているのは支配者の余裕のようなものを感じる。ふくよかな体と胸につい俺の視線が吸い込まれているのをノテュヲノンは見逃さなかった。にやりと笑い見せつけるように胸元を開きながら彼女はこちらに語り掛ける。やめろお前の着てるローブ妙に布面積が少ないんだって……!
「どうじゃ、今夜閨を共にしてみるか?そちら側には少々自信があっての、一瞬で達させてやるぞ?」
「ババアが趣味とはマセたガキだな。坊主、女は選んだほうがいいぞ。骨までむしゃぶられる覚悟があるのならば知らんが」
「ち、ちが……!」
ほれほれ、と足の触手を蠢かせながらノクテュヲンは俺を誘う。鎧で良かった、顔が熱いと思いながら一方で心の底は薄気味悪いほどに冷めていることを実感していた。それはSAT隊員やSODの構成員の殺気が原因でもあるし、気味の悪い思惑が絡みついているからでもあった。
「で、お前こそ何故この坊主を求めるんだノテュヲノン、殺して経験値でも欲しいのか?」
「そんな訳がなかろう。第一それならばダンジョンコアをこの国に運び込む前に破壊しておるわ、我らの慈悲を理解できぬ馬鹿者共が」
「……ということは『栓』にでもするつもりか。なるほどなるほど、『胎異転生』させて永久に世界を封ずるための道具に変換すると。残酷だな、さすがSOD」
「やかましいわ、その前にいくつか仕事がある。それに貴様らこそ虚重副太陽の生成に使う気なのじゃろうが。砲弾は完成お披露目間近なんてニュースは聞いたのぉ」
……意味が分からない、途端に出てきた用語の羅列に俺は目を回す。栓?転生?虚重副太陽?ただ前者2つは恐らくSOD内部の宗教用語、そして後者は何らかの実験計画なのだろう、ということは推察できる。でもそれの何が俺に関係あるんだ?
世界を封ずるだの太陽の生成だの、極めてファンタジックな話ではあるが一方で両者はそれを当たり前の事のように話している。だから恐らく、この話は繋がっている。世界を封ずるのも太陽を造るのも。そのために経験値の塊としてではなく何かの道具として高レベルの人間を必要としているという事か。
確実に彼らがここにいるのは金森レイナと会うのを止めさせ、自分の都合の良いように動かすためだ。そのために42層という目的地にたどり着くために必ず経由する、視界の開けた場所に陣取り俺を捕捉する。だから彼らに誤算があるなら運の悪いブッキングなのだろうし、あるいはここまでが既定路線なのかもしれない……というのは考えすぎか。
「まあ生成しても死ぬわけじゃないしな」
「嘘じゃな、確実に死ぬ。貴様らの必要とするレベルのIhydrogineの連鎖生成反応の開始剤の役割、ダンジョンコア一つ分の魔力程度では確実に行えぬぞ?例えば経験値、魂を崩壊させない限り」
「……ぐちゃぐちゃうるせえな、ババアの案に乗っても一生孤独に世界を覗き込む置物だ。死にたくても死ねない未来無き監獄の主。大差ないだろうが」
「何、責任を取って儂は一生付き添ってやるから安心せよ。共に快楽と堕落に身を任せれば永遠も一瞬じゃ」
「あ、あの……」
本当に意味が分からない。自分に消化できる情報量を明らかに超えているそれに困惑しながら置いてきぼりにされている状態を解消しようと動く。取り合えず話を聞くかぎりどちらも五十歩百歩、ロクなことがなさそうなのは明らかなので俺を挟んで声を荒げる二人に話す。咳ばらいをし気を整え強気に、怖気づかないように。
「ゴホン、あー、どちらの話も飲むことはできない。故に」
「まあそうだよな」
「残念じゃ」
と思っていたら出鼻をくじかれた。二人は落胆というよりはまあ当然かというような表情で、互いに手を振り上げる。あまりにも自然に、ぬるりと殺しの指示を出した。
「『ウォーキング』お前らは取り巻きのローブとガキを皆殺しにしろ、俺は鎧とノテュヲノンを潰す」
「SAT隊員どもを殺すのじゃ。ああ物陰に2人まだ隠れているから忘れるでないぞ。儂が足立と鎧を壊す」
……え!?
魔物娘好きで快楽大好き!な人間だとノテュヲノンの提案に乗ればハッピーエンドにたどり着けます。ただしレベル2000以上がルート解放条件の模様。




